LFPに延期を却下され、チームと話し合って決断
先月9月24日に還暦を迎えたカンプノウに、新たな逸話が加わりました。とはいっても明るい内容ではなく、街では多数の血も流れているだけに、忌々しい出来事として後生に語られていくであろう事件。民主主義と表現の自由を阻もうとする中央政府への抗議するため、FCバルセロナがラス・パルマス戦を無観客で行うと決めた一件です。
カタルーニャ独立を問う住民投票
2017年10月1日にカタルーニャ全土で行われた、スペインからの独立の是非を問う住民投票。中央政府と自治政府の衝突が報じられ、緊張感が高まっていただけに、同日カンプノウで行われるバルセロナ対ラス・パルマスへの影響が注目されていました。
このカタルーニャ独立投票では、投票を阻止しようとする治安警察が住民に暴力を振るい、多数の市民が血を流したことが世論の非難を高めています(800人以上が負傷との報道)。そういった事件に対し、FCバルセロナは1日午後3時45分、クラブの公式声明を発表。それは以下のようなものです。
「FCバルセロナは今日、カタルーニャ全土で、民主主義の権利と市民の表現の自由の行使を阻むための行為が行われていることを非難します。
このような例外的な事実を前にして理事会は、試合を延期することに否定するLFP(プロフットボルリーグ)の決定を受け、本日トップチームがラス・パルマスとの試合を無観客で行なうことを決定しました」
理事会がLFPに試合の延期を求めたのは、もし試合を行えば、抗議目的の観客がピッチになだれ込む危険性があったからです。
6ポイントを失うことに
SPORT紙によるとジュゼップ・マリア・バルトメウ会長はクラブの警備責任者と共に、キックオフ4時間前、状況を調査するためにモッソス(カタルーニャ州自治警察)の幹部と会議を開いています。もし同時多発的に事件が発生した場合、自治警察は観客の安全を確保できるのかどうか。実際に数万人の無事を確保するのは難しいですから、この段階でクラブは試合延期とするべきだろうと考えていたようです。
そこでラ・リーガ(LFP)へと電話連絡を入れるわけですが、あちらの返答はすげないもので「延期する客観的な理由はない」。そしてもしバルサが一方的に試合延期を決めるなら、バルサはこの試合で負け扱いとなり、さらに3ポイントを剥奪するかもしれないぞと脅しをかけてきます(もっと重罰もほのめかされたとMD)。ラス・パルマスの理事たちも審判団も、理由はないと試合延期に賛同しませんでした。
選手たちは9割が賛成
そういった状況を受け、バルトメウたちは選手の意見を聞くべく、ロッカールームへと下ります。イニエスタ、メッシ、ブスケツ、スアレス、ピケら中心選手たちやエルネスト・バルベルデと話し合った結果、バルセロナは試合の実施を決断。ただし事件発生を回避するため、観客は入れないこととしました。
MD紙によると、バルトメウの相談を受けた選手たちは9割が試合実施に賛成だったそうです。ただし試合が通常とは異なる状況で行われていることを世界に示すべきだという点で合意。実際、無観客試合にしたことで一般ニュースにも取り上げられていますし、カタルーニャの自由が制限・抑圧されていることを強調する結果となっています。
ただし理事会としてのダメージは少なくはなく、反発した重鎮カルラス・ビラッルビ副会長とジョルディ・モネス理事が理事会を辞任するという事態にも。その他にも、自分たちの意見を訊ねられなかったことに不満を抱いている理事、決定に反対の理事などもいて、理事会分裂の火種を含む決断だったようです。
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