平日の夕方、カタルーニャ各地域からシウタット・エスポルティーバへ
世界各地から優秀な選手をスカウトしているFCバルセロナですが、カンテラの基本となるのは地元カタルーニャの子どもたちです。
そんなカタラン子たちはラ・マシア(寮)に入らず、自宅から毎日シウタット・エスポルティーバへ通ってトレーニングをする。
そこでクラブが彼らに用意するのが、効率よく張り巡らされたタクシー路線です。
8割の子どもたちがタクシーを利用
一口にカタルーニャと言っても、日本の関東地方とほぼ同じ面積があります。
バルセロナから100km離れた街に家があるカンテラーノもさほど珍しくはない。
週末であれば家族が送迎することも可能ですが、平日となればそうもいかず、子どもたちはタクシーを利用してサンジョアン・デスピにあるクラブ練習場まで通うことになります。
では、プレベンハミン(7-8歳)からカデーテA(15-16歳)に所属する選手たちのうち、どのくらいの割合でこのタクシーが必要になっているか。
2017年3月26日付のSPORT紙によると、なんとその率、80%というから驚きではないでしょうか。
SPORTの記事が書かれた時点では169人が、月曜から金曜までタクシーで練習に通っていたそうです。
13本のルートを、44人の運転手で担当
ではどのように子どもたちを送迎するかというと、日本でのスイミングスクールの送迎用のような、13のルートが各方面に張り巡らされているそうです。
タクシー台数は27で、運転手さんは44名。
大きな責任を受け、クラブの宝石たちを安全に自宅から練習場へと送り届ける人々です。
27台で169人を送迎するわけですから、各タクシー(もしくはマイクロバス)は乗り合いになります。
最初の子を16時半頃に乗せ、途中で別の街に寄って次の子を拾う。
シウタット・エスポルティーバ到着は18時半と。
練習が2時間弱とすれば、終わって帰宅するのは22時とかでしょうか。
家が遠い子はその途中で「宿題と夕食を済ませ、ほとんどの子は家に着く頃には眠っている」そうです。
ある距離より遠方の子どもたちには、ラ・マシアで作られた栄養に配慮された熱々の料理が夕食として提供されます(タッパーで渡される)。
これは、ある遠距離の運転手から、夕食をいつもボカディージョ(バゲットサンド)で済ませている子どもたちがいるとの報告があったことがきっかけだそうです。
クラブにとって非常に重要な業務
このタクシーサービスが始まったのは、チャビ・エルナンデスがアレビン(11-12歳)に入団した頃といいますから、もう四半世紀にわたってバルサは子どもたちの送り迎えをしているわけです。
クラブがそれだけこの送迎を重視しているということ。
育成アマチュア部門の責任者ジョルディ・ロウラは「日々の多くの時間、タクシー運転手が子どもたちの責任者となります。だから私たちは共同で働かねばならない。彼らはきわめて重要なのです」と述べています。
SPORTには運転手さんたちのコメントも紹介されているのですが、唯一の女性にして職歴20年というエロイサ・ロブレドさんの言葉は象徴的です。
「私たちは子どもたちが学校でどうなのか、どう遊んでいるのか、家族レベルでの心配事があるのかなどを知っています。
彼らにとって単なるタクシー運転手以上の存在となり、成長に大いに関わっているんです」
車内という空間で濃密な時間を過ごす運転手さんと子どもたちの間には、外からはちょっと分からないような関係が生まれているんでしょう。
中学生くらいまでは、カンテラーノの大半の子どもたちがタクシーのお世話になっていること。
片道100kmもざらにいること。
このあたりはちょっと驚きでしたし、フベニール、バルサB、トップチームへと上がってくる若者たちを応援する気持ちもさらに強くなります(引き抜かれることへの苛立ちも)。
ファイト、ラ・マシアの子どもたち。
このニュースのまとめ
- ・バルサが雇っているタクシー運転手さん44名
- ・育成チームの8割、約170人の子どもたちを毎日練習場へと運び、自宅へ送る
- ・単なる運転手を超えた存在
photo credit: MadPole 20131111 09:07:16 via photopin (license)
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