ロセイ理事会は一線を越えた、と不快感を表した前監督。
この週末にはチャビのめでたい結婚式があり、そして週明けにはプレシーズンもいよいよ開幕!というなかで、突如もくもくと発生してきた雷雲があります。ゴロゴロと雷鳴を轟かせたのはバイエルン・ミュンヘン監督のペップ・グアルディオラでした。プレシーズンを行っているトレント(イタリア)で開かれた記者会見において、サンドロ・ロセイ理事会に対して強い不快感を露わにした前バルサ監督。決して好戦的な性格ではないペップだけに、現理事会をぶった切ったのには相当な怒りがあったのだと察せられます。自分を傷つけるために友人たちを使うことが、彼には勘弁ならなかったのです。
「チアゴはスーパーな選手」
この日の会見でペップはまず、トレンティーノでのプレシーズンについて語った後、ラジオ局COPEが報じていた、“チアゴ・アルカンタラの移籍先はほぼバイエルン・ミュンヘン”との情報に関する質問に回答、セントロカンピスタへの興味を認めています。「ルンメニゲ(代表取締役)とザマー(スポーツディレクター)に、チアゴを欲しいと言ったよ。私たちはチアゴを必要としている。もしチアゴが来なければ、夏の新加入はもうないだろう。彼はスーパーな選手で、3つ、4つ、5つのポジションでプレーができる。頭が良く、非常に強いメンタルも備えている」。ベタ褒めであります。
「普通の状況であれば、彼は決してバルサを去らないよ。バルセロナを出たがる選手なんて一人もいない。出たいと考えるのは、出番が少なくなると感じられる時だけだ。けれども彼がプレー時間を望むのであれば、ネイマールの加入によって、それはより難しくなるだろう。だから私たちには彼を獲得するチャンスを手にしているし、私はカールとマティアスにチアゴが欲しいと伝えたんだ」
ウワサされていたマンチェスターに比べると、バイエルンは中盤が厚い。望むような出番はあるのでしょうか。ペップは言います。「私たちはこれから6つのコンペティション(リーガ、コパ、チャンピオンズ、ヨーロッパスーパーカップ、ドイツスーパーカップ、クラブワールドカップ)で戦うし、全選手の力が必要なんだ。そしてチアゴのクオリティを必要としている。彼はチームにとって良い補強になると思う。彼は“6番”、“8番”、“10番”、そして“7番”でプレーできるからね」
そして11日にラジオ局RAC1が報じたところでは、バイエルンのルンメニゲさんからバルサのサンドロ・ロセイ会長に対し、チアゴ・アルカンタラの契約解除金を支払う意思があると伝えられたらしく。違約金自体は1,800万ユーロなんですが、そこに税金が加わってくるので、チアゴを欲しいクラブは2,200万ユーロほどを準備する必要があります。これでバイエルン移籍となれば、それはつまり“チアゴの中でのペップとティトの差”ってことです。
ネイマールに関しての事実説明
まあチアゴの件はもはやどうしようもないとして、会見はいつしか風向きを変えていきます。この日は実は、バイエルンのためにネイマール獲得を目指していたグアルディオラがネイマール父と会談した際、「ティトにはメッシとネイマールを両方使いこなす技量はない」と言っていたという、サントス副会長オディリオ・ロドリゲスの発言がメディアを賑わせていました。ペップがそんなこと言うか?とまず疑問に思うわけですが、それについて訊ねられたバイエルン監督は、5分弱ほぼノンストップでこう答えたのです。
「そのセニョール(オディリオ・ロドリゲス副会長)のことを私は知らないし、私はブラジルに行ったこともないんだ。おそらくは仲介者が大間違いしたんだよ。報じられている情報は全然正しくないし、私が言ったというそのコメントを、私が発することは決してない。私は3年前、(バルサ監督として)ネイマールと電話で話をしたことがある。それはロセイ会長に、彼がバルサへ来るよう説得できそうかをみるために電話するよう頼まれたからだ。私がしたのはただ、バルサへ来るための説得だよ。チューリッヒでのFIFA式典で彼と顔を合わせた時には、フットボルやサントスでの活躍について会話をした」
「そしてバイエルンの監督となった時、私は彼の状況を知りたいと思ったんだ。電話で話をして以降、彼の希望が変わったのかどうか、私は知らなかったからね。そこで私は彼や彼の父とニューヨークで会い、5分で彼がバルサ志望であることを理解した。私がネイマールと話をしたその3回のなかで、ティト・ビラノバの名前を出したことは1度たりともなかった。1度もね」
「それにティトは、自分がバルサの監督となるための能力があるかどうかを説明する必要はない。何故なら彼は5年間私のアシスタントだったし、このシーズンはバルサ史上最高成績でリーガを制したんだからね。良い選手たちは一緒にプレーする能力を備えているもので、メッシとネイマールもそうだよ」
決して忘れないであろうこと
ペップは更に続けています。「バルサでの時間が終わり、私は6,000kmの彼方へと去った。その際会長と理事会には、私のことはそっとしておいてくれるように言ったんだ。けれども彼らはそれを果たさず、言葉を守らなかった。バルサを出ると決めたのは私だった。自分の時代を全うし、私は去ったんだ。彼らには自分の仕事をして、手にしている選手たちで満足するように言ったよ。私はバルサの成功を願っている。バルサは私にとってとても特別なクラブだからね」
