チームに求められるのは、原点回帰。
サンシーロでのミラン戦、そして先日のコパクラシコと、見るも無残な姿を世界中に披露したFCバルセロナ。クレにとってショッキングだったのは、ほんの少し前まで”世界最高”と持て囃されていたプレーが微塵もなく、ただただ無力なチームへと成り下がっていたことでありました。シーズンの今後を左右する局面で露呈した、この凋落っぷりにはどんな背景があるのか?バルサ系メディアはそれぞれに現状を分析し、局面打開への採決策を探っています。
原因のひとつは緊張感のなさ
2月28日付のSPORT氏によりますと、ティト・ビラノバ監督が耳下腺腫瘍の治療をニューヨークで治療を行い、2ヶ月間は不在になると分かった時、サンドロ・ロセイ会長はトップチームのカピタンたち(プジョル、チャビ、バルデス、イニエスタ)とミーティングを行い、この難局へとどう立ち向かっていくかを話し合ったそうです。そこで選手たちが出した答えは、ジョルディ・ロウラと協力し合い、ミスターの帰還を待つというものでした。ベルナベウでのコパ準決勝イダでは白組を仕留め損なったものの、2月の上旬までは、まあどうにか順調な結果を残したロウラチーム。しかしながら、あのミラン戦において、周囲はチームがおかしくなっている現実を突きつけられます。真実の時とはよく言ったものです。
凋落の原因の一つは、選手たちは決して認めはしないものの、気の緩みでしょう。あるいは緊張感の緩和。優しいけれど怖~くもあるペップ・グアルディオラから、物静かなティト・ビラノバへと指揮官が替わり、ただでさえ緊張感の減少する状況が生まれていました。そんな中、ティトさえも病でチームを離れ、どうやら将としての資質には恵まれていなかったジョルディ・ロウラがグループを管理することになった。いまいち頼りないので、選手たちが引き締まらない。首都系メディアでは少し前、バルサロッカールームが”自主統治状態”だと報じていましたが(選手たちは否定)、このところの彼らを見ると、あながち外れてもなさそうな感があります。
固定メンバーにこだわりすぎた弊害
火曜日のカンプノウで見せ付けられた、一番見たかったファイティングスピリットの欠如していたチーム。ペナルティで1点先行されると、もうそれで元気のなくなるチーム。ダイナミズムを生み出すための努力に欠けたチーム。マドリーの武器はカウンターであると判っているのに、その芽を摘み取れないチーム。逆にバルサ対策はばっちりされちゃってるチーム。勝負はディティールで決まったのではなく、必然的に完敗へと落ち着いたのでした。
緊張感とフレッシュさに関わってくるのは、あちらの表現で”once de gala”(豪華イレブン)、いわゆる11人を諳んじることも出来る定番先発メンバーです。試合前のミーティングを待つまでもなく、先発する選手が判っている状態。それどころか、60分頃にビジャが入って、その後はテージョで、とファンにすら読まれている状態。これだけスタメンが固定されていれば、控え組とされる選手たちのモチベーションにも自ずと差が出ましょう。競争力がなくなっても不思議はありません。ペップを懐かしんでも仕方ないですが、彼はそのあたりにも気を配っていました。失敗することもあったけれども、意表を突くための”賭け”をしていました。
おまけにティトは大西洋の向こうにいて、チームを肌で感じられない。選手たちもミスターの視線を感じられない。いくらテクノロジーの助けを得て連絡は取り合っているといえども、無理があったと改めて実感します。
気持ちをリセットできるか
ということで、SPORT紙が提唱しているのがチームの”リセット”です。状況が取り返しのつかないところへと行く前に、原点へと立ち返れということ。ただし問題は、現実世界にはそういう便利なボタンは存在しませんので、誰がどのようにして健全だった状態まで立ち返らせるかであります。このチームには、ミランを攻略するポテンシャルは備わっていましょう。イニエスタが言うように、その力はありましょう。上手く手を打てば、きっとなんとかなる。しかし問題は”どうやってするか”。誰がチームに、原点を再確認させるかであります。
