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ペップ 「時間は全てを消耗させる」

心身の疲労が、退団の第一の理由。

2012年4月27日、ジョゼップ・グアルディオラが今シーズンかぎりでの監督退任を発表しました。前日あたりから退団はもう確定的と言われていて、でもひょっとしたら大どんでん返しがあるかもしれないと淡い期待を抱いていて、でもやっぱりそんなことはなかったという記者会見だったわけですが、その途中からのペップの和やかになった表情を見ていたら、ああこれでよかったと。ついでにこの会見では未来への希望の種も蒔かれまして、このあたりもさすがといったところです。

 

◇バルサの4年は、永遠

この日は朝から、ペップの動向に全世界のバルセロニスタが注目していました。ロセイ会長がシウター・エスポルティーバへ来た!グアルディオラも到着した!というのが現地の朝10時頃。それからペップがロッカールームで選手たちに決断内容を説明中… という情報が流れ、トレーニング開始時間(11時)になっても選手たちが現れない… となり、セッション開始は11時30分。それとほぼ同時にクラブから「13時30分よりカンプノウにて会見を開きます」との発表があり、あとはおおよそご存知のとおりです。

カンプノウ内にあるプレスルームには、多くの報道陣が詰め掛けていました。それに混ざって、クラブの理事たちほか、プジョル、チャビ、バルデス、イニエスタら4人のカピタン、そしてピケ、セスク、ペドロ、セルヒオ・ブスケツらカンテラ選手たちも。今回ここに、メッシの姿はありませんでした。後にレオはフェイスブックにおいてその理由を、「感情が溢れていたので、行かないことにした。報道陣が選手の悲しむ表情を狙うのは分かっていたから」と説明しています。

会見にはサンドロ・ロセイ会長、アンドニ・スビサレッタ、そしてペップ・グアルディオラが出席しました。まあどうでもいいことですが、座った位置は真ん中がロセイ、向かって左がペップ、右がスビです。会見の最初に話したのは会長でした。そこで彼はまず、グアルディオラ監督が来シーズンはチームの指揮を執らないとの発表を行っています。そして続いて、ペップが今季かぎりでの退団を決めた理由を、次のように説明しました。

「私の進退について不確かな状況を生み出してしまったことを、深くお詫びしたいと思う。多くの推論や議論を避けるためには、回答を長引かせたのは間違いやったね。私がもったいぶっていたように見えるけれども、それは私の意図するところではなかった。けれど私が毎回1年契約を望んでいたのは、バルサの要求するところが非常に大きいからや。私は当初、任期は2年ほどやろうと思っていたよ。バルサの監督にとって、4年というのは非常に長い時間(永遠)なんや」

 

◇消耗

ペップが退団を決意していたのは、もうずっと前のことでした。「9月か10月には、今季かぎりでの退団は考えていた。会長へと私が去る時が来た、これが私の最後の年やと伝えたのは12月やった。でもそれを公けには出来へんかったし、選手たちにも言えへんかったよ。シーズンはまだ多く残っていて、困難も山積みやったからね。決断をしたのはずっと前のこと。だからこれまでは、長く落ち着かない日々やった。そしてチャンピオンズやリーガを失った今、それを発表する瞬間となった」

この会見でミスターが繰り返したのは、消耗した、という言葉です。「これだけ長く仕事を続けることになったのは、私たちが多くを勝ち取ったからや。もしそうでなければ、このクラブでは長くはいれない。もっと前に、ここを去っていたやろう。時間は全てを消耗させるし、私もすり減ることとなった。強さがなくなってしまった。そやから今は、別の人物が後を引き継ぐのが一番なんや」

ペップは繰り返します。「私は空っぽになったんや。そして今はそれをまた満たしていかなければならない。このクラブでは求められるものが極めて多く、それによる消耗は半端やない。次にやってくる人物(次期監督)は、私には提供できないものをクラブに与えてくれるやろう。それは能力の問題ではなく、エネルギーの問題なんや。監督であるためには、多くのことを伝えていくパワーとエネルギーがなければならない。私は元気を取り戻し、疲れを癒す必要があるんや。離れたところからバルサを見ていくことにするよ」

