マドリーとのライバル関係が指笛騒動の原因と分析。
今回のFIFAウイークにおいて、ニュースの主役となっていたのがカタルーニャ人セントラルのジェラール・ピケです。ラ・ロハの一員として臨んだユーロ予選のスロバキア戦では、カサ(オビエド)での試合なのに一部ファンから指笛を鳴らされたピケ。それに対してマドリー陣営を含む各方面からコメントが発せられるやら、セルヒオ・ラモスが口を挿むやらで、この一週間はとても賑やかな状況となっていました。そこでピケは記者会見を開き、自らの考えを述べることを決断。スペイン代表でのお勤めから戻ったピケは、シウター・エスポルティーバでのトレーニングでひと汗流した10日13時すぎ、注目を集める中プレスルームへと登場しました。
マドリーへの姿勢は変えない
この会見でのジェラール・ピケは、とても自然体で報道陣からの質問に受け答えしています。全編を通してThis is PIQUE’といった様子で、変に取り繕おうとしていない。正直。(良くも悪くも?)これぞピケによるピケの会見でありました。ここ数日の状態を訊ねられた最初のコメントからして、なかなかにくだけています。
「すごく良い感じだよ。僕が気にしているスポーツレベルではすごく良いし、代表での2試合も良い手応えだった。今はアトレティコ戦に出場できるようになるかを待っているところさ。僕はかなりポジティブで幸せなんだ。(オフだった)昨日はキノコ狩りに出かけたんだけど、カゴが3つも一杯になってね。それはまだあまり人が入っていない証拠だし、今日は雨が降っているから、もっと生えてくるだろうね」
キノコ狩りシーズン到来の話題で会見をスタートさせたピケ(シャキーラとしばしば山に入っている)は、その後は幾分真剣に、指笛についての見解を述べました。「それは当人たちに訊ねるべきことだろうけど、僕の意見としては、僕のマドリーに対する発言や、バルサとマドリーのライバル関係によるものだと考えてる。ここ数年を振り返ってみれば、僕はラ・ディアダ(カタルーニャの日)のデモに参加して、それから代表でプレーをしているけれど、誰も僕に指笛を鳴らさなかったからね。カタルーニャとスペインの関係問題ではないと思う。2003年にU-15でデビューをしてから、代表チームへの僕のコミットメントは最大級だった。僕は代表に全てを捧げてきたんだ。バルサとマドリーのライバル関係については、僕は決して変わりはしないだろう。僕はそういう人間だし、そうやって生きてる。僕はとても情熱的だから、そう受け止めてもらいたい。バルサ側の人間としては、いつだってマドリーが負けることを望んでるよ」
代表チームのために出てきた
話題はマケドニア戦終了後のセルヒオ・ラモスの発言、そして指笛へと続いていきます。「セルヒオ・ラモスとはとても良い関係だよ。僕が代表に行くようになってから、今が一番だと思う。デビューをした当初は、ちょっと冷え込んでいたと思うけれどね。でも例えば、この前の招集の時には、マケドニアとの試合前には先発イレブンはイケルの部屋にいたんだ。それが僕らの伝統でね。そこで僕はラモスとたくさん話をした。この件は話してないけれど。彼は試合前には僕を擁護してくれたし、ミックスゾーンでのことは、あの場はかなり忙しないから、いろんなことを言っちゃうんだよ。僕らの関係は良くなっているし、選手としても彼の隣りはとても居心地が良いよ。彼はスゴイ選手だ」
「指笛に関しては、正直に言うと僕自身にはあまり影響はしてない。影響があるのは自分のことよりもチームのことだね。僕はこれまでにたくさんのスタジアムで指笛を鳴らされてきたし、人々が指笛を鳴らすのはその権利があるからだ。人には誰も表現の自由がある。僕はこれからこの状況を変えるように努めていくけれど、言葉によってそれを行うのは無理で、行動によって変えないといけない。代表チームへと行くたび、チームが試合に勝てるようにピッチで全力を尽くしていくよ。僕が気にしているのはミスター(デルボスケ)のことさ。彼はこういう状況を好んではいないから。そして居心地の悪いチームメイトたちもだね。ただ、状況はこうだから。立ち向かって行かないといけない」
「これからどうなっていくか僕には分からないけど、僕がこの場に出てきたのは、指笛が少なくなるためだよ。代表チームのためだね。もしタイトルを勝ち取りたいのであれば、全員が団結しないといけない。いろんな意見があるし、何故自分が指笛を吹かれるのかは知らないけれど、それぞれにしたいように意見を表すのが民主主義だからね。僕としては状況が変るように出来ることはしていくよ。でも僕だけに懸かっていることでもない」
後悔はない。マドリー選手とは良い関係
この騒がしい状況が、ピケの言動が引き金となって生まれたことは間違いないのですが、それについて後悔はしていないとワカ旦那は言います。「なにも後悔はしていないよ。(欧州スーパーカップ後のことは)何度でも繰り返していたことだろう。僕はそういう人間なんだ。チャンピオンズ準決勝の前には、ベルリン決勝はバルサ対マドリーが好いと言ってはいたけど、家ではブッフォンのユニフォームを着てマドリー対ユベントスを見ていたし。僕はマドリーにはいつも負けてほしい。それがスペインスポーツにおけるライバル関係だよ。僕はこのクラブを何よりも愛しているので、僕が変わることは期待しないでほしい。僕は謝りもしないよ」