土曜日のクラシコまでに劇的な処方箋が見つけるのは難しいので(手探りながらも行動は必須)、目標達成へのタイムリミットは12日のミラン戦となります。”残された日数はあと××・・・”。少年漫画のミッションのようで心弾まなくもないですが、一刻も早く手を打ち始めることが”生死”を分けるのは間違いありません。どこをどう直すのか、ワタクシただの素人につき語りませんが(下にMUNDO DEPORTIVO紙の問題と対策を挙げます)、なんだかんだで結局、緊張感ってのが一番重要なんじゃないでしょうか。あとは適時正しく責任ある決断を下せる人・・・ ああやっぱりティトが恋しい。
このバルサの問題点と解決策
28日付のMUNDO DEPORTIVO紙にて取り上げられていた、ミラン&マドリー戦におけるロウラ(ティト)バルサの問題点とその解決策です。この2試合ではバルサは自慢のポゼッションこそ見かけ上は保ったものの、ただそれだけで活用する術を持たなかった。一方で相手チームは訪れたチャンスを確実に活かしたのが結果につながっています。
■問題1:メッシは守備陣に囲まれているのに、クリスティアノはいつも1対1
メッシはこの2試合で相手デフェンサに取り囲まれ、低い位置へと下がった上で、まず3人あたりを抜くことから始めなければならなかった。フリーな状態でボールを受けていたCR7とは対照的。
解決策:攻撃時の流動性と、守備でのサポート
メッシが3人に囲まれているのなら、マークを外した2人のアタッカーが加わることで有利な状況を作る。CR7に対しては過去のビデオを見て復習する。以前であればアルベスやプジョルが抜かれても、カバーがそこに来ていた。
■問題2:毎試合失点する
バルサは1月10日のコルドバ戦(5-0、コパ)以降、12試合連続で失点を繰り返し、19ゴールを許している。疑問を生み出す良くない習慣。
解決策:かつてのように、ボールを持つことで守る
最高とされたバルサのアイデンティティの一つ。相手チームをウンザリさせるまでとことんポゼッション。アルベスやアルバら、攻撃的すぎるラテラルたちの飛び出しを調整する。
■問題3:試合のたびに減少するゴール数とエリア内への侵入
大勝したヘタフェ戦(6-1)を除けば、バルサはここ6試合で7ゴールしかあげていない。ベルナベウでのコパ準決勝イダではエリア内への侵入は見られたが、仕上げに精度を欠いた。
解決策:もっとたくさんの選手が、大胆にエリアへと入る
トリプレッテの2008/09シーズンにはメッシ、エトー、アンリが、2010/11はペドロ、メッシ、ビジャのトリオがゴールを揺らしまくった。メッシにはエリア内での大胆な仲間が必要。それはビジャか?
■問題4:読まれ易くなっているプレー
自信不足や迷い、フィジカルコンディションなど幾つもの理由があるにせよ、バルサはポゼッションからナニかを生み出せなくなっている(注:先日のマドリー戦におけるボールロストはバルサ43に対しマドリー30、インターセプト数は57対75)。
解決策:リズム、ボール展開、サプライズ
ボールを回すリズムを上げていくことがカギになるだろう。エストレーモが深くサイドをえぐる原点へと戻ることや、ビジャをメッシの前に置くなどのバリエーションも必要。
■問題5:プレッシングがなく、間延びしたライン
バルサはボール奪取における自信を失っている。結果、ライン間隔が広くなり、ぼんやりとしたチームになっている。ボールは支配するけれど、試合はそうではない。
解決策:団結の回復
即座にボールを取り戻すのだ、という熱い気持ちを回復させることが基本。それがベストだった頃のバルサのアイデンティティだった。チームで助け合うことが必要不可欠。
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