危ない場面は幾つもあったが、終わってみればバルサが勝利。足りない部分を汗で補った選手たちと、勝負を決めた別次元メッシ。どちらもさすがだ。そして好勝負を台無しにした、モウリーニョとその手下たち。
ベルナベウでのイダと同様に、このカンプノウでのブエルタも両チームのコンディションの違いがその動きには現れていた。ただしその不足を頭を使ったプレーで補おうとするバルサと、前に出てショートカウンターを仕掛けるマドリーとの攻防は見応えがあり、前半の感想は「昨年のクアトロクラシコよりもずっと良し」。惜しむらくはガス欠となったマドリーが後半、いつものラフファイト頼りになったことだ。教訓をなんら活かせない者たち。
この試合もモウリーニョは臆病戦術は採らず、ラインを前に上げてのプレッシングを実行してきた。ボールの出所に圧力をかけ、チャビ、イニエスタ、メッシらを自由にプレーさせない戦術。それによってバルサはボール回しを行うことはできなかったが、ならば、とマドリーライン後方に生まれたスペースをビシバシと突いていくことにした。悪魔スルーパスを出せる選手は、たんまりといるのだ。
15分の先制点が、まさにそんな感じ。グラウンド中央でボールを受けたメッシから一本のパスがマドリー守備陣の隙間を突き、スペースへと抜け出したイニエスタが芸術的なバセリーナでカシージャスの壁を攻略したのである。我らがクラックたちの、頼れる決定力。
だが必死のマドリーがこのゴールで萎れることはない。その5分後の同点弾は、イダでのゴールと同じくコーナーから。クリアし切れなかったところをベンゼマに拾われ、そのシュートがクリスティアノの足に当たってゴールとなったのだった。
同点となってからも、同様の展開は続く。マドリーはプレスをかけ続け、バルサのミスを誘う。守備ラインは下がり、マドリーはじりじりとバルサ陣内に侵入した。25分にはバルデスの手に当たったクリスティアノのシュートがクロスバー直撃。バルデス、マスチェラーノ、アビダル、アウベスらの好守により、バルサは懸命にエル・ブランコの攻勢を凌いでいた。一方ペップチームは22分、速攻からのペドロシュートを、カシージャスが防いでいる。
30分を越えるあたりからは、バルサが徐々にペースを掴み始めていた。中盤が機能し、ボールが回り始めたのだ。36分には再び速攻からメッシに得点チャンスが訪れたが、カシージャスが足を残してかろうじてセーブ。ゲームは1-1のまま、ハーフタイムへと向かっていった。
しかし45分の左コーナー、マドリーがクリアし切れなかったところを、ピケのヒールパスを受けたメッシが強引に突破。最後は柔らかなタッチにより、2点目となる右足シュートを押し込んでしまうのだから恐ろしい。シーズンのこの時点での、このパフォーマンスなのだから。
マドリーの前線プレスは体力を多く消耗する。それが90分持つはずもなく、後半になるとゲームからは、良い意味でのアグレッシブさから、乱暴なプレーへとシフトしていった。その中心となったのがいつもの面々、悪質ファールのスペシャリストであるペペとマルセロだ。プレスからタックルへ。バルサ選手が地面にもんどりうつ場面は、後半に入り格段に増えていった。
65分にはイニエスタの超絶変態ターンからのドリブル突破→メッシが左へ持ち込んでのシュート!という好プレーもあったが、カシージャスが阻止してゴールならず。フィジカルが足りないバルサはこのあたりで電池が切れ始め、そして80分、またしてもコーナーキックから失点を許すこととなるのだった。両監督が選手交代を準備&実行し、ふわっとしていた時間帯だ。
アドリアーノのクリアし損ないがチャビに当たり、密集エリア内でピンポンした結果、最後はベンゼマがねじ込んで同点。バルサとしては勿体ない失点だった。
残り10分からして、延長戦突入の可能性は高いように思われた。しかしこういう苦しい時にこそ仕事をしてくれるのがギガクラックだ。88分、失点直後にピッチに入ったセスク(「自分が何とかしなければと思っていた」)から受けたボールをアドリアーノへとダイレクトに送り込み、完璧なクロスが帰ってきたところを、これまた完璧なるボレーシュートでずどん!文字どおり、ボールをネットへと突き刺した。
このまま試合終了のホイッスルが鳴っていれば、「なんだかんだで好い試合だった」と終われたところを、バケツいっぱいの泥水をぶっ掛けてくれるのが今のマドリーだ。ロスタイム、マルセロが後方からセスクへと無意味かつ危険なカニバサミを一発。騒ぎは両チーム入り乱れての揉み合いへと発展し、マルセロはもちろんビジャとオジルまで退場となる一方、モウリーニョはティトの目に指を突っ込むという意味不明でどうしようもなくガキっぽい行為までやってのけるのだった。せっかくの好勝負が、最後はサイアクの後味。負け方を知らないチームは、どこまでも見苦しいものだ。世界中に恥を発信し、居直っているのがいっそう見苦しい。ただうんざりの一言。やだやだ。
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