移籍交渉はあと数日内に決着すると見られる。
バレンシアの“9番”、パコ・アルカセルのバルセロナ移籍が現実になろうとしているようです。バレンシアのスポーツ紙SUPERDEPORTE(スーペルデポルテ)紙はこのアルカセルの状況について、「かつてないほどにバルセロナへと近付いている」と記載。今週中にもオペレーションが完了するのではないか、とアイドル残留へ悲観的な見方を強めています。各方面の情報によりますと、バルセロナはバレンシアのオーナー、選手本人と移籍での合意を取り付けている。二人との合意があれば交渉を成立させるにはほぼ十分で、近日中に決着が付くとの見解が有力となっています。
意見が割れているバレンシア
まず状況をもう一度整理しておきますと、バレンシアCFのライフン・チャン会長とガルシア・ピタルクSDはパコ・アルカセルの放出に強く反対しており、公けの場で「私たちは彼を売りたくはない」と明言しています。クラブの食事会では会長自らパコへの説得も行われた模様。バレンシアニスタもクラブ生え抜きのカピタン放出には大反対してますし、多くの場合ではこのあたりで事態は沈静化しますが、パコを巡る動きは依然止まる気配はありません。
バレンシアにとってパコ・アルカセル残留の最大の“障害”は、オーナーでありバレンシアで暮らしていないペーター・リム氏がバルセロナからのオファー額(固定額3,000万+変動額1,500万ユーロ+サンペール+ムニール?)に魅力を感じ、バルサと基本合意をしているらしいことです。
会長よりも実権のあるオーナーが売るといえば、バレンシアはどうしようもないでしょう。契約書へのサインはまだないですが、バルサはリム氏が最終OKを出すと信じていますし、SUPER紙がいうところでは、アルカセル本人はバルセロナ移籍を希望しており、その旨を会長へと伝えています。最強代理人ホルヘ・メンデスもまたリム氏の味方だそうです。
ペーター・リム氏は世界的実業家ですから、感情面は排し、クラブ経営の観点から取引の可否を決めるのでしょう。彼はどうやらバルサからのアルカセルへのオファーが、“チェ”クラブの収支バランス改善に役立つと判断している。選手も移籍を希望するとなれば、SUPER紙が「かつてないほどにバルサ移籍に近付いている」と書くのも尤もです。
収支バランス改善が必要
メスタージャでラス・パルマスに予期せぬ敗北(2-4)を喫した後、グラウンドに残ったガルシア・ピタルクSDとライフン会長が約15分間、さしで話をしていたとの情報がSUPERDEPORTE紙によって伝えられています。二人は一体どのようなことを話したのか。バレンシアはUEFAのファイナンシャル・フェアプレールールによって選手を何人か売却し、収支バランスを改善することが必要とされていて、急ぎで3,000万ユーロほど調達しなければならないようです。
24日付のSPORT紙によれば、バレンシアは二人のセントラル、アデルラン・サントスとアイメン・アブデヌールの放出で収支バランス改善を目論んでいる模様です。バレンシアは前者を850万ユーロでスポルティング・デ・ブラガから、後者を2,500万ユーロでモナコから獲得。年俸や減価償却の点でアブデヌール放出は880万ユーロを、サントス放出は310万ユーロを軽減することになるだろうということで、元バレンシア監督ヌノ・エスピリトが率いるオポルトと3,000万ユーロでのパック売りを交渉している云々、だそうです。その他、ディエゴ・アルベスやイバニェスらもまたドナドナされる可能性があると同紙は言います。パコはカンテラ育ちなので、減価償却はもうすでになされています。
パコ・アジェスタラン監督はパッとしないセントラル陣を刷新したいと考えているらしく、アブデヌールたちに良い買い手が付けば、アルカセルは手放さずに済むかもしれません。アーセナル行きのウワサのあったムスタフィはどうやら残留の方向のようです。
アルカセルはバルサへの移籍希望と
パコ・アルカセルを巡る表立った状況は、先週末とさほど変わってはいません。パコがアスルグラナのシャツに袖を通すかどうかはリムオーナーの決断にかかっていて、彼はパコを売ろうとしている。そこに今週新たに加わったのが、アルカセル本人はバルサへ行くことに同意している、むしろカンプノウへ来たがっているということです。上記しましたが、この点はバレンシア本拠のSUPER紙も見解を同じくしています。
23日付のMD紙によると、バルサからパコへの説得に当たったのはロベルト・フェルナンデスSDでした。ロベルトは選手にルイス・エンリケが彼を欲しがっていること、バルサでは機動力と連係力、シュート力を期待していること、第4デランテロとしての獲得だけれど、監督はMSNの出場時間を調整する計画なのでスアレスも休み、活躍の機会はあることなどを伝達。アルカセルはそれらに納得し、メスタージャでのレギュラーよりもカンプノウでのベンチを選んだ模様です。
バルセロナとしては、22歳(今月30日で23歳)のパコ・アルカセルは戦略的な補強の意味合いも持ちます。つまりは来年1月に三十路に入るルイス・スアレスが衰えた時は、パコが主役となっていく。彼はバレンシア生え抜きのカピタンですが、数年後にはカンプノウの星になれるかもしれないとすれば、移籍に前向きになるものなのでしょう。ただし幾つかの理由により、彼の口から交渉を動かすような公けの発言が出るとはまず考えられません。
交渉リミットは今週いっぱいか
その理由のひとつは育ててくれたクラブへの恩義であり、もうひとつはファン心情が挙げられます。こういう時、選手からは移籍希望は出しにくいです。しかしバレンシア理事会とすれば、ひょっとするとパコから動いてくれた方が今回は助かるだろうと見るのはSUPER紙です。何故ならライフン会長たちはアルカセルを売る気はないと明言しているので、ここで前言を撤回すれば、ファンの怒りの的になるから。彼らはどう話を軟着陸させるのかを熟慮中で、それがアルカセル作戦が停滞している理由だと同紙は見ています。十分オーナーが悪者になっているように思えますが、批判の矢面に立つ立場となれば難しいのでしょう。
いずれにせよ、夏のマーケット期間はあと1週間と少し。もしライフン会長たちがリム氏の説得に成功し、アルカセルが残留となった場合はムニール・エルハッダディがルーチョチームに残るとされていますが、移籍の場合はそのムニールのための交渉時間も用意しなければなりません。よってバルセロナはアルカセル獲得作戦の期限を今週いっぱいに設定しているようです。
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