ゲームを支配し、シュートを打ちまくり、チャンスの数も一方的だったのに、終わってみれば何故だか敗北というゲーム。どうして負けたのか、それは作ったチャンスの帰結としてゴールを入れられなかったからだ。シンプル。
フットボルでは勿論こういうゲームだってあるのだが、それがこのチャンピオンズ準決勝で登場すると、さすがにそりゃないぜとも思う。3日後のクラシコが脳裏にちらついていたのか、プレーに燃える熱さもさほど感じられなかった。
ペップ・グアルディオラがスタンフォード・ブリッジに送り込んだ先発イレブンは、土曜のマドリー戦なんぞ知るものか、プジョルとマスチェのタルヘタリーチも知ったことかという、イカした面子だった。後付けで不満を言うなら、イニエスタのエストレーモ起用くらいか。
決められそうで、決められない
キックオフと同時に、バルサはボールと試合を支配している。引いて2列のラインを作ってくるチェルシーに対し、いつものようにパスを展開。やや苦労しながらもチャンスは作り出しており、クレはまず10分、この試合最初の「ウィー」を口にしている。イニエスタのスペースへのパスにアレクシスが抜け出し、チェフとの1対1からバルサ印のバセリーナ。クロスバーを叩いたこのシュートが決まっていれば・・・まあそれを嘆いたところで、有意義なものはなにも生まれない。
17分の場面も決定的だった。メッシがエリアを深くえぐり、イニエスタが左サイドから鋭いシュートでチェフを強襲。どうにかポルテーロが弾いたボールを、フリーだったセスクが仕留め損なっているのだ。シーズン序盤の決定力はどうしたの、セスク。
バルサの4番にはもうひとつ、決めておきたい場面があった。前半もそろそろ終わりかという43分、メッシが自陣でボールを奪ってドリブル疾走。青いデフェンサたちを4人引きつけてセスクへとラスとパスを送るのだが、彼のシュートは若干弱く、またコースも少しずれていた。アシュリー・コールがライン手前でクリアしているのだが、オウンゴールしないかぎりはポストにも当たっていなかっただろう。
バルサにとって不幸だったのは、あと数十秒でロッカールームへ引き上げようという前半ロスタイムに、まさかの失点を喫したことだ。メッシが足を滑らせて、変な倒れ方をしたその直後のプレー。そのメッシがセンターサークル上でランパーを股抜きでかわそうとして失敗、ボールを奪われて左方面のスペースへ絶妙パスを送り込まれ、走りこんだラミレスのクロスを、最後はドログバが押し込んだのだ。チェルシーのこういう決定力はすごい。
ポストさんのイジワル
リードを手にしたチェルシーがどういうことになるかは、まったく想像に難くなかった。ディ・マッテオのチームは前半よりもさらに専守防衛の形を強め、前線のドログバ(テアトロ役者)までもが守りを優先するようになったのだ。後半のブルーズは、1本のシュートも放ってはいない。
ペップチームはフエラでの土産を持ち帰るべく、攻撃を続けた。しかしながら無理をしてまでもこじ開ける必要はないという思いがどこかにあったのか、ギアは前半よりも低い感じ。それでもチャンスを作り出せるところはさすがなのだが、この日のバルサには如何せん決定力というか、ゴールをねじ込む力に欠けていた。
56分、セスクの浮き球パスに抜け出したサンチェスのシュートも、チェルシーの決死の圧力によって枠を捉えず。好位置でのフリーキック3つ(レオ、チャビ、ダニ)は、お人よしにクロスバー上空を通過している。惜しかったのは86分のメッシによるフリーキックだが、プジョルの後ろへと逸らしたヘディングシュートは、守護神チェフがジャンピングセーブでコーナーへ逃れた。
今回のスタンフォード・ブリッジでも、ペップチームは試合最後にイニエスタッソの再現か?という場面を作り出している。もしこれが決まっていれば、ペドロラッソ、あるいはセルヒオッソという名で語り継がれていたかもしれないのだが、ペドリートのシュートはポストに嫌われ、弾かれたボールを受けてのブスケツのシュートも雨空の星となるばかり。どうしてもボールがチェルシーゴールに入りたがらない、そんな夜だった。
こうしてバルサは、あのパンプローナ以来となる黒星とともにロンドンを去ることになった。"イニエスタが出場すれば負けない伝説"も、これでひと休憩。だがスタンフォード・ブリッジで24本のシュートをぶちかましたバルサだ。カンプノウで同じだけシュートを放ち、そのうちの3つほどを入れれば、それでミッションコンプリート。土曜日にクラシコで勝利し、その勢いでミュンヘン行きの切符もゲットしてくれるに違いない。バモス!
【チェルシー戦後のペップ・グアルディオラのコメント】
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