フットボルとはなんとも厳しく、ある意味不公平なものだねという強烈な印象を残し、カンペオンがチャンピオンズの舞台から去った。
勝負の世界では結果こそ全てであることは解ってはいる。しかしそれではなんとも寂しいではないか。180分を通してより多くシュートを放ち、チャンスを作り出し、勇敢であったほうが勝者であってほしい。それが"フットボル的公正さ"ではないのか。だが結局のところ、勝てなければそういった言葉も説得力に欠ける。絶対的強者を破るためであれば、ビッグチームによる臆病な戦術も正当化される。
ペップはこのチェルシー戦に、3日前のクラシコと同じ3バックを採用している。ただしメンバーは少し入れ替えていて、エストレーモに置いてもあまり効果のなかったアルベスはベンチスタートとし、前線の特攻要員にはクエンカを起用。最終ラインの中央には、3週間ぶりにピケが戻ってきた。
ディ・マッテオが用意したプランは、予想どおりスタンフォード・ブリッジと同じだった。ボール保持はとっとと諦め、エリアを閉ざすこと。1度は訪れるであろうカウンターのチャンスを決めれば、それでいいというアイディアだ。臆面なく引きこもるチェルシーに対し、バルサはボールを回しに回した。4分にはいきなり、アレクシスのパスを受けたメッシのシュートがサイドネットを揺らす。もしこれが決まっていたなら・・・・・チェルシーはフルボッコだったかもしれない。しかしこの日もフットボルは、その申し子に相応しからぬ罰を与えることを選択した。レオは19分にも、セスクとの崩し(ヒールパス!)から決定的シュートを放っているが、こちらはGKチェフによってブロックされている。
両チームのセントラルが負傷交代
このゲームは序盤、両チームにアクシデントが起こっている。11分に青組のケーヒルが、ハムストリングスを傷めてボシングワと交代。そしてその5分後には、ドログバとボールを争ったバルデスとピケが空中で衝突。WAKA旦那はこの際に頭を強打し、しばらくプレーした後、アルベスと交代でロッカールームへと下がっている(後に病院へ。検査の結果、異常は見られなかった)。
一方的に"プレー"をするバルサがついに青い壁(実際は白いシャツ)をこじ開けることに成功したのは、35分のことだった。コーナーキックから始まった一連のプレー。エリア左にいたクエンカが縦へと切れ込み、折り返したボールを正面でフリーだったブスケツが押し込んで1-0!イダの最後で決定機を逃していたセルヒオだけに、これは嬉しいゴールだった。
テリー退場、イニエスタ弾
このゴールによって、チェルシーはどうやら気を取り乱した。直後の36分、カピタンであるテリーがボールとは無関係の場面で、アレクシスの太ももに対し背後からヒザを入れるという意味不明の暴挙。しっかりとこれを目撃していた審判により、一発退場処分とされている。思わぬ形で、バルサは数的優位となった。
そして43分、バルサはチェルシーに更なるダメージを与える。中盤でボールを奪ってからのカウンター。メッシがドリブルで持ち込み、丁寧なタイミングでスペースへと送り込まれたパスを、これまたイニエスタが丁寧に流し込んで追加点としたのだ。やっとこさバルサの努力が報われた。そうクレが安堵した瞬間だった。
同じ過ち
しかしこのバルセロニスタの歓喜は、すぐさま水を差される。3日前のマドリー戦でそうだったように、ゴール直後にゴールのお返しをされるのだ。タイミングも悪く、1週間前のスタンフォード・ブリッジと同じく、前半の追加タイム。今度はラミレスにスペースへの飛び出しを許し、完璧なバセリーナを放り込まれたのだった。このゴールはチェルシーに再び希望を与え、バルサには大きなショックをもたらした。
メッシ、ペナルティ失敗
だがロンドンチームに1点を決められることは、十分想定できたことではあった。この日は前半のうちに2点を奪えたこともあり、後半にあと1点追加すればこちらの勝ち。やれるという感触は大いにあった。
実際、バルサは後半開始早々にそのチャンスを手にしている。47分、エリア内でドログバがセスクに足をかけて倒し、主審はペナルティを宣告したのだ。しかしキッカーとなったメッシのシュートは、非情にもクロスバーを直撃してしまう。なんて残酷な仕打ち。これに対しカンプノウは、「気にすることなんてないぞ」のメッシコールを送っている。
九死に一生を得た後の、チェルシーのプレーは徹底していた。なにがなんでも、とにかくゴールを守りきる。ドログバまでもが守備ラインに入り、6-3-0で守られればさすがにバルサとて崩すのは困難だ。跳ね返されても弾かれても、バルサは何度でもゴールを狙っていった。しかし惜しいところまでチャンスを作っても、そこに立ちはだかるチェフの壁。残り時間は確実になくなっていく。
81分にはアレクシスがネットを揺らすも、これはアシストをしたアルベスの位置がオフサイド(かなり微妙!)だったとの判定でノーゴール。82分にはメッシのシュートがポストに弾き返された。しかし最後まで諦めなければ、新たなるイニエスタッソがあるかもしれない・・・そんなバルセロニスタの夢を打ち砕いたのは、92分のフェルナンド・トーレス(途中出場)のゴールだった。チェルシーはこの180分の戦いで3つの決定機を手にし、その全てで得点を手にした。バルサとは対照的なる、効率性の高さよ。
こうしてペップチームの、チャンピオンズ連覇の夢は終わった。哲学とともに散ったチームに対し、カンプノウはスタンディングオベーションで称えている。
【チェルシー戦終了後のペップ・グアルディオラのコメント】
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