良くも悪くもなかった内容と結果。カンプノウで勝つしかない(勝てばいい)という状況は、シンプルではある。
いつもどおりに自分たちのフットボルをしようとしたペップバルサに、アッレグリのミランは超現実的保守的戦術で臨んできた。不用意に前へ出ることは避け、がっちり守って速攻で一撃を狙うという対バルサの黄金パターン。リーガ勢との違いは、ミランが自陣に引いた場合はプレッシングも放棄してきた点だ。言い方は悪いが、グランデがやるにはちょっと寂しい方法論。
とはいえ最初に決定機を手にしたのはミランだった。前線のプレスによってブスケツのパスミスを奪い取り、最後はイブラヒモビッチからのパスをロビーニョがシュート失敗したというシーン(2分)。八割方は決まっていておかしくない一発だけに、バルサとしては助かった。
この日の(いつも?)ジュゼッペ・メアッツァのピッチは、一面がバナナの皮かというような滑り具合だった。あっちでつるり、こちらでつるり。メッシがフリーキックの際に滑って転ぶというピッチ状態であり、その際に思わぬ軌道となったボールをケイタが押し込んでいれば喝采だったのだが、残念ながらあと一歩でゴールには至らなかった。10分前後から、ゲームはバルサが一方的にポゼッションする展開となっている。
※前日の練習でグラウンドが乾きすべり易かったため、バルサは試合当日の両クラブと審判団、UEFA代表によるミーティングで水をまくことを提案、全員がそれで合意していた。しかし結局ミランはその約束は守らず、バルサはこれに抗議していく構え。
ペナルティの笛鳴らず
残念な芝生の上でどうにかボールを回し、自分流を貫こうとするバルサに対し、ミランはエリア内をとにかく守ることを優先していた。そんな彼らにとって助けとなったのは、15分の審判によるペナルティ見逃しだ。エリア正面でのフリーキック。サインプレーからライン裏へ抜け出したアレクシスをGKアッビアーティが溜まらず倒すのだが、エリクソン主審はそれをファールだとはみなさずに「9番くん、起きなさい」の指示。あれはふつうにペナルティでもいいでしょうに。
その後、メッシのゴールがたしかにオフサイドだったことを悔しがるバルセロニスタが、悔しい余韻を味わう間もなく冷や汗をかいたのは20分のことだ。"あの"チャビが背後からの寄せでボールを奪われ、セードルフからのキラーパス(ピケが裏を取られた)がスペースへ走るイブラへ。クレは最悪の結果も覚悟したところだが、これは我らが守護神バルデスが読み勝ちでブロックしている。さすが。
25分にはチャビがドリブル突破&壁パスから決定的なシュートを放つも、今度はアッビアーティが気合のセーブ。バルサはミラン陣内へ攻め込みながらもなかなかカテナチオを崩すまでには至らず、惜しい場面もネスタ、メクセスらの懸命な守りによって阻まれた。この日はイニエスタに輝きがなかった点も、バルサが苦労したひとつのポイントだ。
プジョルが引っ張られ・・・・
後半に入り、ミランのアクセントとなったのは、ロビーニョに代わってピッチに立ったエル・シャーラウィのスピードだ。最終的に後半のミランのシュートは0本に終わるのだが、時間帯としてはバルサのエリアに近づくこともあった。60分頃までは、ペップチームはあまりゲームを支配下に置けていない。
こう着状態を打破すべく、グアルディオラは64分にテージョをピッチへと送り込んだ(イニエスタがベンチへ)。いつものごとく、思い切りよく左サイドで次々と1対1を仕掛けていったサバデイの若き弾丸。いずれもう少しバリエーションも増やしてほしいが、その大胆さとスピードは高く買いたい。
ゲームが0-0で終盤戦へと入っていったことで、ミランはそのまま逃げ切れば良しという考えをより強めていった。そんななかで起こったもうひとつの問題のプレーが、77分のメスバーによるプジョルのシャツ引っ張りだ。コーナーキックに頭で合わせようとするプジーのユニをミラニスタは思いっきり引っ掴んでいたのだが、こちらも主審はノーファールと判定している。
ゲーム終了間際にはエリア内のメッシのシュートがアッビアーティを襲い、こぼれ球にテージョが追いつけば1点という場面もあったが、やや離れた位置にいたスピードスターよりわずかに早くデフェンサがクリアして得点とならず。試合は無得点のままお開きとなっている。
ということで、バルサがセミファイナルへと勝ち上がるための条件は勝利のみとなったが、変にややこしよりは分かり易いのでヨシとしよう。次の舞台はジャガイモ畑ではなく、芝の美しいカンプノウだ。ペップの要請を受け、要塞は超満員となるだろう。フットボルに相応しいピッチであれば、バルサは確実に勝利する。少なくともクレはそう信じている。バモス!
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