大西洋を隔てていても、チームの全状況を把握するミスター。
昨年12月、バルセロナのベイダブロン病院で耳下腺腫瘍の摘出手術を受け、現在はニューヨークで治療を続けているティト・ビラノバ。バルセロナとニューヨークとの距離はおよそ6,170kmとなっていまして、これは大体、東京からホノルルまでの距離と同じくらいです。しかし肉体的にはミスターとの距離は離れていても、チームはきっと、精神的にはそれほどの遠さは感じていないはず。ティトは毎日頻繁にロウラと連絡を取り合い、第二監督曰く、「彼はここにいないけれど、違いはさほど大きくない」状態となってます。
通院と仕事の日々
ティト・ビラノバは奥さんとともに、レアル・ソシエダ戦翌日(1月20日)にニューヨークへと降り立ちました。当初の予定では短期滞在となり、2月3日のバレンシア戦では指揮を執るだろうとされていましたのでホテルに宿泊していたのですが、アメリカでバッチリ治してから帰国することに方針変換した後は、アパートメントへと引越し。そこから毎日、メモリアル・スローン・ケタリング癌センターへと通院している監督です。病院では毎日、2時間ほどの治療を受けているそうです(SPORT紙情報)。
伝わってくる情報によれば、心身ともに元気であるらしいティト。ではその彼が病院で過ごす以外の時間をどう使っているかといいますと、その大半が愛するチームのために費やしているのだとかで。元々、遠征先でも外出しないティトですので、世界で最も魅力ある街とされるニューヨークでも部屋を出るのは夕食くらい。あちらの寒さもまた、彼の”出不精”の要因のひとつになってるみたいです。アメリカ東海岸とスペインの時差は7時間につき、トップチームのお昼の練習時はビッグアップルでは真夜中の4~5時あたり。一方で試合時(20時~22時)は夕方ですから、こちらはちょうど都合良さそうです。
ジョルディ・ロウラが説明しているように、ビラノバは毎日、第二監督やコーチングスタッフたちと連絡を取り合っています。なのでその日のトレーニングメニューがどうであったか、各選手たちのコンディションはどうか、ゲームへ向けたプランニングなどをミスターは完璧に理解している。ゲーム中も戦術修正や交代など、あらゆる決定はティトとの相談後に為されています。
アパートメントに仕事部屋
大西洋をモノともしない、そういった頻繁なるコミュニケーションを可能としているのが最新のテクノロジーです。一昔前であれば無理だったことが、今ではいとも簡単に出来てしまう。例えばティト・ビラノバとジョルディ・ロウラは、iPhone用のアプリ”WhatsApp”によって連絡を取り合っています。通話機能(電話番号)を経由してメッセージ(や画像、動画など)を無料で送れ、たいそう便利だそうです。
そしてティトが暮らしているニューヨークのアパートメントには、”ティトラボ”とでも言うべき作業部屋がしつらえてあるのだとか。要するにパソコンやテレビの設置された部屋なのですが、インターネットさんのおかげで、監督は6,170kmの彼方でもチーム状況を把握することが可能となっています。
テクニカルチームは毎日、その日の出来事などをまとめた情報をボスへと向けて送信します。ロウラ曰く、「ここにいるのと全く同じというわけにはいかないけれど、ティトは必要な情報の全てにアクセスできる。シウター・エスポルティーバのカメラシステムによって試合やトレーニングもチェックすることが可能なんだ」。前述した時差のため、さすがにティトはライブで練習を見ることは出来ませんが、スカウティングチームによって録画された映像を後でチェックするわけです。
SPORT紙の記事によりますと、その過程はこんな感じになります。■練習グラウンド横の観覧席から、スカウティングチームがトレーニングの様子を録画する。■その映像をパソコンにて編集。■まとめられた映像は専用のサーバーへとアップされ、ティトがそれにアクセス。練習終了1時間後には、チェック可能となる。
ティト・ビラノバもまたいわゆる”フットボル中毒”のお人ですから、バルサの試合以外にも、リーガ・エスパニョーラの他の試合や、他国リーグの試合などもかなりの量をチェックしているそうです。病気は不幸なことながら、ならばとこの時間を利用し、フットボルをとことん分析しているミスターというところでしょう。
異国の地で腫瘍の治療を受けながら、こんなふうに毎日任務に身を捧げるなんて、誰もが出来ることではありません。これはそれだけティトがチームでありバルサを思っていて、タフな力も持っているという証し。すばらしい人物が愛するチームの指揮官であることを嬉しく、そして誇りに思います。
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