南米王者にこれでもかと完勝し、世界一となった上で聴くイムノのなんと心地の良いことか。ペップと選手たちには感謝の言葉しかない。
巷の注目を集める大一番では、このチームはいつだってフットボルのレクチャーをしてくれる。クラブ世界一を決める決戦もまた、その例外ではなかった。クライフ、そしてライカー時代には不幸に見舞われた日本との相性の悪さも、ペップチームの実行力の前には問題なし。クレにとっては"いつもの"パフォーマンスによって、またもやトロフィーを掲げてくれた。
このファイナルにペップは、ごりごりのカンテライレブンを送り込んできた。非カンテラ選手はアビダル、アルベスのみ。世界一を決める舞台で、究極ポゼッションフットボルを見せ付けてやろうというその意気込みがすばらしい。その試みは功を奏し、バルサはどうだとばかりに中盤を制圧した。巧みにポジションを修正する選手たちの間を、リズムよく転がっていくボール。ウワサには聞いていても、実際にそれを目の当たりにしたサントスの選手たちは驚愕したことだろう。彼らが運よくボールをカットしても、青えんじの鬼プレスによってそれらは即座に回収された。サントス頼みのネイマールまで、ボールが届けられることはほぼなかった。
序盤からサントスゴールを脅かし続けていたバルサの先制点は17分だ。世間の注目がメッシへと集中する中、卓越した視野と技によってゲームを支配していたチャビ。最初のゴールは彼の変態的なコントロールと、メッシの決定力によって生まれている。特にメッシへのアシストをしたチャビの、あのスコーピオントラップは一体なんだろう。GKラファエルをいなす、レオのバセリーナもパーフェクトだった。
今のバルサは、1点のリードで満足することはない。次のゴール、さらなるゴールへとギアを上げていくチーム。選手たちはパスをつなぎ続け、24分、追加点を手にするに至っている。決めたのはチャビだった。ダニ・アルベスが右サイドへ切れ込み、メッシが突入することで守備陣の注意を引きつける。空いたスペースに後方からチャビ。ダニのクロスはDFの足に当たって軽くコースが変わるも6番はなんだかよく分からないタッチで詰め寄るDFをひらりとかわし、ボールが地面に落ちるや強烈なハーフボレーをネットに突き刺している。クレの多くは、この0-2弾で勝利を確信した。
厳しい現実を突きつけられるサントスを前に、バルサはテンポ良くパスをつなぎ続ける。30分にはまたもやチャビから、ライン後方へ突入するセスクへと完璧なる浮き球パス。これは惜しくもポスト直撃弾となってスタジアムをのけぞらせるのだが、アスルグラナの4番は前半終了前、今度はきっちりとネットを揺らしている。メッシがエリア内にて粘っているところに、右方面からダニが侵入。GKラファエルは折り返しのボール、さらには詰め寄ったチアゴがダイビングヘッドも気合で弾くのだが、最後はセスクがねじ込み0-3としている。呆然とうな垂れる白いユニフォームというのは、近頃どこかで見た光景だった。
十分なリードを手にしたバルセロナは、隙あらばサントスのゴールを脅かしながらも(後半早々のセスクのシュートはポストわずか右)、リズムをやや落としていた。それによって南米王者は、ハーフタイム後に幾度かバルサ陣内へと攻め入っている。しかしネイマールのヘッドは枠を捉えず、ボルジェスのシュートもバルデスがきっちりセーブしている。ネイマールにはその後もう1度チャンスがあったが、これもビクトルが壁となって立ちはだかっている。
バルサにはさらなるゴレアーダとするチャンスが幾つかあった。メッシの悪魔ドリブルからのパスを受けたチアゴのクロスに、アルベスがダイビングヘッドで豪快に合わせ損なった場面ほか、GKがどうにか止めたメッシの至近弾、セスクとの壁パス後にわずかに枠を逸れたイニエスタ弾、アルベスのポスト弾などなどだ。
そして最後にネットを揺らしたのが、やはりこの人メッシだった。後半は右サイドに止まらず、中央だろうが左だろうが顔を出していたアルベスがサントスの守備ラインを突破し、マークを引きつけて右でフリーのメッシへとパス。アルヘンのクラックは前に出るラファエルをひらりとかわすと、無人のゴールへとボールを流し込んでいる。
試合はこうして0-4でタイムアップ。サントスに圧倒的なフットボルを見せ付けたバルサが、クラブ世界一の栄冠を手に入れたのだった。ブラジルのメディアもこのペップチームのパフォーマンスの前には、「別世界」と脱帽するしかなく、そんな試合をほぼカンテラメンバーでやってのけた彼らがなんとも誇らしい。本当にスーペルでスペクタクルなチーム。このバルサ黄金時代がまだ何年も続くことを、クレとして切に願う。そしてペップと選手たち、本当にありがとう!!来年もまた世界一になりに、日本へいらっしゃい!
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