バレンシアとの好ゲームを制し、バルサが再びコパファイナル行きの切符を手にした。この4年で12回目の決勝戦というから、恐れ入る。
バルサにとって、ファイナルへの道は平坦なものではなかった。オサスナ、マドリー、バレンシアという難関を突破せねばならなかったうえ、怪我人続出で台所は火の車。よくぞ仕事を果たしたものだと称えるしかないし、試合後にペップが選手たちの姿勢をなによりも強調し、「彼らに疑問を投げかけたい誘惑に駆られた場合は、なってないと書く前にまず5つか6つ数を数えるべし」と言うのも頷ける。4年で3度もコパのファイナリストになるのは、並みのことではないのだ。
予想どおり、バレンシアにバルサへと決勝進出権をプレゼントする気は毛頭なかった。メスタージャでの試合と同じく、バルサにプレッシャーをかけ、カウンターを狙ってきたウナイ・エメリの選手たち。前後半ともに二桁となったファール数からも、彼らのハードさは見て取れる。最初に決定機を作り出し、相手方をひやりとさせたのはバレンシアだった(3分のマチューのシュートはヒットせず、13分のフェグリ弾も枠の左)
もう見慣れた光景ではあるが、この試合もバルサの出足は鈍かった。序盤はプレーがぎくしゃく。度々ボールを失い、ばたばたと守備に追われていた。そんな危うげなバルサを一気に元の姿に引き戻したのが、15分のセスクによる先制点だった。
センターライン手前のメッシから、コウモリチームの守備ライン後方へと見事なロングボールが送り込まれる。これに反応し突撃するセスク。そしてバルサの4番はミゲルとの競争に勝利し、やや飛び出しを躊躇したGKヂエゴ・アルベスを軽やかな右足アウトサイドのバセリーナで料理してみせた。最初の相手エリア内侵入で先制点。これぞ高給取りのお仕事。
このゴールで落ち着きを取り戻したバルサは、いつものリズムでボールを回すようになる。バレンシアはピントに近づけなくなり、逆にバルサはヂエゴ・アルベスに幾度となく襲い掛かっていった。守備ラインでのパスミスが複数あった"チェ"。守護神に当たりがなければ、バルサは早々にゴレアーダを実現していたことだろう。ヂエゴはまず18分にメッシとの1対1をしのぎ(こぼれ球を受けてのクエンカのシュートはポスト左を通過)、25分のメッシのフリーキック、30分と36分のセスク弾もブロックしている。
前半15分以降のバルサは、圧倒的にゲームを支配していた。一方的に攻撃を仕掛け、チャンスを何度も作り出した。しかしこの数試合と同じように、その決定機を確実にモノにできない。好感触ながらも1-0でハーフタイムに入ったことは、一抹の不安も抱かせてはいた。実際、クレのイヤな予感はもう少しで現実となるところだったのだ。
後半開始1分、バルセロニスタはいきなり肝を冷やすことになる。ジョルディ・アルバがライン裏へ抜け出し、ピントと1対1に。"タオパイパイ"のすばやい飛び出しによるパラドンがなければ、ゲームはどうなっていたか分からないところだった。
さっさと勝負を終わらせるべく、バルサはバレンシアゴールを狙い続けた。54分にはクエンカのパスを受けたメッシがほぼ1対1となるも、ビクトル・ルイスがスライディングでこれを阻止。55分のメッシの単騎密集突破&つま先シュートも、またもヂエゴ・アルベスによって阻まれた。あと一歩のところで決められないメッシと、止めまくるブラジル人ポルテーロ。悶絶の展開から、バルセロニスタはなかなか解放してもらえなかった。
だが試合が1-0のまま進んでいったことは、バレンシアにとっても難しいところだったようだ。もし1-1の同点となれば、延長戦が待っている。ウナイ・エメリがすでに1枚カードを受け、その後も危なっかしいフェグリをピッチに残していたのも、そのあたりなのだろう。そして74分、フェグリはプジョルへのファールによってドブレ・アマリージャで退場。バルサが数的優位というアドバンテージを手にする。
ようやく決着が付いたのは80分のことだった。メッシからの縦パスを受けたアレクシスがエリア内で粘り、中央のセスクへと横パス。そして4番がワンタッチで右へと流した先には、フリーとなったチャビがいた。あとはゴールネットを目掛けて、狙い澄ましたシュートを叩き込むのみ。グアルディオラもガッツポーズの追加点によって、バルサがバレンシアの希望を打ち砕いた。
険しかった道を乗り越えて、手に入れたコパの決勝戦への切符。ファイナルでペップチームを待つのは、"奇人"マルセロ・ビエルサ率いるアスレチック・ビルバオだ。2009年ファイナルと同じ顔合わせになるが、バスクのライオンは以前とは別チーム。手に汗握る、戦術と闘志のぶつかり合いとなるのは間違いなさそうだ。
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