さらば、2011/12シーズンのリーガ。悔しいけれども、マドリーがタイトル奪還に向けて大きく前進したクラシコとなった。
栄冠はいつまでも続かない。どんな強いチームも、敗れる瞬間はいずれ訪れる。そうは理解していても、地元でのクラシコで敗北で味わうとなると、精神的なダメージは相当に厳しいものだ。水曜日にロンドンで負けていた後だけに、尚更しんどい。
前日の会見にて自ら「勝利あるのみ」としていたこの天王山決戦に、ペップ・グアルディオラは驚きのスタメンを採用してきた。アルベスをエストレーモに置いた3バックで、中盤はセスクではなくテージョを起用。怪我によって出場が微妙とされたアレクシスはベントに控え、テージョが先発となったのだ。これは決して満を辞してのサプライズではない。確かな狙いはあろうとも、そうせざるを得ないチーム状態なのだ。
ただパスを回すだけ
残念ながら、監督のプランは希望通りに運びはしなかった。マドリーが専守+カウンター戦術を採ってきたためにボールは保持できるのだが、パスの運びは遅く、身体のキレも重く、守備網を崩すためのアイディアも乏しく、肝心のパスも不正確で、チームとしての動きにリズム(躍動感)がない。これぞ良くないときのバルサの見本ですよ、というような、そんなプレーだった。
守備の急所に縦パスを突き刺せなければ、守ったろうとしているビッグチームは慌てさせられない。横パスをいくら続けても、チャンスを作るという意味では無意味。しかも容易にそれをカットされていては、バルサのプレーはままならない。エンパテ上等のマドリーは、この迫力のないバルサに安心しただろう。彼らは小まめなファールでホームチームのプレーを中断させていたが、いつものようにラフファイトではなかった。その必要もなかったのだ。
ツキもなく失点
失点の仕方も、とほほだった。4分にコーナーからクリスティアノに危ういヘディングシュートを打たれ、6分にアルベスがボールカットからハーフチャンスを作り、10分にベンゼマがシュートを放っていた後の16分。右からのコーナーをバルデスが上手く処理できず、さらにこぼれたボールをこれまたプジョルがクリアできずにいたところを、ケディラにちょこんと蹴り込まれて0-1とされてしまうのだ。
不吉な失点によって静まり返ったカンプノウは、22分のアビダルへの拍手によって少し息を吹き返し、それとともにバルサのプレーにもやや活気は戻ってくるのだが、引き分け上等のうえにリードも手にしたモウリーニョチームの守備固めを破ることはできない。26分、メッシからのスルーパスに1対1となったチャビのシュートが決まっていれば話も違っていたことだろうが、ボールは無常にも左ポストを掠りながら通過。一切の楽観的ムードを生むことなく、突然振り出した大雨の中、ハーフタイムを迎えている。
アレクシス歓喜の同点弾も・・・
前半は左サイドに開きっぱなしで、ほとんど先輩たちに使ってもらえなかったテージョ。後半になるとその点は改善され、得意の動きによってチャンスも手にするのだが、ここで若さが出てしまうのは仕方ないというところだろうか。54分、チアゴのパスを受けてカシージャスと1対1になった弾丸エストレーモだったが、普段であれば8割がた決まっていそうなシュートは、どかんと大きく枠上方へ飛んでしまった。
どうやって試合の流れを変えるか。ピッチ脇で長らく話し込んでいたペップとティトの出した答えは、チャビをベンチに下げ、アレクシスを投入するというものだった(68分)。そしてこの采配は、いきなりその効果を発揮した。その1分後の波状攻撃から、バルサは突然同点に成功するのだ。テージョのシュートをカシージャスが弾き、そのこぼれ球をアドリアーノがシュートし、マドリー選手に当たって転がってきたボールをアレクシスが執念でねじ込んで1-1。ついにキター!と全世界のクレが熱狂した瞬間だった。
しかしそのバルセロニスタの歓喜とイケイケムードも、わずか2分にて霧散する。72分、それは1発のカウンターだった。エジルから前線のスペースへと絶妙極まりないロングパスが送り込まれ、猛然と走りこんだクリスティアノがきっちりとズドン。これによって、バルサ勝利の芽は摘み取られてしまった。一番ダメージの大きなタイミングでの失点だった。
おそらくは疲労困憊で戦っているバルサに、ここから1点を返すだけの余力はなかった。そして無力感とともに、試合は終了。リーガ戦線はこれによって、事実上終了と言えるだろう。チャンピオンズはもちろん可能性は残しているが、正直言って流れは悪い。かなり悪い。同日のプレミアリーグで先発選手を大量に温存したチェルシーは、このマドリー方式を大いに参考にするだろう。ロンドンとこのクラシコで失敗した、"チャンスを確実にモノにする"ことが火曜日は出来るかどうか。ミュンヘンに行けるかどうかは、そこに懸かっている。あとは出来るかぎりの休養とリフレッシュ。ふんばれ、ペップチーム。
【マドリー戦後のペップ・グアルディオラのコメント】
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