夢見ていた、でっかい事をやってのけたカンテラーノ。
FCバルセロナがパリサンジェルマンに6-1で勝利し、チャンピオンズ1/4進出を決めた水曜の試合に関しては、何からどう書いていいやら分からないのが正直なところです。
印象的に強く残っているのは、勝負に大きな影響をもたらしたカンプノウという舞台装置。
魔法の夜とはよく用いられる表現ですが、テレビで見るだけでは伝わりきらない、あの場の空気が選手たちのみならず審判たちも飲み込み、なにかに魅入られたかのようにあの通常では起こりえない結末へと向かっていったのでしょう。
それを演出したのが最後の最後まで勝負を諦めなかった選手たち(ネイマール)であるのは間違いなく、セルジ・ロベルトが無我夢中でボールへと飛び込んだことで、いわゆる“奇跡”が起きた。
新たな英雄の説明によると、彼も何がどうだったのかよく覚えていないそうです。
お見事ルイス・エンリケ
セルジ・ロベルトを主役に書こうと思う本日のバルサニュースですが、最初に少し、この偉業におけるルイス・エンリケの功績も称えておきたいです。
聖バレンティンの日に愛の都パリでエメリチームに惨敗(4-0)してから、この歴史的な夜へと至るまで、ルーチョアニキは逆転のための数々の“仕込み”を行ってきました。
- ●リーガでの生き残りの懸かったアトレティコ戦(1-2)から3バックを試み、そこからスポルティング戦(6-1)、セルタ戦(5-0)と徐々に完成度を高めてPSG戦には手応え十分で挑めたこと。
- ●PSGとの再戦ではラテラルを含めないセントラル3人で最終ラインを組み、リスクを冒すことで選手たちを刺激したこと。
- ● 今季限りでの監督退任発表。
- ●前日会見でのバルセロニスタへのカンプノウ圧力鍋化リクエスト。
- ●試合での采配。
これらがすべてピタッとハマり、あの伝説が完成されたのでした。
バルサのスター選手たちの反骨精神、負けん気の強さは折り紙付きですが、指揮官が大逆転に半信半疑では、あのような夢の結末は訪れていないでしょう。
選手や監督としての経験値や総合力でエメリに勝った。
パリでの惨敗以降は手腕を疑問視してしまい、ごめんねルーチョ。
努力が報われた
そして今回、英雄となったのがセルジ・ロベルトだったこともクレとしては格別でした。
もし劇的ゴールを決めたのが、8分間での3得点を牽引したネイマールやその他選手たちでも当然歓喜だったのですが、14歳でラ・マシアの門をくぐってから11年、フィリアルではチアゴ・アルカンタラの陰となり、トップチームでも数年間迷える羊だったセルジが、バルサ史に名を刻むゴールの主になったのはファンとして感無量。
フットボルの神様も時には粋なことをしますな。
セルジ自身はこれを「時々(フットボル的に)正しいことが起こる」と表現しています。
アディショナルタイムの劇的ゴールと言えば黒組のセルヒオ・ラモスが有名ですが、ネイマールが丁寧に送り込んだボールがジェラール・ピケの頭上をわずかに越え、SR4ならぬSR20の懸命に伸ばした足によってゴールネットへと導かれたのがステキ。
ピケは試合終了後のロッカールームで、ロベルトに「俺が触らなくてラッキーだった」と言ったそうです。
そんなジェリには4月のベルナベウで、SR4さんの目の前で決めてもらうことにしましょう。
寝付けず、メッセージに返信
セルジ・ロベルトはバルサTVの番組 Hora B のなかで、予期せぬ主役となった夜についてあれこれと語っています。
それによると、試合が終わるや彼のスマートフォンのメッセージアプリには友人知人たちから数え切れないほどの祝福のメッセージが届き、“煙が上がるほどの状態”に。
バルセロナ市内にある自宅(実家)に帰った後も興奮した気持ちは収まらず、ようやく「寝付けたのは午前5時半頃だった」そうです。
そしてその眠れぬ時間を使い、セルジは「届いたメッセージに返信をして」いきました。
