リーガの両名門クラブによる、最後まで行方の見えない白熱の好ゲーム。フットボルのすばらしさを示してくれた試合だったが、激しすぎる雨が残念でもあった。
グアルディオラが最高級の敬意を抱くマルセロ・ビエルサの率いるアスレチック・クラブとの、サン・マメスでの対決。調子を上げるバスクのライオンとバルサが聖地カテドラルで激突するのだから、ファンの期待は否応なく高くなる。そして実際に上演されたゲームも、その期待を裏切らないものだった。
"師匠"との初対決にあたり、ペップはまたも先発に工夫を凝らしてきた。毎回いろんなバリエーションを試みるものだと感心するのだが、今回はチャビ、イニエスタ、ブスケツで中盤を構成し、セスクとメッシ、アドリアーノで前線を組んだミスター。アスレチックと相性の良いらしいビジャ、怪我明け間もないアレクシスはベンチスタートとなっている。最近注目のクエンカも、今回は出番がなかった。
ビルバオの街は前日から雨に包まれていた。サン・マメスの芝も必然的に非常に速い状態となっていて、ボールは快適に選手間を転がっていく。バルサにとってこれは、なかなかの条件だった。最初のチャンスは3分。メッシ顔負けのワンツーをチャビとやってのけたアドリアーノが、まずはGKゴルカへの挨拶としている。
次々とアスレチックゴールに迫るバルサではあったが、ライオンたちも負けてはいなかった。13分には綺麗なコンビネーションからエレーラがバルデスを脅かすと、19分にも再びエレーラ。左サイドでマスチェラーノがスリップしたところをスサエタが突破すると、エリア際でパスを受けたエレーラが狙いすましたシュートをゴール右隅へと突き刺している。なんとも不運な失点。これでバルデスの無失点記録も、896分で終了となった。
だがグアルディオラの選手たちは、こんなことでは凹まない。ならばお返しをするだけ、と22分にはコーナーキックのサインプレーからアルベスがゴルカを強襲すると、その1分後にはスコアを振り出しに戻してしまうのだ。左サイドでピンポンパンとパスをつないだ後、アビダルが少し早めにクロスボールをエリアへ供給。そこにはセスクが待ち受けており、ジャンプ一番完璧なヘッドでゴールネットを揺らしてみせた。英国仕込ゆえ、こんなプレーも得意なのだ。
その後、両チームはイニエスタとムニアインがそれぞれにゴールチャンスを手にするのだが、得点には至らずハーフタイムを迎えている。
後半に入ると、ピッチコンディションはバルサにとって好ましからざるものとなっていく。前半は機能していた排水システムが、限界に達したのか後半はグラウンドから水を吐き出さない。芝生にはそこかしこに水溜りが発生し、ボールの進みを妨げたのだ。パスを出しても、そのスピードは遅くなり、重いピッチに体力の消耗も早くなる。バルサのパスフットボルには、完全に逆風だった。
そうした状況で60分、グアルディオラはチャビをお役御免としてアレクシスを投入する。疲れは見えていたものの、攻め続けるバルサ。67分にはアドリアーノの思い切ったシュートが、ポストのわずか右横を通過している。
だが79分、バルサにまたしても不幸が訪れる。アスレチックにスローインをやるまいとしたマスチェラーノがハーフライン付近からバルデスへとボールを戻すのだが、これがコーナーを献上することとなり、アビダルのクリアが目の前のジョレンテのすね近くに当たった後、ピケが触ってゴールイン。いくつかの不注意と不運がミックスされた、ツキに見放された失点だった。
後半のビルバオのシュートはこれだけだったために、バルサにすればなんとも酷い仕打ちではあるのだが、それもフットボル。勝点をもぎ取るためには、そこからなんとかするしかない。逆境をばねに、バルサはアスレチックのゴールを目指した。こういう状況でこそ、チームのキャラクターが証明されるのだ。
2-1となった直後、今後はアスレチックのクリアボールがイラオラに当たってオウンゴールになろうかという場面もあったが、惜しくもボールはポスト左を通過。ここだけでも、この夜の両チームの運不運が見て取れる。
勝点3を守るため、アスレチックは懸命に守った。そして最後まで勝利を諦めず、バルサは攻めに攻めた。84分のビジャ(アドリアーノに代わって途中出場)のシュートはゴルカがキャッチ。40分のイニエスタのシュートは、両チームファンの叫びと共にサイドネットに突き刺さった。さらには88分のビジャのシュートもゴルカが弾き、バルサの敗色はかなり濃厚となっていく。だがここでやってくれるのが、我らがメッシだ。
それは時計が90分を経過した追加タイムだった。レオからの縦のボールをイニエスタがヒールでエリア内へ流し込んだところ、ビルバオ選手たちが混乱。彼らはボールをクリアしきれず、救世主メッシがシュートをねじ込んで2-2としたのだった。初黒星も覚悟しかけたなかでの、土壇場のエンパテ。せめて雨がもう少し小降りならば・・・・と天を恨みたくもなるが、スリリングで白熱のゲームだったので良しとするか。このプレーを続けていけば、シーズン最後にはきっと、でっかく報いられることだろう。
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