相も変らぬモウマドリーに対し、いつものようにプレーでお手本バルサ。ラフプレーしか知らないこのチームには、事故以外で負けることはなさそうだ。
この先何度対戦しようとも、同じ指揮官たちがチームを率いているかぎりは、同様の結末になるだろう、そう確信させるゲームだった。ペップチームにこれまでに8回どつかれ(うちモウは4敗)、どうすれば勝てるのか分からなくなっているマドリーが今回採用してきた"必勝プラン"は、昨年のチャンピオンズ準決勝と同じ超守備的戦術だった。ぺぺ、ラス、アロンソを中盤で同時起用するトリボッテ。結局はそれしかないんですか、というところだ。
実際、トリボッテは勝つことを目的とするのではなく、負けないことを目指した戦術でしかない。あわよくばラッキー満載で勝てれば好い、という程度。動くことのない事実として、マドリーはこのベルナベウの試合において、前半に1本しかシュートを放っていない。わずかに1本。たった1本。
ゲームは先月のリーガクラシコと同じように、マドリーに有利な展開となっている。バルサは序盤よりボールを支配するのだが、バスを並べられてはそう簡単にはエリア内へは侵入できない。すると11分、ベンゼマが自陣でボールを奪うと前線のロナウドに向けてロングパスを一発。クリスティアノはエリア内へと切れ込み、ピントの股を抜くシュートをあっさりと決めている(1-0)。
またしても早ばやと先制点を許したバルサではあったが、過去の実績が与える自信は大したもので、選手たちに慌てる素振りは見られなかった。試合後のチャビ曰く、「ラストパスを少し急いでいた」そうなのだが、ドタバタするような様子は皆無。1点のリードを守るべくボールを放棄するマドリーに対し、バルサは辛抱強くボールをつないでいった。そして決定機も3度ほどゲット。14分にはイニエスタの鋭いシュートがカシージャスを襲うと、その1分後にはアレクシスがセスクからの浮き球スルーパスにするりと飛び出し、ラモスとコエントランに挟まれながらも頭で合わせている。クロスバーに阻まれたものの、実にお見事なプレーだった。
アレクシスはその他にも、29分にチャビからの縦パスにポストとなり、イニエスタの好機を演出。裏への抜け出しやスペースを作る動きによって、チームに大きく貢献していた。試合後のペップ曰く、「私は彼にハートを盗まれた」。クレのハートも、アレクシスに奪われつつある。
運よく1-0でハーフタイムを迎えたマドリーだったが、彼らのその幸運も後半開始3分で潰えることになる。ベルナベウの希望を打ち砕き、彼らに再び恐怖を甦らせたのは、カピタンプジョルの炎のヘッドだった。チャビの蹴ったコーナーキックに向かい、後方から猛烈な勢いで走りこむ闘将。その火を吹くヘッドがネットを揺らすと、マドリー選手たちはもう、うな垂れるしかなかった。2-6クラシコを思い出させるカピタンのゴールにより、バルサは試合を大きく自らの元へと引き寄せた。
1-1となり、勝つためには攻めるしかなくなった白組。だが動揺した彼らは、またもやおかしな方向へと突き進んでいった。要するに、ラフファイトだ。ムニス・フェルナンデス主審の寛容さ(見逃し)に助長され、荒っぽいプレーを繰り返していくモウチーム。なかでも悪辣極まりなかったのが、67分のぺぺによるメッシへの行為だ。カジェホンにメッシが倒され、審判が元ペリコにカードを出しているその間に、何食わぬ顔でレオへと近寄り、狙いを定めてその手を踏んづけたポルトガル人!どこからどう見ても、悪意に満ちた故意での卑劣行為。最低なりぺぺ。
ペペに関して付け加えるなら、彼の大根芝居もかなりのものだった。何も当たっていないのに大げさに倒れては苦悶の表情を見せること数度。ラフファイトのみならず、"劇場"も始めた白組の3番。その見苦しさはもはや無敵状態。
そんな自分たちがなんのためにピッチに立っているのかも忘れたモウマドリーに対し、バルサはどこまでもフットボルをプレーしていく。54分はセスクの浮き球パスに、イニエスタのダイレクトボレーが炸裂。シュートは惜しくもラモスの足に当たった後、左ポストに弾かれている。57分には今度はベンゼマのヘッドがバルサのポストを叩くのだが、後半の彼らのチャンスはこの1回だけだった。
68分にはチャビのフリーキックから、ブスケツがフリーでヘディングシュート。こちらは残念なことに、わずかにクロスバー上方を通過している。しかし76分、攻め続けるバルサはその報酬を手にする。エリア正面でボールをもらったメッシ。前方にはわんさと白いバスたちが並んでいた。だがバルサの10番はその左後方へと意表をつく浮き球パスを供給。誰もが驚いたその先にはアビダルがきっちり走りこんでおり、カシージャスと1対1になったアビは、冷静に左足アウトサイドでのシュートを枠内へ流し込むのだった。バルセロニスタに降り注ぐ、歓喜のシャワー。ブラボー!
天敵バルサに逆転を許したマドリーに、その逆境を跳ね返す力はない。フットボルではどうすることもできないので、あとはファールやキックでバルセロナのプレーを止めるだけとなる。いつもの出来事、進歩なし。この両チームの差は、とてつもなく大きい。
こうしてまた新たに、バルサの揺るぐことのない優越、ならびにモウチームの無力さが世界に配信された。これはバルサがフットボルをとことんをプレーしたからこその勝利。哲学を信じ、自分たちのフットボルをやりぬいたことによる勝利だ。
1週間後のカンプノウでのブエルタでもまた、この調子で。そしてペップ、41歳の誕生日おめでとう!
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