元チームメイトたちに見守られ、思いを語ったエストレーモ。
2015年8月24日(月)午前、FCバルセロナのトレーニングセンターであるシウター・エスポルティーバ・ジョアン・ガンペルの記者会見室にて、ペドロ・ロドリゲスのさよなら会見が開かれました。ペドロはすでにチェルシーへの移籍が完了していて、先日のリーグ戦ではさっそく1ゴール1アシストの活躍。そんな選手が時間を作り、古巣で会見を行うのは珍しいですが、それだけ彼がバルサを愛し、クラブもまたペドロを大切に思っていることの証として、ファンとして純粋に嬉しいです。選手の一時帰宅を許してくれたチェルシーさんにもありがとう。
頭を高く上げて、ここを去る
バルセロニスタに愛されているペドロ・ロドリゲスのさよなら会見ということで、プレスルームにはたくさんの記者さんたちと、元チームメイト、コーチ陣、クラブ理事、それに彼の家族(カロリーナ夫人、息子のブリアンくんら)が集合。そのブリアンくんの暇つぶし役としてか、レオ・メッシもまたチアゴくんを連れてきてまして、この可愛さふりまく二人の子供たちが、場の陰の主役となっています^^ さよなら記者会見の冒頭、ペドロはまずこうスピーチしました。
「緊張してます。なにも準備をしてこなかったですし、どこから始めればいいやら分からないので。。自分の心の中から出てくる言葉を、これから話したいと思います。このカサ(家)で僕はとても長い年月を過ごしてきました。僕はラ・マシアにやってきて、カテゴリーを上っていき、トップチームにまでたどり着くことができた。子供の頃からずっと夢見ていたチームでプレーするという夢を叶えることができたのです。僕は偉大なるチームメイトたち、監督たちから多くを学びましたし、彼ら全員に感謝の言葉を送りたいです」
「チームメイトたちは最初から僕をとてもよく受け入れてくれました。ここで暮らした日々のことや、自分が勝ち取ったタイトル、歴史の一員となれたこと、それら全てが僕の心の中にあります。僕は試合やトレーニングで常に全力を尽くしてきた。それにより、頭を高く上げてここから去ります。僕はアンドレスやプジョル、チャビ、バルデスから学んできました。世界最高選手であるレオからもです」
「謙虚さや献身といったこのクラブの価値を学び、人としてもまた成長してきましたし、自分が人々から愛されているとも感じています。このカサを離れることは悲しいですが、自分がピッチ内外で最善を尽くせたことには満足しています」
ペドロ・ロドリゲスのスピーチ後、会見は記者さんたちとの一問一答方式になります。以下はそのコメントたちです。ここから訳の口調が変わりますのはご愛嬌で^^;
もっと試合に出場し、自分が重要だと感じたかった
退団を決めた理由 「昨シーズンの終わりに、自分がいつだって野心的でありたかったことや、もっと試合に出たかったことに気付いたんだ。でもここではそれは難しいと思い、移籍もひとつの可能性だと考えていた。僕はもっとプレーをしたかったし、重要な試合で出番がほしかった。それでクラブを離れて、新たな挑戦をすることを検討していったんだ。自分がチームの中で重要だともう一度感じられると期待してる。僕はこのクラブで引退をしたかったけれど、こういう状況だからね。思い切って別のクラブへと出てみることにしたんだ」
契約延長について 「契約を延長した時は、バルサに残留しようと考えていたんだ。ここのような場所はどこにもないだろうってことを僕は知っているからね。バルサは世界最高のクラブだから。でもその一方で、退団もまたひとつの選択肢であることは分かっていた。僕は会長や理事たちとたくさん話をしたよ。そして僕を欲しいというクラブが現れたんだ」、「最初はちょっと奇妙な感じがしたよ。自分がこのクラブを出られるなんて考えてなかったんだ。でも今は新しい経験にとても満足している」
相反する感情 「そこがなにより難しい点だね。チームメイトたちやクラブの人たちはすばらしいし、ファンは自分をサポートし愛してくれていて、、、自分のカサを離れる時、一番難しいのはそこだよ。僕の置かれた状況は、ちょっとばかり奇妙なものだった。自分が継続的に試合に出られないだろうと思ったから、僕は去ることを決断した」
ペドロなきバルサ 「チームには良い選手がたくさんいるし、彼らが僕がいなくて寂しがるとは思っていないよ。これまでも何人かの選手が去ったけど、チームは勝ち続けてきたんだ。僕の方は個人的に、彼らのことを恋しくなることだろうね。僕の心が最も痛むのは、彼らのようなすばらしい人たちを残していくことだよ。バルサは前進を続けるだろうし、成功を収め続けていくだろう」
一番の思い出 「僕はここでタイトルに恵まれた良い時代を生きてきたし、ファイナルでも何点か得点したから、忘れられない瞬間はたくさんあるよ。一つを選ぶのは難しいし、全てを心に留めておきたい」
