シュート数17対0が表すバルサの圧倒的支配だったが、ゴールの前では運がなく。ビクトリアの懸命の守りもあり、2得点"のみ"だった。
この試合での勝利の重要性を認識している選手たちは、キックオフの笛と共に一気にビクトリア・ピルゼン陣内へと攻め込んだ。1分のペドロ、2分のアルベスと、わずか2分で2回のチャンスを逃すという勢い。とりわけメッシとのワンツーを連発した、ダニのプレーはすばらしかった(決めのシュートのみ、天高く飛翔)。
先制点は、イマイチのように見えてそれでも別格のメッシと、怪我からの復帰後いきなりトップギアのイニエスタから生まれている。ふたりはピン、ポン、パン、ポン!と2つの壁パスによってエリア内に侵入すると、最後はドンが右足のエレガントタッチで残るデフェンサも料理し、ボールが落ちたところをすかさず左足でシュート。ありふれた言い方だが、超絶ゴラッソをぶちかましている(10分)。
いきなりイニエスタコールがスタジアムにこだました後も、バルサは攻め続けた。だがこの日はゴール前での仕上げが上手くいかない巡りあわせの日。攻め込めど、攻め込めど、シュートが枠内に突き刺さらない。17分にはペドロがネットを揺らすも、これは残念ながらサイドネット。その他にもデフェンサにシュートをカットされたり、わずかにパスが長かったり、ポストに嫌われたりと、とにかくゴール運に見放された。あのメッシですら、28分、41分、45分と決定機を逃しているのだ。
そしてウソのような話だが、前半は1-0で終了。ビクトリアは後半に望みをつなぐことになった。
ハーフタイム後も、同じパノラマが繰り広げられた。メッシはどちらかといえば、好いようにピルゼンの守備を破っていたといっていいだろう。必殺のドリブルで、10番は数度チェコチームの守備陣を引き裂いている。ただしデフェンサを引き連れてエリア内に侵入した59分のプレーも最後はGKにブロックされたように、あと一歩が届かなかった。そしてリーガではもう恒例となっている、審判によるペナルティ見逃しもあり。前半と後半に1度ずつ、レオはきわめてファール性の守りにてエリア内で倒されている。
ヒヤッとしたのは、62分の守りのプレーだ。ビクトリアのなんでもないエリア内へのロングボールを処理する際、バルデスとアルベスが交錯。相手デランテロがこれを拾う寸でのところで、ビクトルがすばやく取り押さえている。こんなのを入れられた日には、ミラン戦の再現もいいところだ。
バルサはゲームとボールを支配し続けた。そして時間の経過と共に若干リズムを落としながらも、粘り強くチェコチームのゴールを狙い続けた。そんな頑張りは、報われるものだ。待望の追加点は、ここでもしもの事故があったら目も当てられないとクレが不安を感じ始めていた82分。ピッチ中央でボールをカットしてのカウンターからビジャが駆け上がり、パスを受けたメッシはデフェンサによって潰されたものの、きっちりフォローしていたグアッヘが左足でこれを押し込んでいる。チームとバルセロニスタに、大きな安心をもたらすゴールだった。
2点差がついたことで、バルサの勝利は決定的となった。グアルディオラはイニエスタ、次いでビジャをベンチへと下げ、イサーク・クエンカをピッチへと送り込んでいる。過去に3度レンタル修行に出されては、そのたびに戻ってきた苦労人のトップデビュー。ペップも粋なことをする。
ゲームはその後の数分間にも、メッシによる決定機が2度ほどあった。しかし今日はレオの日ではないので、いつもは決まるシュートも入らず。試合後にペップはこう語っている。「今ではメッシがゴールを決めないだけでニュースになる。そのレベルを想像してほしい。これから何年も、彼の無得点がニュースであってほしいものやね」
この試合でビクトリア・ピルゼンなるチームの実力(とても強くはないが、容易いチームでもない)が判ったことも大きい。チェコでの折り返し戦での、サプライズ要素はかなり減少したことだろう。きっちり3ポイントを確保して、グループ突破だ。
|