過半数を超える得票で文句ない選出。
2015年7月18日(土)に投票が行われたFCバルセロナの新会長選挙。即日開票の結果、その勝者が前職のジョゼップ・マリア・バルトメウに決まりました。再選おめでとう、と言いたいところですが、前回は選挙を経ることなく、サンドロ・ロセイから理事会を引き継いで会長となったバルトだったので、投票による選出は今回が初めて。それも投票者の過半数(54.63%)が支持をしての選出だったわけですから、圧勝といえます。春先までは彼が再び会長室に戻ることはないという雰囲気だっただけに、トリプレーテから始まり、ルーチョ&アルベスとの契約延長、二選手の補強と続いた前職攻勢は効きました。
ラポルタに22ポイント差の圧勝
バルサ会長選挙2015の投票ソシオ数は47,270人で、今回の有権者数109,367人の43.12%にあたります。投票率が過半数に届かなかった件は、だいたい毎回そんなものでして、近年で50%を超えたのはジョアン・ラポルタ旋風が起こった2003年の54.72%(51,618人)くらい。サンドロ・ロセイが圧勝した2010年はソシオ数が拡大していたことで歴代最多の57,088人が投票に足を運びましたが、投票率は48.1%。バケーションの季節は多くのソシオが自宅を離れてどこかのビーチへ行っていますので、自ずと率は低くなります。今回の47,270人は歴代3番目に多い投票者数です。うち54.63%にあたる25,823人がバルトメウを支持し、彼を第40代バルサ会長としました。
今回、対抗馬とされたジョアン・ラポルタの得票数は15,615票で、バルトメウを21ポイント以上下回る33.03%でした。数日前に彼の陣営が発表した、バルトを3ポイント逆転したとかいう独自調査はなんだったのか。アグスティ・ベネディトは集めた署名(3,367枚)とほぼ同数の3,386票(7.16%)を獲得。2010年選挙の彼は8,044票を手にしていましたから、“次が楽しみだ”との印象を与えた彼は、5年間でその支持を伸ばせませんでした。勝利に自信ものぞかせていたトニ・フレイシャは1,750票(3.70%)で4位となっています。
ちなみに、バルセロナ市内在住の有権者数は46,602人。その周辺の町が45,467人だそうです。スペインの他の地域、あるいは国外からの投票はほぼ無いのが普通ですが、今回は旅行を利用して訪れた日本人ソシオが3人いた、とSPORT紙に報じられています。すばらしい。
ギラギラと容赦ない太陽が強火で照りつけるこの暑い7月の土曜日に、少しでも多くの有権ソシオに足を運んでもらおうと、会場となったカンプノウ敷地内では各種イベントが催されました。この日の気温はどうやら40度を超えたらしく、よくぞ47,270人が投票所に行ったなというくらい。故に各メディアは“この日の最初の勝者はソシオである!”と表現し、バルサがクラブ以上の存在であることを彼らは再び示したと称えています。
プジョルとチャビも駆けつけた
“VIP投票者”では、現役組と退団組を含めた複数のフットボルチーム選手たちや、他セクション監督、クラブOB、政界の大物たちが投票所に足を運びました。午前9時に始まった投票の、その5分後に会場に現れて一票を投じたのは、トップチーム監督のルイス・エンリケ。このあたりにルーチョの責任感を感じます。その後は、エンリク・マシップ、ビクトル・ムニョス、ホセ・ラモン・アレサンコ、チャビ・パスクアル、マルク・カルモナ、ヨハン・クライフ、カルラス・レシャック、サンドロ・ロセイ、エリック・アビダル、チャビエル・トリアス(バルセロナ前市長)、アルトゥル・マス(自治州知事)らが投票に訪れました。
会場が沸いたであろうのが10時頃、バルサの前カピタンであるチャビ・エルナンデスとカルラス・プジョルが揃って登場した時です。二人はイビサ島で一緒に夏休みを満喫していたらしく、ローストされたような小麦色の肌で投票に参加。こうして自らの意思表示を行うと、彼らは再び空港へと向かい、共に妊娠中のご夫人たちとイビサへ戻っていったそうです。そうそう、元カピタンたちはその際に息子ミランくんを連れたジェラール・ピケと出会い、プジがSNSに記念写真を投稿しています。ピケの投票は正午前でした。