「全部は無理だったけれどね。今朝目が覚めてからも、あれが夢なのか、それとも現実だったのか分からなかった。でもビデオや写真を見ていたら、少しずつ現実だと分かってきた」
「僕が一番嬉しかったのは、僕と同じように難しい瞬間にいる家族や友達からのメッセージだった。それとペドロやピント、ボージャン、ムニアインら元チームメイトからのメッセージだね」
カンテラ育ちのセントロカンピスタは、かつては「こんなゴールを決めたいといつも夢に見ていた」そうです。
下部カテゴリ時代は「ルームシェアをしていたマルク・ムニエサと一緒に、カンプノウの魔法の夜に来ていたことを思い出すよ。ユニフォームを着て、マフラーを巻いて、キャップを被って、ゴール裏で見ていた」というセルジが、ついにその魔法の夜の主役となった。
それは日々のハードワークのたまものでした。
「ラ・マシアの子にとっては特に特別なんだ。ここに来て10年、僕は人生のクラブでこういう大きな事をするために頑張っているからね」
無我夢中で足を伸ばし
「このことはすべてのクレの記憶に残り続けていくだろうし、何度思い出しても僕らはそれに飽きたりはしないだろうね」とクレの琴線に触れるコメントを述べるセルジ・ロベルトは、歴史的ゴールの瞬間を次のように振り返っています。
「(ゴール時は)何も見えてなかったんだ。すべてがすごく速く展開していって、考えている時間はなかった。僕はネイマールがどうボールを送り込んでくるのを見て、でも彼は一度タイミングを外したね。ピケがボールにあと少し届かないのを見て、僕は全力で足を伸ばしたよ。ボールが入ったのかどうかすぐには分からなかったけど、あとは大興奮だった」
ルイス・エンリケはセルジにもっとゴールを決めてほしいと考えてますから、トレーニングではいつも冗談交じりに得点を狙うよう注文されているそうです。
「いつもからかわれるんだ。試合が終わった後は、信念の問題だから自分を信じろと言われたよ。求めていれば、手に入るってね」
信じると言えば、今回の大レモンターダもそうです。
「パリでの試合の後、僕らはダメだと言われてたけど、あの日からチームは上がっていったよ。僕らは逆転を信じ続けていたし、もしここでひっくり返せるチームがあるとするなら、それは自分たちだと分かっていた。僕らは最後まで信じていた」
諦めずに信じることで無理だと思えることも現実になる、というのはこのPSG戦が教えてくれたことのひとつです。これから目指していくトリプレーテへの道のりで困難な状況に直面した時も、この経験が財産となっていくはず。
もちろん、土俵際まで押し込まれる前に勝っちゃうのがベターなんですけれど。
あんなに心臓に悪い試合は、数年に一度で十分です^^
彼はこうも言っています。
「昨夜のことは、年月が過ぎることでより思い出されるんだろうね。僕らは不可能を可能にしたんだ」
地震計が揺れた
ところで、このセルジ・ロベルトが決めた歴史的ゴールですが、ある“伝説”のおまけが付いています。
SPORT紙によるとカンプノウから500メートルほど離れたところに instituto de ciencias de la tierra jaume almera (ICTJA-CSIC) という経済・競争力省管轄の地質調査施設があるらしいのですが、そこの地震計がバルサのゴールの瞬間に揺れを計測したそうで。
そこの調査官ジョルディ・ディアスさん曰く、
「5-1の瞬間にすでに(スタジアムの)祝い方が大きくなっていたことが見て取れ、6点目で熱狂が訪れています。その瞬間は大きな振動が発生し、震度計でも記録されるほどでした」
地震計のエピソードと言えば、“ガスパッチョの夜”として語り継がれるロナウジーニョのカンプノウデビュー戦ゴール(深夜のセビージャ戦)を思い出します。
一発のゴールでスタジアムを揺らしたロニーもすさまじいですが、地震計を揺らすほどの熱狂空間ですから、パリの選手たちや審判も魔法にかかりますよね。
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