「ただ、だからといってレアル・マドリー選手との関係を断るというわけじゃない。マドリー選手と僕の関係はファンタスティックなんだ。例えばイケルとのことなんだけど、彼とサラ(カルボネロ)はカルデロンで試合がある前日、二人めの子供サシャが生まれたということで、シャキと僕に花を贈ってくれてね。僕らは電話で話をして、そのお礼を言ったんだけれど、明日はマドリーダービーがあるねという話になって、彼らは守備陣に欠場者を多く抱えていたから、キミが4点獲られますようにって言ったんだ。すると翌日、そのとおりにアトレティコが4点決めていた。えぇ!って感じだったよ。それからも僕らは笑い合っているし、なんの問題もない。イケルとはすばらしい関係さ。ラモスとは、すばらしいとはいかないまでも、たくさんのことを話す仲だよ。代表チームの雰囲気はとても良いんだ。かつてなく良いね。事をややこしくしたがる人たちがいるけど、チームは一致団結しているし、それこそが重要なことを成し遂げるための道だよ」
マドリディスタを刺激した、トリプレーテ祝勝会でのケビン・ロルダン発言(ダービーに負けた夜にクリスティアノが誕生会を開いたことをぶっちゃけた歌手への感謝)については。「あの日はたしかにエレガントではなかったね。でも時には予定調和をぶっ壊す必要だってあるわけだし、いつだってスーツにネクタイを着てるはずもなく、水着にスリッパって日もあるさ。今はバルサの方がマドリーよりも多くタイトルを獲っている時期だけど、歴史的には以前はその反対だったんだ。それを僕らが変えた。自分がその一員であることを、僕はすごく誇りに感じているよ」
代表引退はない
ここ数日、指笛攻撃にうんざりしたジェラール・ピケが代表を辞退するのではないか、とのウワサがちらほらと流れていました。しかしジェリはそれをきっぱりと否定しています。「一切考えてないよ。一切ね。代表チームを去るのは、最後の方法。それをすると、僕が正しいとは思っていない理由で僕に指笛を吹く人たちを、正しいと認める事になってしまうだろう。指笛が続いていこうと、ミスターが僕を信頼してくれるかぎりは、僕は代表チームへと行き続けるさ」
これから人々の考えは変わると思うか?と問われたピケは、こう答えました。「この記者会見によって変えようとはしてないよ。もしカタルーニャとスペインの件で僕に指笛を吹くのなら、その人たちは正しくはないし、僕の代表へのコミットメントを疑われるのは心が痛むよ。もし指笛がバルサ対マドリーによるものであれば、僕に後悔はない。ライバル関係はもうずっと前から存在していたことだからね。僕は誰に対しても失礼なことはしていない。あれ(ロルダン発言)は多くの人がするような冗談だったけど、ピケだからああなったんだ。ベルナベウでのブーイング?僕にとっては、ベルナベウでの指笛はシンフォニーさ。どんどんやってほしいね。でもあらゆるチームから選手が集まる代表ではノーだ。代表チームに悪い雰囲気を作るのはいけない。ライバル関係はあるけれど、代表チームに影響させてはいけないよ」
カタルーニャとの関係
カタルーニャ選抜でプレーし、カタルーニャ独立を支持するピケの行為が、状況を複雑化させている面はあります。9月27日(日)にはジェネラリター(自治州政府)の選挙があり、独立派が過半数を超えるとの予測もある状況です。「複雑な状況だね。歴史が人々に伝えているのは、結果に耳を傾ける必要があるということだよ。人々が意見を表明し、投票へ行くのに27日は良いタイミングだと思うし、そこで一つの結果が出た後はそれを判断し、最善の解釈を見つけ出さないといけない。どうなるか僕には分からないけれど、去年は180万人の人がでもに参加したわけだから、少なくとも耳を貸す価値はあると思う。ラ・ディアダ?毎年のように行くよ」
「カタルーニャ選抜については、仮定の話はしない。今のところ、僕がプレーできるのはスペイン代表だけしね(カタルーニャの試合は年末1回)。お金のために代表へといっているという話はデタラメだ。だって僕はバルサでその50倍はもらっているんだからね。それに名声のためでもない。僕はトリプレーテを2回、セクステーテを1回達成したチームにいて、そのチームでほぼいつも先発しているんだ。僕が代表へと行く理由は、それが正しいと思うからだよ。Guanyarem(カタルーニャスポーツを応援するキャンペーン)をサポートしているのは、カタルーニャスポーツには僕自身が若い頃にとても世話になったから。(スペインとカタルーニャ)ふたつを手助けするのに問題はない。両立可能なことだよ」
ということで、ジェラール・ピケが改めてその抜きん出た表現力^^を証明した記者会見でありました。バルセロナとマドリーの間にあるライバル関係は今更もうどうしようもないし、バルセロニスタである自分はマドリーの敗北をいつだって願っていると断言。その姿勢はこれからも決して変わることはないけれど(バルサ選手としてベルナベウで指笛を鳴らされるのは大歓迎!)、両クラブのライバル関係を代表チームへと持ち込むのはナンセンスであり、止めてほしいとの主張は分かりやすいです。
以前はマドリーが圧倒的に優勢だったタイトル争いを、自分たちの世代でひっくり返した、それをとても誇りに思っているとの言葉も印象的です。20世紀最高のクラブと称され、かつてはあらゆるところで持ち上げられていた人たちには、それが我慢ならないのでしょう。ルックス良く、坊ちゃんで、一流選手で、パートナーがシャキーラで、自由な発言をするピケが妬まれるのは仕方がない。まあバルサとて先のことは分からず、いずれはじっと我慢の時が訪れるかもしれませんので、それまでこのピケでガマンしてくださいというところです。
ダニ・アルベスがアルベスであるように、ピケはピケであり、変わる必要はないですし変わることもないでしょう(もちろん全てにわが道を行くわけではなく、交通違反などの騒動では反省し、謝ってる)。この生まれもっての本心を偽らないキャラクターをこれからも続けていけば良し。指笛が減るかどうかは分かりませんが、なかなか良い会見でした。
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