嵐の中でFCバルセロナの監督となり、チーム再建に取り組んできた
メッシの信頼を勝ち取り、デ・ヨングの起用法を見つけ、若手が台頭
ロナルド・クーマンがFCバルセロナのファーストチームを率いて、5ヶ月が経過しました。序盤は負けることも多く(ラ・リーガですでに4敗)、熟成度で勝るアトレティコに勝点差をつけられてしまったのですが、デ・ヨングの良い起用法を発見してからは負けにくくなってきた。1月以降はスーペルコパでやらかした以外は勝ち続けていて(すべてアウェイで7勝1敗)、前進している手応えはあります。クーマンへの評価もまずまずです。
(われらのエントレナドールを褒めて称える回。)
問題山積のなかでの就任
ロナルド・クーマンがバルサ監督となった時、彼の前には仕事が山積していました。バルトメウ一味がクラブをスポーツ面・組織面・財政面で荒廃させ、どこを向いても問題だらけだったのです。バルトはリスボンでの悪夢後、危機的状況なのはスポーツ面だけだと言い張っていましたが。
就任当初は、正直クーマンへの期待はさほど大きくありませんでした。彼がまず取り組まねばならなかったのは、バルトメウがやらかした事の後始末。理事会に嫌気の差したレオ・メッシに希望をもたせたり、理事会がすでに決めていた方針に従ってのスカッド再編などです。
“全権監督”と言われていたけれど、要するに責任を押しつけられていた。この頃のクーマンは“会長の盾にされている感”がすごかったですし、大変だったろうと察します。
今もそうですが、クラブの経済事情によってクーマンの手は縛られていました。
なにせ資金がないので(11億7,000万ユーロ、約1470億円相当の負債があると最近判明)、監督が欲しい選手は誰も補強はできない。最初はメッシが残るのかどうかも分からない。そのなかでの再編。
しかもバルトメウ一味への怒りによってクラブ周辺は常にざわついていたし、過密日程で戦術トレーニングの時間が取れないなど、苦労は絶えなかったはずです。
メッシの笑顔、フレンキーの最適解
クーマンがここまで行ってきて、上手くいったことを挙げます。
- ●レオ・メッシが笑顔を取り戻した
- ●デ・ヨング、ペドリ、アラウホら若手選手が光っている
- ●ジョルディ・アルバ、ブスケツら重鎮がいまも元気
- ●グリーズマンがメッシと合ってきた
まずメッシに関しては、クーマンは監督に就任するやカピタンとの面談を行っています(8月20日)。選手との対話を重視するクーマンの姿勢は選手たちから快く受け入れられていると言われますし、話し合いや日々のセッションでメッシの信頼や敬意を手にしたことが状況を良くしたのは確かでしょう。
メッシが笑顔を取り戻してきたのは、フットボール観の合う若者ペドリ・ゴンサレスの存在が大きいと見られます。そしてフレンキー・デ・ヨング。カピタンはチームが勝利するために自分がゴールを決めるだけでなく、彼らのような若手をサポートしてチームの勝ちに貢献することを喜んでいます。
そういった点では、当初こだわっていた4-2-3-1に固執することなく4-3-3風味に修正し、デ・ヨングをアナーキーなインテリオールに、ペドリをメッシに近いメディアプンタにする解を見付けたことがバルサ浮上のカギとなりました。
特にフレンキーの最適解を発見したのは大きかった。グレードUPしたパウリーニョというか・・・ 笑。ここんところのバルサ系メディアはデ・ヨングの写真で溢れていて、それだけでも心弾むのです。
フラン・ライカールトがエドガル・ダビッツを加えた4-3-3でシーズン後半に浮上したように、クーマンもデ・ヨングで浮上するか。見ていることにしましょう。
賭けざるを得ない、との事情もあるでしょうが、必要とあれば若手選手に迷いなく賭けるクーマンの勇気もバルセロニスタを明るくしています。2年目のフレンキーには飛躍を期待したけれど、ペドリやアラウホが主戦力になっているなんて想像していなかった。さらにアンスが戻ってくる日が待ち遠しいです。
ベテランたちも健在
先日の国王杯ラーヨ・バジェカーノ戦で際立っていたのは、ジョルディ・アルバ(31)の存在感でした。後半途中に彼が入ると、チームは見るからに活性化。攻撃においてはジュニオルとの差が歴然であることを示しました(今季はすでに8アシスト)。
セルヒオ・ブスケツ(32)も4-3-3のピボーテとしてはピアニッチよりも相応しいか。アルバとブスケツはシーズン開幕前には放出もウワサされたベテランで、スアレスやラキティッチ、アルトゥロ・ビダルと共に給与減額のために出されようかとしていましたが、「年齢は関係ない」と考えるクーマンが残した経緯があります。
どうやって使えば活きるのか分からなかったアントワン・グリーズマンも、最近はメッシと合うようになってきて1月はメッシを3アシスト。デンベレもようやく戦力になりそう、ブライスウェイトやトリンカオの活きる方法を模索するなど、全体に気を配っているのが伝わってきます(マテウスは、、、あれですが、、、)。
困難の矢面に立つ
そして今現在、ロナルド・クーマンが会長不在となっているバルサの顔としての役割も果たしている点も見逃せません。
バルトメウの要請により、スアレス非道放出の矢面に立った“ウェンブリーの英雄”は、前会長がバルサを追われた後はクラブの代表となって記者会見で様々な質問に対応しています。どこぞの政治家のように逃げ隠れすることなく、難しい質問にも誠実に答えていく姿がメディアにも評価されている。
VARへの疑問であったり、会長候補者たちへの補強の直談判だったり、言うべきところは言い、かつネチネチしないところも良し。
バレンシア時代の印象が強く、われらのチームの監督となることが不安で仕方のなかったクーマンでしたが、案外とクラブ史に重要な足跡を刻むかもしれません。最終的にものを言うのはタイトル獲得の成否とはいえ、ロナルドは信頼する値打ちがあります。
1月はここまでの8試合が全部アウェイという異常なカレンダーながら、7勝1敗と結果は出ている。当面はもうちょっとフットボールの輝きが増すと嬉しいかな。バモス、クーマン。
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