また新たに5人の少年たちがカンテラを去った。
国際フットボル連盟FIFAが、FCバルセロナのカンテラーノたちに対する“迫害”の度合いを強めています。バルセロナは2014年、18歳未満の外国人選手の獲得や登録を巡って規定に違反したとの咎で、2つの移籍市場での補強禁止に。登録違反と認定された少年たちは公式戦への出場を禁じられていました。それによって日本の久保君ほか、複数の少年たちがバルサを退団。それでもバルセロナでプレーをしたい、とトレーニングだけの日々を送っていた子どもたちもいたのですが、この度FIFAはそれすらも許さないとの姿勢をとってきたのだそうです。違反とされた選手たちは、ラ・マシアで暮らすことも認められなくなりました。
ラ・マシアにも住めなくなった少年
7日付のMUNDO DEPORTIVO紙によると、FIFAの制裁によってバルサのユニフォームを着て試合に出るどころか、シウター・エスポルティーバでトレーニングをすることも、ラ・マシアで生活することも出来なくなった、とクラブから伝えられたのはカメルーン人デランテロのパトリセ・ソウシア(16)です。ラ・マシア入寮は2012/13シーズン。エトー財団を通じての入団でした。
FIFAから無慈悲はお達しがあった、とパトリセに伝えたのは、彼が所属するフベニールBの監督キケ・アルバレス、今季から育成組織の責任者となったジョルディ・ロウラ、そしてカンテラのマネージャーであるジョゼップ・リョルカの3人。キミはもうバルサで練習も出来ないし、ラ・マシアを去ってもらわなければならないと告げられた時の衝撃を思うと胸が痛みます。子供を寮からも追い出すなんて、どれだけ非情な国際組織か。それで怪しいブローカーに捕まりでもしたらどうするつもりでしょうか。
幸い、パトリセはそんなブローカーには捕まりませんでした。異国の地でいきなり無宿となったパトリセ少年を助けたのが、チームメイトのアレックス・コリャドと彼の家族です。母スサンナさんはパトリセを自宅へと招き入れ、兄ジョナタンの口利きによって彼はテルセラに所属するエル・プラットに入団することができた。ただ、おそらくエル・プラットでも彼の活動はトレーニングのみに制限されるみたいです。バルサはパトリセが18歳になる2017年1月に彼を呼び戻すべく、毎月の給料と学費を今後も払っていく考えだとMDは伝えています。
規約違反と解釈されないよう処置
7日にMD紙がこのFIFAの無慈悲な決定を報じたことを受け、FCバルセロナは同日夜、一つの公式声明を発表しています。それは2014年にFIFAから科せられた制裁の結果、クラブは状況の正常化を申し出た、そこには下部チームの5選手は含まれている、というものです。曰く、それらの選手たちはバルサでトレーニングすることも、プレーすることも、施設で暮らすこともダメだと言われたので、FIFAから規約違反だと解釈されないためにFCバルセロナは彼らとのライセンスを更新せず、契約の解除を決断した。パトリセを含む5選手の名は明かされてはいませんが、MD紙は続報にて米国人のベン・レデルマン(カデッテ)、オランダ人のフォデ・フォファナ、ベネズエラ人のマティアス・ラカバ(インファンティル)、そして韓国人のチャン・ギョルヒ(フベニール)だと伝えています。
2011年にチャン・ギョルヒとともにラ・マシアの門をくぐった韓国人イ・ソンウ(バルサB)もまた17歳ですが、彼は18歳となる来年1月6日までは試合には出場できないものの、バルサに所属することはOK。そのあたりの線引きは一体何なのでしょうかね。
ベン・レデルマン(カデッテA)は以前こちらでも取り上げた少年です。彼の場合は単身バルセロナへと渡っているパトリセとは異なり、一家全員でカタルーニャへと移住していますので居を失うことはないのですが、クラブを去らなければならないのは同じ。ベンの父親ダニーさんは先週、高名なるニューヨーク・タイムズ紙の取材の中で「FIFAは私の息子をKillしている」、と語っており、それに腹を立てたFIFAが、なら練習も出来なくしてやろう、としたんじゃないかとすら思えてきます。完全に邪推ですが。SPORTによると、レデルマン家はカリフォルニアへと帰国したそうです。
そしてバルサがフットボルの最高組織から制裁を言い渡されて以降、FIFAに“失格”と認定されてまだラ・マシアに残っているのは、フランス人のTheo Chendri(フベニールA)ひとりになった模様です。
FIFAはバルサへの更なる処分を検討?
