ピッチでは猛々しくも、普段は子供たち思いの父親。
悪童だの、噛み付きだの言われているルイス・スアレスですが、彼が実はそういった人間でないことをバルセロニスタはこの1年半で理解してきました。リバポーファンならとっくに知ってたと仰るでしょうが、遅ればせながらクレも彼の人間性に惹かれているところです。
ルイス・スアレスは昨日(21日)、毎年恒例のチャリティー本 Relatos Solidarios の出版発表会に出席しました。
そこでバルサの9番はPKUを患っている幼な児カンデラちゃんと出会い、次のゴールを捧げることを約束。そしてコメントの際に言葉につまり、涙ぐんだ心優しき“キラー”です。
第12回Relatosのパトロンにスアレス
毎年一冊出版され、表紙は“パトロン=保護者”に選ばれたバルサ選手たちが飾る慣わし。
ここ2年はピケとマスチェラーノがそのパトロンを務め、12回目となる今年はルイス・スアレスが選ばれました。
収益金は慈善目的に使用されます。今回はPKU(フェニルケトン尿症)の人々を支援する団体 l’Associacio Catalana de Trastorns Metabolics Hereditaris に寄付されるそうです。
せっかくなのでPKUも調べてみますと、この疾病を患った子供たちはフェニルアラニンという物質を代謝する酵素の働きが生まれつき不十分で、食物中に含まれるフェニルアラニンが体内に蓄積することで脳の発育に障害を起こすらしく。
食事療法により通常の生活を送れるそうですが、フェニルアラニンはたんぱく質に含まれているため、たんぱく質の摂取を制限しなければなりません。肉や魚、卵はもちろん、米や麦も食べられないのだそうです。
僕らにはリーガ優勝する責任がある
その Relatos Solidarios の出版発表会が21日の現地15時より、バルセロナ市内 サバデイ銀行にて催されました。
スアレスといえば、前夜のリアソールで4ゴール3アシストをやってのけ、英雄となった選手。
彼に対しては、リーガやゴールについての質問が数多く行われたようです。
それらに対しバルサの9番は、次のように語っています。
「僕らは首位だし、僕らにはこのリーガを優勝する責任があるんだ。それが出来るかどうかは、僕ら次第。僕の頭の中には、優勝以外の選択肢は入ってないよ。僕らはドブレーテ達成をものすごく楽しみにしている。出来ればステキだろうね」
「このチームにアンタッチャブルな選手は誰もいないよ。チームがタイトルを取れば、全員が無敵。逃した時は、全員のせいなんだ」
「僕らは人間であって機械じゃない。誰にだって好不調はあるものさ。ネイマールがすごく批判を受けてるけど、僕は彼の友人だから、彼への批判に僕は悲しい気持ちになる。いつも同じ人間に罪を負わせている、そんな印象を受けるよ。ネイマールは決して諦めない選手だし、いつもチームのために貢献しようとしてる。彼はいつも戦っている。これからも戦い続けていくだろう」
「(シーズン47得点で元バルサの)ロナウドを超えたことを誇りに思う。メッシ?レオを超えるのは不可能だよ」
「ゴールが戻った秘密?選手にはそれぞれ癖があるものでね、僕がしたのはシューズを変えることだよ。デポルティーボ戦では結果が出たね」
次のゴールをPKUの子たちに捧げる
しかしながら、この出版発表会のハイライトはそういったいつもの質疑応答ではなく、別のところにありました。それはPKU患者である3歳の女の子、カンデラちゃんへの優しき接し方です。
会場にはPKU患者代表として、カンデラちゃんと彼女のお母さんが出席していました。
司会者さんから紹介された二人が会見席へと近づいていくと、スアレスは席を立ってカンデラちゃんの前へ。幼女はデランテロに“私はPKUをサポートしています。で、あなたは?”と書かれたTシャツを手渡します。
そしてお母さんから「あなたが次のゴールを決めた時、このシャツを見せてもらっていいですか?」と訊ねられたルイシートは、二つ返事でこう答えました。
「なんの問題もないよ。それをするとタルヘタ・アマリージャ(黄色カード)をもらうことになるんだけれど(会場笑い)、大歓迎さ。やる価値のあることだからね」
スアレスといえば、ゴールを愛妻ソフィアさんと二人の子供たち(デルフィナ、ベンハミン)に捧げることで有名ですが、次のゴールはその例外となるわけです。
しかしながら、彼が言うとおりにユニフォームの下のメッセージを見せることはカード覚悟の行為ですから、その前に1枚カードを受けていてはエライことになります。退場覚悟でやってのけるのもまた伝説でしょうが、さすがにそれはちょっと困るんで、なんとか上手くお願いします^^
また、このカンデラちゃんとの出会いはルイス・スアレスの琴線に触れたらしく、彼はその後感極まり、言葉を中断せざるを得ない場面もありました。スアレスは言います。
「僕には二人の子供がいるし、自分たちの幸運を思うと、つい動揺してしまうんだ」
「フットボル選手は子供たちの見本なんだけど、こういった(病の)子供たちは僕ら皆にとっての克己や生き続けたいと願う気持ちのお手本だよ」
ゴール前の“キラー”(殺し屋)と言われるマタドール・スアレスですが、グラウンドを離れれば子供たちのことを愛して止まない心優しき父親。
ギャップにやられると言いますが、ピッチ上の猛々しいスアレスも、会見で思わず涙ぐんでしまうスアレスも、どっちもいいですね。日曜日のヒホン戦でカンデラちゃんたちへとゴールを捧げられますように。
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