あっと驚く3バックと、あっと驚くプレー内容。頂点を極めたと思っていたチームがさらに一段上ったという印象に、ただただ感服するしかない。
なんというデビューゲームだろうか。試合前には、しんどい仕事になりそうな雰囲気が漂っていた。相手はカンプノウで毎回手こずらせてくれるビジャレアル。しかもモナコのスーペルコパから中2日。ペップ自身も「疲れは回復していない」と語り、さらにデフェンサが大量欠場。右ラテラルはどうするのか?と思っていたら、答えはむしろシンプルだった。3バックにすればいいのだ。
ビックリの3バックを編成したのは、アビダルとふたりのセントロカンピスタたち(マスチェラーノ、ブスケツ)。いくら他に手がないといえども、こんな"非常識"なことをしれっとやってのけるチームがどこにあるだろうか。しかし、それがこのペップバルサだ。監督にはアイディアがあり、選手にはその案を実行してのける能力がある。そう、この3-4-3はチームが新しい道を開いたと感じさせる、夢と破壊力に溢れたシステムだったのだ。
バルサは"攻撃は最大の防御"を地でいった。中盤の厚みを活かし、前線からの鬼プレスでビジャレアルの攻撃を瞬時に摘み取る。ボールを奪えば、変態的テクニシャンたちがこれでもかとパスを回して急所をえぐる。アレクシスの攻守にわたる頑張りも目を引いたが、特に強烈だったのは8年のブランクを感じさせないメッシとセスクの連係だ。そしてチアゴ。25分、そのメッシ・セスクが空けたスペースへとぐいぐいと切れ込んでいくと、エリア際からパスと見せかけての左足ノールックシュートを一発、右ポスト横へと突き刺さしてしまった。5人マークもお構いなしの大胆さ。
チアゴがいるのに、セスクを獲るのか?という疑問はこの試合であっさりと解決されてしまった感がある。両者はピッチ上で共存が可能。それによってチャビに貴重な休みも与えられる。セスクとメッシ、メッシとチアゴの関係も良い。ハーフタイム直前の追加点はメッシのエリア内へのスルーパスに完璧に反応したファブレガスによるものだ。GKディエゴ・ロペスと1対1になった4番はさらりとその勝負に勝利。悠々と無人ゴールにシュートを流し込んでいる。目の前で見せ付けられることで、ようやく彼の決定力を実感するに至った。
おお、そういえばこのセスクゴールの少し前には、守護神バルデスのパラドンも炸裂している。ロッシの決定的シュートをまずは身体に当てて防ぎ、クロスバーに当たったこぼれ球を今度こそロッシが頭で押し込もうとしているところを、ネコの瞬発力で飛び込み、かき出してしまったのだ。さすがは我らの聖ビクトル!拝まずにはいられない。
後半に入っても、バルサの圧倒的プレー支配は続いた。なんとか一矢報いたい黄色潜水艦に早々にもう一発ミサイルをぶち込んだのは、ハーフタイム明けわずか2分のアレクシスだ。チアゴの前方スペースへのパスに一気に突進し、ディエゴ・ロペスとの1対1にも冷静に対応。これは彼にとってのカンプノウ初試合、初ゴールの状況であったから、堅くなってもおかしくはなかった。しかし落ち着いて決めてしまうところなど、今後に非常に期待できそうだ。ゴール後には喜び爆発、見事なるボディも披露している。
チアゴ、セスク、アレクシスと、今シーズンの新顔たちが次々とネットを揺らし、最高に盛り上がるカンプノウ。となるとあとはアノ人・・・・という期待に、きっちりと応えてしまうからメッシはすごい。チーム4点目はビジャレアルの足元がふらついている51分。エリア周りのパス回しの末、最後はイニエスタのスルーパスがエリアをえぐり、これに反応した10番がディエゴ・ロペスをあっさり料理してしまうのだった。
プレー時間を40分近く残し、4-0。これはもう、マニータを決めるしかないだろう。今のバルサには、それを達成する力が十分すぎるほどにある。そしてでっかいケーキに最後のイチゴを乗せたのは、やはりこの人メッシだった。75分、チアゴがエリア内へと深く切れ込み、「先輩、どうぞ決めてください」というセンタリングパス。レオは後輩のこのお膳立てを無駄にすることなく、きっちりシュートをねじ込んでいる。24歳の若さにして、カンプノウ101ゴール達成の瞬間。
ところでこの試合、ペップは後半56分にチャビ、67分にビジャをそれぞれイニエスタとペドロに代えて送り込んでいる。目の前で派手なゴールショーが繰り広げられる中、なんとなく蚊帳の外感のあったグアッヘ。そのあたりもしっかり気遣い、パスを配分していたチャビに心の座布団1枚を送る。
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