時代の節目となるであろう完敗。
ここまで様々な歴史的記録を達成してきたティトチームが、今回ミュンヘンにて、ある意味歴史的な夜を過ごしました。チャンピオンズでは1997年11月5日のディナモ・キエフ戦(カンプノウ、4-0)以来となる、4ゴールを奪われての敗北。しかしながらその意味合いでは、ドリームチーム崩壊の序章となった1994年のアテネ決勝(4-0)に匹敵しそうな気配が漂っています。8日後に控えるカンプノウのブエルタで4-0をひっくり返すのは至難の業。重要になるのはこの悲しきミュンヘンの夜からクラブがどういう結論を導き出し、更なる悲劇を防いでいけるかでしょう。立ち上がるにはちょっと時間がかかりそうです。
歴史的な敗北
4月23日はカタルーニャの守護聖人を祝うサン・ジョルディの日でした。2002年のユーロクラシコ第一幕(0-2、カンプノウ)や2008年のマンチェスター・ユナイテッド戦(0-0、ブエルタを1-0で落とし敗退)など、実はバルサはこのサン・ジョルディの日を”苦手”としているのですが、今回はそれらを大きく上回る4-0での敗北。史上最も悲しい守護聖人の祝日となりました。
今回の負けはただバイエルンによって叩きのめされた、というだけではありません。世界史では必ず、隆盛を誇っていた国家による伝説の終焉が確認された戦いがありますが、このミュンヘンの戦いがおそらく、バルサ黄金時代でのそれにあたることになるでしょう。クラシコやサンシーロなどその前触れは以前にもありましたが、この4-0の説得力は半端ではない。チーム革新の必要性のみならず、テクニコへの疑問が湧き上がった点もこれまでと異なります。ティトはこの夜、チームがゲルマン族に蹂躙されようとも、4点差をつけられるまで何も手を打てなかった。さすがにそれはあきまへん。
散々言われている”メッシシステム”の限界や、改善されることのない守備バランスの悪さ、チームコンディションの悪さも含め、素晴らしきバイエルンの前に、ティトチームの欠点が全て噴出した試合。それはライカー時代の末期に通じるものがあり、少々無理のきていたバルサ覇権の看板も、これにてついに下ろされたわけです。
答えの出ない疑問たち
シーズンの集大成となるこの4月に、このプレー内容ですから悲しくなります。フィジカル上、どうしても空中戦には弱いのは判っているのだから、コーナーやフリーキックを与えないようにしなければならない。そのためには自陣深くえぐられたり、センタリングを許さないことが肝心で、高い位置でのプレッシングが不可欠。ハイプレスを掛けるにはコンディションを整えておく必要があり、守備戦術の徹底も必要で… 結局はいつも生命線のプレッシングに行き着くわけでして、チームはこの試合に照準を合わせていたことから上手くいくかと期待もしたのですが、現実はそうは成りませんでした。ミラン戦のアレは結局一体なんだったのだろう?
ダニ・アルベスが先日語っていたレオ・メッシの魔法パワーも、PSGで使っちゃってから補充できていませんでした。ライカーチームがかつてロナウジーニョと心中したように、ティトチームもメッシに賭けてあえなく果てた。リバルドとフィーゴ、ロマーリオとストイチコフというような、アクの強い2枚看板にするべき時がきたのでしょうか。
そしてティト・ビラノバ。この決戦へと臨むための準備にテクニコが失敗したのは仕方ないとしても、不可解なのは何故ミスターが2-0の時点でなんら手を打とうとせず、大人バイエルンが我がチームにトドメをさす瞬間を狙っているのを、ただピッチサイドで眺めていたのかという点です。すでに4-0となった83分にビジャを入れても後の祭りですし、使った交代枠もその1つだけ。ピッチで路頭に迷っている選手たちがいるなら、そこに助けの手を差し伸べるのが監督の仕事ですから、動かざること山の如しだったティトの采配にはただ疑問です。ベンチに座っている6人では役に立たないと言ってるのと大差ないです。
勝者を称え、早寝する^^
一体このバルサはどうなってしまったのか、これからどこへ行くのか、どうするべきなのか。答えのない疑問や不安がクレの心に雨を降らす水曜日です。今季のバルサはクラシコ連敗やサンシーロでの失態など、何度か負のイメージを与えてきました。救いがあったのは、その時はまだ、”ティトが帰ってくればきっと”であるとか、”次はこのお返しをしてくれるはず”とか、そういった希望を抱けたことです。しかしこのミュンヘンでの敗北は正直、そんな期待は持たせてくれない。やけに象徴的な4-0なるスコアが、アテネの悲劇を否応なく思い出させ、次に待っていそうな運命を意識させるのです。
ペップ時代から5年にわたってクレを楽しませてくれたチームには大感謝ですし、準決勝以降のチャンピオンズはボーナスステージだと思ってますので彼らを罵る気もないですが、痛すぎる負け方だっただけに立ち上がるのも簡単ではなく。早晩訪れるはずのリーガ優勝で、どれだけ陽気を回復できるでしょうか。
この打ちのめされた精神状況では嘆き節しか出てこなさそうなので、明日への展望はまた次回以降として。今は最高のパフォーマンスで我らのチームを凌駕したバイエルン・ミュンヘンを称えるしかありません。彼らはカンプノウでも、隙を見せたりはしないでしょう。そしてウェンブリーへと勝ち進んだならば、そのままビッグイヤーを掲げちゃってほしいです。94年にアテネで完敗したバルサはその後、ドリームチームが解体され、しばしの迷走を始めます。願わくばクラブがその過去を教訓とし、速やかなる復活を果たしますよう。今日はとりあえず、さっさとお風呂にでも入って早寝しますかね。おめでとうバイエルン、すばらしいプレーでしたよ本当に。
【バイエルン・ミュンヘン 4-0 FCバルセロナのマッチレポートはこちら】
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