FIFAさんはこれで正常化とかやらが出来て、満足ですかね。さっさと他クラブの違反の摘発を頑張ってくださいと言いたくもなるところですが、バルセロナが安心できる状態になったかというと、そうでもないようです。
AS紙によると、フォファナとラカバはFIFAがバルサに処分を言い渡す前、クラブに情報を求めた31選手のなかに含まれてはいなかったとのことで、同紙はそれすなわちFIFAによる調査が現在もまだ継続されており、更なる処分を怖れたバルサが先んじた徴だとの見解を示しています。ブラッターとその仲間たちはバルサが規約違反を繰り返した形跡を掴んでいるうえに、バルサがまだ証拠を隠していると考えているのだと言うのです。
実際、AS紙が挙げている31名の調査対象リストは複数のカメルーン人ほか、セネガル人、ギニア人、フィンランド人、モロッコ人、エクアドル人、アルゼンチン人、ロシア人などで構成されていますし、どこで“失格”と“合格”が分かれるのかも外野からは分からない。リストに載っていない選手を自ら退団させたとなれば、さらなる犠牲者が出ても不思議ではありません。
「なんの落ち度もない子供たちが罰せられることを理解できない」
また、8日付のSPORT紙には、フォデ・フォファナの母親ウルハナさんのインタビューが掲載されています。フォファナ家は2年前、オランダのグローニンゲンから息子の夢を叶えるためにバルセロナへと移住。バルサではフットボルと勉学を両立させる生活を送っていました。彼らもまた、親御さんと一緒に暮らし守られた状況にある少年の未来が、子供たちを守るのだと主張するFIFAによって潰された例です。
フォファナ家がバルセロナへと移り住むと決めた理由を訊ねられ、「フォデが5歳の頃からバルサでのプレーを夢見ていたからです。世界のどこの国であろうと、もし子供がバルサでプレーする機会を手にしたなら、NOとは言えません」と答えたウルハナさんによると、フォデ少年がこれからどこに所属するのかはまだ未定だそうです。「全てがあまりに早く過ぎ、2週間ですべてが変わりました。これからチームを見つけなければなりません」
「私たち家族は全員ショック状態にあり、望みを失っています。子供にはそれぞれ夢があるもので、私の息子も夢を持っていました。彼はバルセロナでとても幸せに暮らし、ここにいるのが大好きでした。彼にとって、オランダへ帰ることは大きな失望を意味します。家族でずいぶんと泣きましたよ」、「現時点では、先のことは何も言えません。私たちは今、打ちひしがれてますから」
自分たちに起こったことを理解できるかどうか。ウルハナさんはいくらかは理解できるとしたうえで、こう続けました。「起こるべきではなかった事だと思います。私はこの目で、ここにいる子供たちを見てきましたし、彼らはとても幸せにしています。バルサは子供たちをとても大事に扱っていて、彼らは守られている。親元を離れラ・マシアで暮らしている子供たちもです。だからこそ私は、なんの落ち度もない子供たちが、罰せられることを理解できない。ここで彼らは良い教育を受け、良い学校に通い、なによりもすばらしい未来の可能性を持っているんです。子供たちは未来ですし、もしそのチャンスを与えなければ、未来はない。だから何故こういうこと起こっているのか理解できません」
FIFAの処分については、各人の事情を分析すべきだとウルハナさんは言います。まさにそのとおりでしょう。バルサから何か言われましたか?との問いには、「彼らに何が言えますか?現実を説明するだけです。クラブに出来ることは何もないですよ」と語っている母上。さらにクラブへの批判は一切ないのか、と訊ねられた彼女は、「全くない」、と言い切っています。そして次の言葉が、実に沁みます。FIFAのお偉いさんには是非とも聞いてほしい言葉です。
「FIFAには、私たちの未来である子供たちに対して、そんなに無情な事をしてはいけないと理解してほしいです。そしてバルサはフットボルバッセでプレーする子供たちをとてもよく気遣っていると伝えましょう。クラブは子供たちにとても良くし、子供たちはここで幸せにしています。私はそれを見てきた。FIFAの人たちにはここへきて、それを見てほしい。そうすれば、彼らは決断の際にもっと心を用いることでしょう」
感情的になって、このFIFAの○○!と叫ぶだけではアカンとは解かっているものの、こういう親御さんの言葉は響きます。子供たちがヒドイ扱いを受けないために、守る必要があるのは解かる。でも結果としてFIFAの規約で夢を砕かれ涙を流している子供たちも、こうして出ている。バルサは違反の疑いを避けてルール遵守をアピールするだけでなく、もっと根本的な何かを出来ないものなんですかね。クラブには別のところでもっとアピールしてほしいです。それでもし追加制裁を食らったら…その時はその時で^^;
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