苦しい展開ながらも、天賦の才によって勝点3をもぎとったという試合。
ビセンテ・カルデロンのピッチへと向かう時点で、バルサ選手たちはレアル・マドリーがラーヨに勝利したことを知っていた。つまりはここでの取りこぼしは、ほぼ完全なる終戦宣言となると判ってのアトレチコ戦開始だ。逆転の可能性はほぼないにせよ(試合後のペップ・グアルディオラもそれを認めた)、最後まで抵抗はしなければならない。粘らなければ、チャンスが生まれることもない。
そういった状況の中、ペップの選手たちはなかなか上手に試合に入っていく。自陣で守備を固めカウンターでの一撃を狙うシメオネチームに対し、集中してボールをコントロール。ほとんど存在しないスペースをどうにか見つけ出すべく、忍耐強くパスを回していった。
バルサは2分、最初のチャンスを作り出している。最後のチャビのミドルシュートはポスト左をかすめて行ったが、そのお膳立てとなるメッシとセスクのコンビネーションはなかなか。8分にはメッシが得意の悪魔ドリブルによって中央突破に成功し、バセリーナによってネットも揺らすのだが、これは途中にハンドがあったとしてペレス・ラサ主審は無効の判定。レオには黄紙も提示され、カード累積5枚によって(奇しくもぺぺと同じタイミングで)メッシは次節を欠場することになる。
アトレチコがボールを放棄していたため、支配率は高かったバルセロナだが、そういう場合はむしろチャンスを作り出せない。20分にはチャビのフリーキックがゴール右角を突くも、これはコルチョネロの長身ポルテーロがジャンプ一番、コーナーへと回避。25分から30分にかけてアトレチコに3枚のカードが出ているように、彼らはハードなチャージでバルサのプレーを寸断させていた。このまま0-0でハーフタイムへ入っていれば、まさにシメオネの計画通りだったろう。
ダニの先制弾
しかし35分、ペップチームはメッシの突破をきっかけについに先制点を奪い取る。必殺のドリブルでレオが守備陣の注意を引きつけた後、ボールは左でフリーのセスクの元へ。そしてココしかないという4番の正確なセンタリングを、逆ポスト前に詰めたダニ・アルベスがねじ込んでゴールとしている。
この得点によって前に出ざるを得なくなったアトレチコは38分、前半唯一にして最大のチャンスを手にしている。バルサがエリア前でボールを失った瞬間を見逃さず、アルダが左サイドからあわやというセンタリングを供給。だがボールがファルカオへと届く前に、バルデスがわずかに速くキャッチして事なきを得ている。さすがは我らの守護神だ。
アトレチコにファルカオあり
だが後半早々の同点ゴールの場面では、聖ビクトルといえどもどうしようもなかった。48分、右コーナーをブスケツが頭でクリアし損ない、左ポスト前にボールが流れたところをフリーのファルカオが合わせて1-1。エリア内で仕事をさせたら、彼は実に厄介な選手だ。
前半とは異なり、後半のアトレチコはとても積極的だった。前線からバルサ守備陣へとプレスを仕掛け、ボールを奪ってはカウンター。ペースはホームチーム側へと傾き、ゲームは幾分オープンな展開となっていた。67分にはアルベスの右からのクロスに左ポスト前のアレクシスが頭で合わせるもシュートは枠を捉えず(直前のメッシのスライディングシュートも半歩届かず)。逆に69分にはファルカオが1本のロングパスからバルデスと1対1になるのだが、コロンビア人ゴレアドールのバセリーナは、聖ビクトルのバスケ的ブロックによって阻止されている。
この状況を改善すべく、グアルディオラは71分、アルベスに代えてクエンカをピッチへと送り込み、システムを3バックへと変更している。そして75分にはアレクシス・サンチェスがネットを揺らすのだが、ラサ主審はハンドがあったとしてこのゴールも無効にするとともに、アレクシスにはカードを提示。ちなみに前半のメッシとこのサンチェスの取り消されたゴールは、マドリ系メディアも有効だったとしている。
メッシの"ズルい"決勝弾
劣勢のバルサに値千金の3ポイントをもたらしたのは、レオ・メッシの狡猾ともいえるプレーだった。エリア左でペドロ(セスクに代わって途中出場)が倒され、手にしたフリーキック。ここでバルサの10番はアトレチコの選手たちが壁を作るのに気を取られているのに気付き、すばやくゴール右角へとボールを放つ。マズイ!とクルトワが気づいた時はもう遅し。ボールは美しい放物線を描きながら、ネットへと吸い込まれていった(81分)。
再びリードを手にしたことで84分、ペップはアレクシスをベンチに下げてピケを投入し、守備を固めている。その後、守るバルサを救ったのはビクトル・バルデスによるパラドンの連発だ。我らの守護神は88分にはファンフランの至近距離弾を身体を張ってブロックすると(アトレチコはその直前のブスケツのハンドを主張。マドリ系メディアも同様)、92分にはガビによる強烈なロングシュートも弾き返した。こうしてヒヤヒヤものながらも、なんとか難所で勝利を勝ち取ったペップチーム。「最後までリーガを諦めない」というその言葉を、プレーで示して見せたゲームだった。
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