ティト・ビラノバに捧げる勝利。サンシーロでミランに対し、王者の風格を見せ付けた。
ヨーロッパを代表する名門クラブによる、グループHの首位決戦。1/8ファイナルのためには是非とも勝っておきたいこの試合に、ペップチームは実に堂々と勝利してくれた。
大胆なる勝負師グアルディオラは、ここで3バックを採用してきた。後の会見で曰く、ミランのチーム構成とスタイルを考えての決断。リスクが当然伴うのは覚悟の上で、ボールコントロールの強化、破壊力アップを優先してきたのだ。このあたりの勇敢さはすばらしい。
試合は序盤から激しい展開となった。両チームはハードにボールへと圧力をかけ、奪えば迷わず相手ゴールへと迫っていく。いつものように、前線からせっせとプレスを頑張るバルサ選手たち。ボールが敵陣、自陣とと忙しなく行き来するなかでペップチームは徐々にリズムを手にし、14分の最初の決定機に、先制点をゲットするのだった。
きっかけはチアゴの粘り。ケイタからのロングパスを最初は後ろへ転がしたチアゴだったが、コーナーまで走ってキープ。そしてボールを受けたメッシが左サイドを駆け上がるケイタへとパスし、マリの仕事人の鋭いセンタリングを、逆ポスト前のチャビが押し込んだ・・・ように見えたが実際はバン・ボメルのオウンゴールだった。
リードを手にしたバルサは、いよいよゲームを支配していく。だがミランはやはり侮れず、ボアテング(右)とロビーニョ(左)のサイド攻撃でバルデスの守るエリアへと迫っていった。特に危険だったのは19分。ボアテングからのボールを目の前のゴールへただ押し込めばいいロビーニョが、何故かこれを天高くふかした場面だ。肝を冷やしたバルセロニスタ。だがその1分後、今度は最もゴールを与えたくない男ズラタンによってスコアをイーブンに戻されてしまう。カウンターからの攻撃で、セードルフのスルーパスを直接蹴り込んでのゴールだった。
言うまでもなく、バルサはそんなものには動じない。ならば、と攻撃を続け、23分にはチャビとセスクで守備ラインを突破。最後はゴール正面へ走りこんだメッシが合わせるも、これはクロスバーに嫌われている。次々とGKアッビアーティへと迫るバルサ。そして30分、エリア内でパスを受けようとしたチャビをアクイラーニが倒し、ペナルティの笛が吹かれることになる。そしてスターク主審は黄紙も提示するのだが、なんとその対象はアクイラーニではなくネスタ。13番と18番を見間違ったのだろうか。カードをすでに1枚受けていたアクイラーニは命拾いとなった。
さてそのペナルティはメッシがきっちりと沈めるのだが、ここでもエピソードあり。最初にレオがネットを揺らした際、審判は彼がパラディーニャ(シュート直前に動きを止め、GKが動いた後で蹴ること)をしたとしてやり直しを宣告。メッシにもカードを出している。ちなみに1本目のシュートは左、2本目は右へと蹴っている。
後半もゲームは、バルサがリードする形で進んでいった。しかし次にゴールを決めたのはミランだ。54分、エリア内へと送り込まれたボールをマスチェラーノがクリアしようとするも不完全となり、ボールはボアテングの下へ。そしてフェイントによってアビダルのチェックもかわされ、ニアへのシュートもバルデスは止めることができない。あれよあれよとやられてしまったゴールだった。実際、プリンスのプレーは見事だったのだが。
2度も同点に持ち込まれると、メンタル面には厳しくなる。カンプノウでのいやな記憶も甦ろう。だがこのペップチームはこういう局面でリアクションを起こす力を備えており、特に必死のパッチといったプレーにならずとも、ミッションを遂行してしまうのだから頼もしい。
3点目は63分のことだ。ボールを持ってじりじりとエリアへ近づくメッシがミラン守備陣の視線を集めている隙に、チャビがするりとエリア内へと侵入。するとレオから芸術的なるパスが繰り出され、バルサの6番はこれをゴール左隅へと流し込んで見せるのだった。よくもまあこんな隙間を通りましたね、というメッシのパスが凄すぎる。アッビアーティの位置を見て、冷静にシュートを決めたチャビもお見事。
そうして三度リードを手にしたバルサは、今度はミランに同点へとされることなくゲームを終えている。サンシーロでのミラン戦はやはり簡単ではなかったが、それでも最後まで気を抜くことなく汗を流し、スペクタクルな試合の末に勝利をモノにしてくれるのだからこのチームは強い。この勝点3によってグループHの首位通過は確定。ベルナベウクラシコの4日前にあるBATEボリソフとの最終節を、消化試合と出来たのは大きい。
前日に耳下腺の手術を受けたティト・ビラノバは、この試合をラジオ観戦したという。若干はヒヤヒヤしたかもしれないが、この勝利には彼も喜んでくれていることだろう。
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