今季から第1カピタンに就任するであろうアンドレス・イニエスタが票を投じたのは13時半頃。以後はバルサBの代理監督ガブリ・ガルシア、カルラス・ブスケツ、パトリック・クルィベル、エウセビオ・サクリスタン、ファン・カルロス・ウンスエらがAuditorio 1899を訪れ、投票を行っています。そして投票終了の21時になると同時にTV3がジョゼップ・マリア・バルトメウが当選確実と報じ、23時過ぎに正式に前会長の勝利がクラブより発表となりました。
変化よりも継続、押しの強さより謙虚さ
選挙キャンペーンの終盤で、“変化”を可能とする唯一の候補は自分だ、とソシオに主張したジョアン・ラポルタでしたが、その訴えは功を奏しませんでした。FCバルセロナのソシオたちは前バルトメウ理事会の問題点(FIFA制裁、カタール、ネイマール・ケース、バルサB降格など)にはとりあえず目を瞑り、トリプレーテを達成し、クラブ経済を立て直した運営を評価。行く先のよく分からない変化よりも、現状路線の継続を望みました。寒風が吹く頃は変化を望むムードが強かったですが、選挙を前倒ししたことで徐々に流れは変わり、無双トリプレーテでほぼ完全に消滅。バルサ会長選は通常前職が強く、スポーツ面で好調な時はその傾向が強まりますから、予想されたとおりの結果といえます。
今回は反バルトメウをスローガンに選挙戦を行ったラポルタでしたが、むしろアンチが多かったのは彼のほうでした。散々問題を起こし、クラブを混乱させ、ペップ黄金時代の2010年にロセイに負けたラポルタにソシオはNOと言った。ポール・ポグバを餌に票を吊ろうとするその手法にNOと言った。有名人を次々と担ぎ出し、がははと声がでっかくマッチョで自信家なラポルタより、謙虚なバルトメウが良いと考えた。これは現実的な選択ですし、個人的にもそれが良いと思います。あとはルーチョの要望を大義にアルダ・トゥランを獲得し、他候補の逆転を封じた戦略も巧みでした。ダニとの交渉が途中まで酷かったのがウソのような。ラポルタは春先の圧倒的有利予想で過信しましたかね。
求められるバルセロニズモの団結
ラポルタの右腕だったサンドロ・ロセイの、そのまた右腕だったバルトメウですから、バルサのようなビッグクラブのリーダーとしては正直どうか、と思っていましたし、こうして正当な勝者となった今でも6年の任期を終えられそうかといえば微妙(ゴメン!^^;) しかし理事会解散前からの契約ラッシュは見事で、いざという時はやれる人なのかも、と期待をしたりもします。誠実に仕事に取り組む人物なのは確かでしょうから、試練を乗り越える中で今はひと皮剥け、バルト2.0になったと願います(人は信じたいことを信じるものです)。
これからバルトメウ理事会が解決すべき課題は多々あります。なかでも最大の不満点だったカンテラの復活に是非全力で取り組んでほしいのですが、クラブとして重要なのは派閥を超えてバルセロニズモがひとつにまとまることです。生前のティトもそう言っていたことをクレは心に銘じなければならない。バルトメウさん、まずはなんとかして、ロセイが広げたクライフ御大との溝を埋めていきましょう。グアルディオラとも上手くやれれば尚のこと良し。アクが薄く、カリスマでもないバルトメウだからこそ逆に、敵を減らしクラブを団結させていけるかもしれません。当選後の彼自身も、「団結することで私たちはより強くなる」、「プジョル、チャビ、アビダル、メッシがしてきたように、私たちも汗をかいていく」と述べていますしね。まずは応援!であります。
コメント
半年前にはブーイングされてた存在であることを考えると
この数か月で大仕事を成し遂げたとはいえ、バルトメウにとってはエンリケ様様といった感じでしょう。
追い詰められたときだけやる気を出すスタイルには疑問を感じずにはいられませんが、
とにかく人事でも下部組織の強化でもエンリケに最大の発言権を与えるのが求められる役割だと思います。
あと、勝利はしましたが、駆け引きはとことん下手なのでFIFAやLFPからの横やりは今後も覚悟しないといけませんね。
どうせバルトメウは次期会長にはならないでしょうから、とか私も普通に書いてましたから^^; よく逆転しましたよね。エンリケには一生感謝でしょう。
スポーツ組織ではルーチョの意向が強く反映されているであろう最初の人事がありました。これがカンテラの復活の第一歩になってほしいですよね。
そしてレトさんの言われるとおり、対外機関との駆け引きは期待できない… 裁判問題もどうなりますでしょうか。