勝てると思ったが、フットボルはなかなか手厳しい。
チームが勝利を重ねている時は、浮かれている気持ちを戒めるための言葉だと捉えられる“勝つのは決して簡単ではない”のフレーズ。しかしチームの流れが一旦悪くなると、これほど痛切に感じられるものもありません。リーガ第33節、カンプノウへとバレンシアを迎えての一戦は、バルセロニスタを悶えさせる試合となりました。ここ数試合とは異なり、バルサは立ち上がりからゴールチャンスを連発しながらも活かしきれず、前半を終えて2点のビハインド。後半メッシの得点で1点差に迫るのが精一杯で、リーガ3連敗を喫するのですから、危うく挫けそうです。
押しに押したのに、2点ビハインドの前半
最近はしょっちゅう言っていますが、バルサがまさかこのような状況に追い込まれるなど、3月末には想像もしていませんでした。チームはそこまで公式戦39試合で負けがなく、クラシコで40の大台に乗ると多くのクレは信じて疑っていなかった。そこでマドリーのリーガを終わらせ、自分たちはトリプレーテへ向けて加速していくと都合よく確信していました。バルセロナに追いついたマドリー勢にしても、大逆転がありえると心から信じてはいなかったでしょう。しかしそこからのリーガ3試合でルーチョチームの貯金はなくなり、ついにはアトレティコに勝点で並ばれてしまいました。
SPORT紙はこのバルサの状況を、“5試合の新リーグ開始”だと表現しています。残り5試合で取りこぼしの少なかったチームが勝利するミニリーグ。しかしバルサにとって苦しいのはこれがゼロから始まる勝負ではなく、こちらが失速、あちらが加速して始まるレースである点です。運の流れは今、風水に頼りたいほどにバルセロナと逆方向にあります。
バレンシア戦のルーチョチームは、出来が悪かったわけではありません。過去数試合の反省を活かし、キックオフと同時にギアをアップ。開始6分にして決定機を作り出すと、次々に相手ゴールへと迫りました。1ヶ月ほど前のバルサなら、15分ほどで事もなく勝負を付けていたでしょう。どん底は脱した印象です。
しかしそれらメッシ、スアレス、ネイマールが手にした好機は、ことごとくジエゴ・アルベスによってブロックされます。4月に入ってから元気のなかったメッシに復調の兆しが見られ、自らのシュートやラストパスで決定的な仕事をしていたのは朗報でしたが、相手守護神のパラドン連発に遭い、奪えたゴールはメッシによる1点のみ。あれだけ押していた前半のスコアが0-2だなんて、「ご冗談を!」と叫びたくなります。
でもフットボルではネットを揺らさなければ試合には勝てない。結局ルーチョチームは前半で喫した2点差を取り戻すことは出来ず、悪夢のリーガ3連敗(公式戦4連敗)となってしまいました。
プレーには改善の兆し
つくづく惜しいのは、内容に改善が見られ、決定機の数で完勝していたこの試合で敗れてしまったことです。バルセロナのプレー内容、特に前半の出来は勝利を期待させるものでした。選手たちはボールを少ないタッチで素早く回し、ピッチもワイドに使い、縦への動きも意識。レオ・メッシが右に入る場面が多いことで、逆に左を使えていました。このあたりは確実に良くなっていたので、次のデポル戦(リアソール)やスポルティング戦(カンプノウ)でも続けていければ、結果はついてくると信じます。
厄介なのは負けていることによるシュート動作時の微妙な力み、ずれ。百戦錬磨のクラックたちですら、結果が出ていない状況では悪循環に陥るなんて親近感がわくね、などと言ってる場合ではなく、なんとか早くこの悪い流れを脱してほしいところです。最初のメッシかネイマールの好機で先制点が決まっていれば、落ち着き、チームが軌道に乗っていた確率は高かっただろうと思います。
ゲームのMVPはハビエル・マスチェラーノでしょうか。セルヒオ・ブスケツの砦を突破され、ポルテーロとの1対1を作られそうな場面で何度もチームを救っていたのが、ヘフェシートの魂を感じる守備です。ブスケツの囲いを突破されると、バルサは辛い。セルヒオにはあと数試合、どうにか踏ん張ってほしいです。魂という点では、攻守に奮闘していたジェラール・ピケからも熱いものを感じました。ピケが出場停止になる次節デポル戦は、正直不安。出番が来そうなマルク・バルトラ、頼みます。
ルイス・エンリケ「この挑戦に堂々と立ち向かっていく」
リーガにおけるFCバルセロナの状況が日を追うごとに厳しくなり、ライバルたちの士気がエナジードリンクを飲んだごとく上がっているこの4月中旬。2位アトレティコに勝点で並ばれたとあっては、ここまで強気できたルイス・エンリケもチームの苦境を認めざるを得ませんでした。それでも弱気になってしまっては士気に響きますので、バルサ監督は前向きなメッセージを送るべく、試合終了後の記者会見でこう語っています。
「これはステキな挑戦だよ。残り5試合に勝てば、私たちはカンペオンになれるんだ。(中略)タイトルは私たち次第ではあるけれど、クレジット(信用)がもう尽きたことは分かっている。バルサの選手たちがそうするように、私たちはこのチャレンジに堂々と立ち向かっていくよ」
「ポジティブな一面に気持ちを集中しなければならない。今日の私たちは、効率性以外のプレーのあらゆる面で相手を上回っていた。私たちは堂々と試合を終えたし、今日のチームを誇りに感じられないクレはいないと思う」
「私たちの入る状況をよく表した試合だったね。プレーするのもプランを立てるのも難しい試合だけれども、チームからの返答はすばらしいものだった。前半の出来は超完璧で、得点機を多く作り出していた。ただ、試合を軌道に乗せるための運が足りなかったんだ。私たちは最初にゴールを決める必要があった。たしかに決めはしたんだけれど、決めるゴールを間違っていたよ。こういう流れで効率性を欠き運もないと、より苦労することになってしまう」
「私たちの元へと転がり込むのが妥当だった3ポイントが、逃げていったね。けれどもフットボルはそういうものだ。とても気まぐれで、今日がそうだったように、攻撃しないチームに勝つことを許す。ただ私たちは負け方を知らなければならない」
「メンタルがカギになるかどうか、私には分からない。今日の私たちは、置かれた状況の中で良い試合をしたよ。どんな方法でも良いから勝つ、ということを私たちは出来ないんだ。私たちは組織立ったプレー、プレッシング、良いポジショニング、良いプレーによって勝たなければならない。今の私たちに必要なのは、より強さを保ち、次なる困難の前に屈しないこと。それが私たちの進むべき道だよ」
「選手たちは93分まで戦い、こういった状況にどう立ち向かうのか、そのレクチャーをした。立ち上がり、戦い続けていかなければならない。今日は選手を批判すべき日ではなく、称えるべき日なんだ」
「リーガ優勝のためには、5勝が必要になると思う。そしてもしそれが可能なチームがあるなら、それはバルサだよ」「バルサに必要なもの?それは今日のようなプレーと自尊心、団結、反逆心だね」
「交代枠をひとつも使わなかったのは、あらゆる面で相手を上回っていた選手たちの誰かを引っ込めるのは不公平だと思ったからだよ」「私はスカッドに満足しているし、交代枠を残したは単にこちらが相手を上回っていたと見たからだ」
正直、ライバルたちとの勢いの差には不安を感じてしまうのですが、まだ自分たち次第である以上、優勝を諦める理由は何もない。次のリアソール関を突破できればいける、と信じて応援しましょう。中2日でのガリシア遠征はしんどいですが、ファイト!
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