「けれどもウンザリすることもたくさんあったよ。彼らはやりすぎたんだ。私にダメージを与えるためにティト・ビラノバの病気を利用したことを、私は決して忘れはしないだろう。私はニューヨークではティトと会った。それ以上に彼と会わなかったのは、私以外の理由によってムリだったからだ。それを長年付き添った仲間が上手くいくのを好まないからだと理由付けするのは、とても、とても趣味が悪いことだし、私が期待していなかったことだ。私はバルサで、自分のやれるかぎりのことを行った。退団を決めたのは私だった。私は単に、自分のことはそっとしておいてくれるように言ったんだ。私は家族と共に英語を上達させようと遠くへ行き、そして最終的にはドイツ語を学んだ」
とにかく自分のことは放っておいてほしい
グアルディオラの長いスピーチはまだ続きました。「私のことは放っておいてほしい。彼らは自分たちの道を進めばいいんだ。そして私の友人たちを、私にダメージを与えるために使わないでほしい。私がもしヨハン・クライフと夕食をしたいと思えば、私はそうするだろう。私は誰になんの借りもないんだ。もしアウディカップで(ロセイたちと)顔を合わせれば、私は抱擁を交わすよ。バルサには是非上手くいってほしいと思ってる。とはいえ、決して忘れないことも存在するからね。サントス(副?)会長の件は、つまらないことだ。けれども他に、彼ら(ロセイ理事会)はすべきではなかったことをしたんだ」
「もし私が発言したことの中に、不確かな内容が含まれていたなら、どうか彼らには出てきてもらい、そして反論すればいい。ただし仲介者ではなく、彼ら自身によってね。彼らが出てきて、そして私が今言ったことを否定すればいいんだ。そうすることで私たちは話を続けていくことになるだろう」
これで5分弱のスピーチは終了となります。ちなみに、最初のチアゴに関する質問はドイツ語で為されていたので、ドイツ語で返答していたペップでしたが、ネイマールについての質問はカタランだったためにコメントもカタラン。つまり、トレンティーノでのプレステージについて語るべきグアルディオラが横道に逸れ、古巣を批判して独自のワールドを作っている間^^;、ドイツのメディアはちんぷんかんぷん状態でした。皮肉にもそれは、ペップとバルサとの深い結びつきを示す結果となったというのは美化しすぎか。思わず暴走したのかもしれませんが、理由があったとはいえ、ちょっとやり過ぎちゃったというところです。ティトや自分を守るためだとしても、別の方法があったでしょうし。
カルドネル副会長「ティトの病気を利用したことはない」
こうしてロセイ理事会は、ペップ・グアルディオラからボールを投げられたわけであります。首都マドリーのメディアは当然、この突然の対岸の火事に“もっとやれやれ”モード。しかしバルサが前監督の不満に怒りをもって返しては、良からぬ結果となるのは明々白々です。そもそも超カリスマに対してロセイさんたちでは、まず勝ち目のない戦い・・・ いやこの手の揉め事に勝者なんてないか。いずれにせよ、言いたいことがあるなら、ペップが望むように正面から反論するしかないでしょう。
MUNDO DEPORTIVO紙のウェブページには、この前指揮官の発言に対する、ジョルディ・カルドネル副会長のコメントが掲載されています。元々はクラブ規約改正についてインタビューを受ける予定だったようですが、急きょペップの件についても語った感じです。カルドネル副会長はまず、バイエルン監督の言葉にこう述べています。
「とても驚きました。私は14時の会議の後、ラジオで少し聴き、その後の追加情報によってペップの発言を確認しましたが、私にはよく理解できませんでした。これらの発言の後に、なんらかの説明があるのではないかと私は思っています。何故なら私たちと彼との関係は、いつも和やかなものだったからです。私たちは彼に対抗するためにティトの病気を使ってはいません」
そして。「私たちは互いに助け合い、同じプロジェクトに向かって働いてきたと思います。そして彼が私たちに退団の意思を伝えた時、私たちはそれを尊重しました。彼には是非続投してほしかっただけに、クレとしての感情では理解しませんでしたが、人として私たちは彼を尊重したのです。ペップの元へは、誤った情報が届けられるであろうと、私は確信しています。全てをハッキリさせるため、会長との話し合いがあるんじゃないでしょうか」
「私たちバルセロニスタ、カタルーニャ人は、意見に相違があった時には話合うことで理解してきました。彼の家族はチームと共に旅をしていましたし、彼らとの関係もまた非常に良かった。おそらくペップは会長と話をし、相違点を減らすべきなのです」
そういう論点から、ペップの退団はロセイとの関係とは無関係だと言うカルドネル副会長。いずれにせよ、これによってバルセロニズモなるものが分裂し、得意のお家騒動となることは避けなければなりません。ロセイとペップの溝は、埋まらないでしょうけど。しかしまあ、いろんなことが次々と発生するクラブであります。それがある意味、魅力っちゃあ魅力でもあるんですが、こういうのはやっぱあきまへん。
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