「もしこのまま続投していたなら、私も選手もダメージを受けることになっていたやろう。それは私自身を騙すことでもある。私は選手たちに大きな敬意を抱いていて、彼らを潰してしまうには、私たちは多くのことを共有しすぎた。私にはそれは許せんかったんや。私の今いる位置は恵まれていて、可能なかぎりのベストやろう。けれども私は、必要なことをしなければならない。私は自分が、ええ仕事をしたという感覚をもってここを去るよ。空っぽになって、平穏とともに去るんや。それによって誰も傷つかないし、活き活きとした思い出は残る。自分の仕事に、私は満足している」

 

◇選手たちへの感謝と、ティト

PEPは去るが・・・この会見でも、グアルディオラは選手たちへの賛辞を欠かしませんでした。「彼らの与えてくれたもの、その全てに感謝したい。彼らと仕事のできた私は幸せ者やったよ。私は、仕事に最高の情熱を注いだ。彼らが私のイメージしていたプレーや試合を、本当に何度もしてくれたことに感謝する。これ以上の褒美なんてないし、それを私は手にしているんや。エバリスト・ムルトラからフィリアルの監督を5年間オファーされた時、私は喜びで飛び上がったよ。そしてその翌年、彼らはトップチームを率いるオファーを出してくれた。その時の感じた喜びも、同じものやった。けれども時間は希望もすり減らしていくんや。私はものすごく消耗してしまった」

会見もこの頃になれば、彼の後継者がティト・ビラノバであることは明らかになっています。フィリアルの頃から5年間右腕を務めてきたティトについて、グアルディオラはこう請け負いました。「ティトにはベストを期待できる。クラブはとても正しい選択をしたと思うよ。これまでの仕事ぶりから私は彼に全幅の信頼を寄せているし、選手たちは彼のことをよく知っている。私はふたりで作り出してきたアイディアを、表に出していただけなんや。私が与えられなかったと感じているものを、彼はチームに与えてくれるやろう」

誰を後任にするかという人選においては、アンドニ・スビサレッタがティトを選んだのだとグアルディオラは明かしています。「私はティトに、やれると思うかと尋ねたんや。そして彼にこう言ったよ。”もしいけると思うのならば、疑問は抱いたらあかん。バルサは君にチャンスを与えている。世界中の監督たちが、手にしたいと願うチャンスなんや”。これはスビサレッタが下した決断で、クラブがそれを承認した。私はただ、彼には能力があるという意見を出しただけや。私が彼と一緒に仕事をして5年。そのずっと前から、私たちはお互いをよく知っている。彼は間違いなく、チームに安定をもたらしてくれるよ」

そして。「私が空っぽやからといって、周りもそうということではない。もしティトがやれると感じているのなら、申し分ない。彼はチャレンジを受け入れている」

親友の挑戦を少し離れた位置から見守りながら、ペップは切れてしまった電池を充電していくことになります。その気になれば世界中のクラブから引く手数多でしょうが、「今はその気はない」と、さくっと一蹴しています。「遅かれ早かれ、また監督はやることになるやろう。それがいつになるのかは、私には分からへんよ。今は別のことに興味を持っているんや。人生には、フットボル以外のこともたくさんあるんやからね」

 

◇その他のこと

主だったペップの会見内容はこのあたりですが、後半は質問形式になっていましたので、彼はジャーナリストたちからの様々な質問に答えています。そのなかで、この退団発表が国王杯決勝でのプレーに影響はしないか?との問いには、「選手たちには今日決断を伝えたよ。そして彼らはまるで獣のようにトレーニングを励んでいた。それはとても良いサインや」とコメント。ラポルタとロセイによる両理事会には、「彼らが私の好きなようにやらせてくれたことに、感謝の思いしかない」としています。

そして決断はもうずっと前に出ていたので、チェルシー戦後のカンプノウのリアクションにも影響はなし。重用してきたケイタについては、こう述べました。「彼はね、私のバロメーターやったんや・・・彼の様子を見れば、私は上手くやっているのか、そうでないのかが分かったよ。それが私の持っていくもの。とても幸せな気持ちで、私は去るんや」

 

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