苦しかった昨シーズン 「たしかに、僕にとって一番苦しい年の一つだったよ。あまり主役とはなれなかったし、競争は厳しく、要求されるレベルはかなり高かったしね。その意味では幾らか悲しくもあったんだけど、チームメイトやファンがいつもサポートしてくれたから、僕は耐えてこれたんだ」、「退団の理由は出場時間で、お金の問題じゃなかった。それはクラブにも伝えたよ。僕はプレーをし、重要な選手となりたかった。ここではそうはなれない」
退団という決断 「バルサに残ってここで引退したかったけれど、僕はあえてリスクを冒した。ここに残って、タイトルを勝ち取り、写真に写るほうが快適だったろうけれど、自分が望む決断をしたんだ」
敵選手として戻ってくる? 「バルサとは対戦したくはないよ。でももしバルサと当たるとなれば、カンプノウでプレーするのは、とても奇妙な感覚になるだろう。僕はバルサのシャツを背負ってたくさんの試合に出てきたからね。それにスポーツ面で見てもバルサはすごいチームだし、勝つのはかなり難しい」
決断を下すということ 「決断はいつだって難しいよ。契約を延長した時は嬉しかったんだけれど、難しい状況であることは知っていた。そこでもし興味のあるオファーがくれば退団もありえると考え始め、最終的にチェルシーが欲しかった条件を全て出してくれたんだ。僕はクラブと話をして、残留を強く求められたけれど、移籍する決断を下した。最後はクラブも理解してくれたよ。会長やサンジェイ、ソレールは常に僕を尊重してくれたし、彼らには感謝している」
ムニールとサンドロ 「選手の持ち味はそれぞれで、みんな違う。彼らは大いに楽しんでやろうという気持ちを持っているし、彼らに大きな幸運があることを願ってるよ。もしここで成功を手にしたいなら、いっぱい働く(努力する)こと。このチームでプレーするのはとても難しいからね。成長を続けるために、チームメイトとクラブを手助けする、彼らが今考えるべきはそれだけだよ。そして監督にチャンスを与えられたなら、それを活かすようトライしないといけない」
スペイン代表 「重要なテーマではあったけれど、非常に重要ではなかった。来年の夏にはユーロが控えてはいるとはいえ、移籍を決めたのは基本的に自分のため、もっとたくさん試合に出て、ビッグマッチでプレーしたいからだった。もちろん、大きな大会だからユーロには行きたいけれどね」
ブリアンの「パピ!パピ!」
偉大なる父ちゃんのバルサさよなら会見を、最前列サイドの特等席から見ていたのがカロリーナ夫人と息子のブリアンくんでした。クラブの許可を得て、ブリアンくんとメッシの愛息チアゴくんはこの会見に同席。しかしながら2-3歳のチビちゃんが神妙に父と記者たちのやり取りを見ていられるはずもなく、二人はあれこれと語るペドロには大して注意を向けず、床に座っておもちゃ遊びを楽しんでいました。そして時々、父に向かって「パピ!パピ!」と言う。その呼びかけにニッコリ笑って応える父ペドロ。やや暴走しかけた時もあったようで、二人のやんちゃ坊主はカロリーナ夫人に“捕獲”(ダブルひざ抱っこ)されたりもしたみたいです。
ペドロのさよなら会見でもう一つ話題となったのは、チェルシー監督ジョゼ・モウリーニョに関する質問が3度繰り返された時、(元)チームメイトたちの席から小さな指笛が聞こえたことです。おいおい、そんなにヤツのことを訊ねなくっていいじゃないの、という不快感の表明。MARCAあたりはこれを「!」付きの見だしで取り上げています。
そんなこんなで、ペドロ・ロドリゲスのFCバルセロナでの日々(第一章)は終了となりました。大きな拍手で包まれた会見の最後は、(元)チームメイトたちによるペドロコールも起こりまして、彼がいかにチームから愛されているのかが伝わってきます。それはペドロがツイッターに投稿した上の写真でも分かる。バルサが自分を恋しがるなんてことはないよ、と言ったエストレーモでしたが、決してそんなことはないですぜ。もうすでに寂しい気持ちでいっぱいですので。
クレとしてはペドロにはバルサに居続けて欲しかったですが、別のクラブでもっと試合に出場したい気持ちも非常によく解かります。タイトルを獲って、写真に写るだけなら残留した方が快適だったとの言葉が印象的ですし、リスクを承知で挑戦を選んだペドロの幸運を願うばかりです。
そしてクラブに大きな貢献をした選手が人知れず去っていくのではなく、こうして温かいさよなら会見の場が実現したのも良かったです。新チームでデビューし、さっそく初得点を決めた翌日に古巣で会見を行うなんて結構レアなケースですが、移籍してお仕舞いにするのではなく、戻ってきて思いを語ったペドロはやはり男前でしたし、それを許可したチェルシーさんにもありがとうです。モルボ(因縁)が揃った今季は、どこかでチェルシーと対戦しそうな予感がしますが、、まずはペドロの門出に祝福を。さらばペドロ、またいつかバルサのメンバーとして会う日まで。
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