ハードスケジュールの中で、フットボルを愛するチームが全力で雌雄を決した試合。激しいながらも、爽やかなゲームだった。
パンプローナで盛大にずっこけることを期待されていたマドリーが、難なく1-5で勝利したのを知ってからの試合。ペップチームはもちろん、プレッシャーを感じてピッチに立ったことだろう。ここでの取りこぼしは、終戦の鐘となりかねない。だが彼らは今回もまた、タイトルレースへの闘志を示してくれた。カンプノウに迎え撃つは今、ヨーロッパでセンセーションを起こしているビエルサのアスレチックだ。
3日後にミランとの大一番が待っているとはいえ、バルサに努力の出し惜しみは許されなかった。ピッチに出た選手に求められるのは、まず第一に全力投球。ドイツでの試合(シャルケに2-4)から中1日のアスレチックはさすがに疲れていたようだったが、だからといって簡単な相手ではなかった。ペップが前日に警告していたように、バスクのライオンたちはとにかくよく走ってくるのだ。
この試合でのバルサは、立ち上がりから非常に活発にプレーを行っている。ビルバオがボールを持てば、即座に強力プレス。ボールを奪い返したならば小気味よくボールを展開。ベンチスタートとなったチャビに代わってスタメンとなったチアゴがゲームを組み立て、ブスケツはいつものように変態的なテクニックを見せながら危ないゾーンをカバー。マスチェラーノとピケによる守りも見る者に安心感与えていた。最初の決定機が何故だかワカ旦那ののエリア内ボレーだったことからも、彼にも春が到来したのだと感じさせる(5分)。
こじ開けたのはイニエスタ
ただし、アスレチックの組織立った守備を崩すにはやや時間がかかった。7分にはアルベスのパスを受けたチアゴがネットを揺らすも、これはわずかにオフサイド。24分のメッシによる早いタイミングでのフリーキックはGKゴルカ・イライソスがかろうじてコーナーへと逃れ、25分にはピケの角度のないシュートをアウルテネチェがライン上でクリアしている。27分のイニエスタによる強烈ミドル弾もゴルカによって寸でのところで弾き出された。
水曜日のミラン戦では元気のなかったイニエスタだが、この試合ではやってくれた。39分、守備に大貢献のアレクシスが中盤でボールを奪取し、メッシへとパス。そして前方のスペースへと送られたボールを受けたドン・アンドレスがエリア内へと突入し、これでもかというミサイルシュートをゴールネット上辺へと文字どおりに突き刺したのだ。快感度120%のゴールだった。
前半のアスレチックは、攻撃はある程度断念し、失点しないことを優先しているようだった。ハーフタイム前のシュート数が0というのが、それを物語る。前半の彼らのベストプレーヤーはGKのゴルカだ。
メッシのペナルティゴール、ピケのセーブ
後半に入るとマルセロ・ビエルサ監督は、ベンチに置いていたふたりの主力選手(ムニアインとエレイラ)をピッチに送り込んだ。勝点を持ち帰るには、より攻撃的にいかなければならないアスレチック。それによって見せ場が回ってきたのが、前半はほとんど姿を消していたクリスティアン・テージョだ。
テージョはハーフタイム明けに連続してチャンスに絡んでいる。自身のシュートもそうであり、58分のペナルティ獲得もそうだ。得意のドリブル突破によってエリア内へと侵入したテージョを、ハビ・マルチネスがたまらず後方から押し倒し。マテウ・ラオス主審は迷わずペナルティを宣告し、メッシがこれをきっちり沈めて2-0としている。
2点のリードがついたことで決着もほぼついたといえるのだが、そこで容易く諦めたりはしないのがアスレチックというチームだ。そして79分、このゲームにおける彼らの唯一の得点機が訪れる。若きムニアインがバルデスとの1対1に勝利し、おしゃれなシュートを無人のゴールへと転がしているのだが、このピンチを救ったのが、ワカ旦那が懸命に伸ばした長い脚だ。ピッケンバウアーの復活は、クレとして素直に嬉しい。
ゲームはそのまま、2-0で終了する。終了間際にオマケとなったのが、途中出場のケイタによるクロスバー直撃弾。ここで88000人の観客+テレビ視聴者をのけぞらせるのも、エンターテイナーなりにけり。
アスレチックのプレーは激しいながらもダーティではなかった。さすがに師弟とも言われるだけあって、グアルディオラとビエルサのフットボルに共通点は多いと再確認する試合だった。しかし献身と努力で並んだ上でのパスフットボル勝負ならば、世界的クラックを擁し、一日の長のあるバルサが一枚上手。より良いコンディションで行われる5月25日のコパファイナルもスペクタクルは間違いなく、リーガ2試合での対決をふまえての再戦が非常に楽しみだ。
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