ユベントス戦前日、バルトメウ理事会が辞任を発表
カタルーニャ州政府の対応を批判して6年間にわたる会長生活に終止符を打った
世界中のクレから罵声を浴びせられ続けても心が折れず、常人離れした対批判強度を見せつけていたジュゼップ・マリア・バルトメウがFCバルセロナの会長を辞任しました。州政府に11月15日への延期を断られたことに伴う辞任で、不信任投票によって解任される初のバルサ会長になることを避ける決断。他者を非難しつつ、自分たちに関しては自己批判なく実績だけを強調しての退陣が彼の個性を表しています。
不信任投票は行われずも、目標は達成
ジュゼップ・マリア・バルトメウと彼の取り巻きたちが昨夜、FCバルセロナの理事を総辞職する決断を下しました。6年間にわたって座り続けていた理事の椅子から、嫌々ながら降りる。今週末の不信任投票実施を余儀なくされたことで、ついに白旗を掲げての退陣です。
バルトメウはその前日にも「辞任を考えたことは一度もない」と言っていましたし、2-8のバイエルン戦後には「クライシスはスポーツ面のみ」であり、組織的には問題はないと臆面なく言い切ってきました。
では何故、急に辞任を決断したのかといえばやはり、反バルトメウ連合が進めてきた不信任動議が効いたわけです。
バルトメウは次々に王手をかけられ、通常であれば投了の場面でも駒を動かし逃げ続けてきました。昨日の時点で「辞任する理由はない」と強弁していたので、おそらくはなにか目論見はあったのでしょうが、カタルーニャ州政府による11月1日の不信任投票承認が詰みの一手となった。
州政府からの通達(後述)を受け、バルトメウはビデオ臨時会議を招集。全員一致での辞任を決定しています。
もう少し、11月2日まで粘れば、不信任投票によって強制的に解任される結末もありました。どうせならバルトメウ一味には「ソシオ投票によって解任された初めてのバルサ会長(恥)」として歴史に刻まれてほしかったのですが、このコロナウイルス危機ですから、投票なく去るのも仕方なしです。結果としては同じ。
「実行されなかった不信任投票でクラブを追われた会長」の称号は手にしたバルトメウです。
惜しまれつつ表門からクラブを去る、それが極めて困難なのがバルサ会長です。
2000年のジュゼップ・リュイス・ヌニェス(長期政権の疲弊)、2003年のジュアン・ガスパール(チームの成績不振)、2014年のサンドロ・ルセイ(ネイマール問題)はいずれも任期途中で辞任。そして今回のバルトメウ。
ここ20年ではジュアン・ラポルタのみが、不信任投票で追い詰められながらも、辛うじて任期満了でクラブを去っています(次の選挙でバルトメウに大敗)。次の会長はどうなりますやら。
カタルーニャ州政府に“切られた”
昨日まで徹底して否定し続けてきた辞任を、どうして決断したのか。ジュゼップ・マリア・バルトメウ前会長が理由として挙げたのは、カタルーニャ州政府(ジャナラリター)の無責任さでした。
反バルトメウ連合が集めた、理事会に対する不信任のソシオ署名が16,520枚を超えたため(最終的には18,090枚)、バルトメウたちは自分たちの運命を決するソシオ投票を招集しなければならなかった。クラブ規約が定める投票実施の最終期日は、11月1日。
しかしなんらかの不都合(裏事情)があったのでしょう、バルトメウたちはこれを11月15日まで先送りするべく、州政府に「1日の投票実施は不適切」との通達をもらおうと試みます。
が、州政府はバルトメウたちが不可能だとする状況下での11月1日の投票実行を「法的にも保健的にも妨害するものはない」として許可を出した。
となるとクラブは11月1日・2日に不信任投票を行わねばならなくなり、バルトメウへの不支持が支持を上回るのは確実ですから、「ソシオ投票で解任された初のバルサ会長(恥)」となるよりは5日早く去る方がマシと辞任を決断したわけです。
バルトメウはそうではなく、ソシオがCOVID-19に感染する危険にさらしたくないので投票実施を断念したと言っていますが。
州政府を辛らつに批判して去る
辞任発表をするバルトメウのスピーチは、カタルーニャ州政府への辛らつな言葉に満ちています。
一方で自分たちへ向ける自己批判の言葉はないんですよね。自分たちの功績は長々と述べつつ、州政府が無責任だと責める。バルトメウのキャラ全開フルスロットルです。失うものはもうない感。
バルトのスピーチはとても長いので、重要と考える部分を一部要約抜粋します。
「今朝、昨日私たちが送った文書に対するカタルーニャ州政府(ジャナラリター)の返答を受け取りました。明白な返答です。彼らが私たちに言うのは、法的にも保健的にも妨げはなく、プロトコル内で投票が可能だということです」
「要領は得ていますが、彼らはその他のことは何も言わない。最低限の保健状況で投票を招集するための法的保障要求に関する言及もありません」
「日付のことも彼らは話さない。クラブ規約の不履行とならないためには、私たちに今日不信任投票を招集する義務があると知りながらです」
「そのために私たちは、彼らがパンデミック対策のために中央政府に向けて法的保障を求めたように、州政府に法的な保障を要求しました。しかし彼らは私たちに法的保障を与えるのではなく、彼らにとって心地よくない状況に対して手を洗うことを決めた。決定で起こりえる影響のことを考えることなくです」
「昨日私は、いくつかの決定を前に当惑していると話しました。そして今日、私はこれらの決定が無責任であり矛盾していると言わねばなりません。州政府が市民や家族、企業に対して重大な処置を適応し、昨日からは週末のロックダウンの可能性も話されているなかでは、私たちに投票は可能だというのは無責任という修飾語しか私は見つけられないのです」
「私たち理事は、責任をもって行動する必要があります。私たちのソシオの健康と、投票の権利の間での選択を私たちは余儀なくされた。投票を行うにはあらゆる保証が必要でした。人々が感染を怖がることなく、移動の問題なく、集団感染のリスクなく実施する必要があったのです。そういった保証がないことで、私たちは不信任投票を招集せず、直ちに辞任する決断をしました(キリッ)」
以下、自分たちが辞任をしてもこのパンデミック環境では会長選挙が短期間で行われる保証などないこと、もっと早くに辞任しなかった言い訳(辞任こそ簡単な方法だったが、クラブのために残って困難に立ち向った)、辞任しない裏事情があるのではないかとの推察は間違っていること、そしてここ数ヶ月は自分や理事たち、その家族に対して限度を超えた侮辱や脅迫があったことへの非難へと続いています。
(家族への侮辱や脅迫は、絶対にダメ)
その後は将来的なヨーロッパスーパーリーグ参加に関することやら、自分たちの実績やら。この実績に関するスピーチは思いのほか長いですね・・・ 半分以上を占めていそう。ラ・マシアのことで胸を張っていたり、牛乳を吹き出しそうです。「私はいつも、自己批判が私たちを強くすると言ってきた」とは言いながら、長いスピーチ内でその自己批判は見つけられず。「謙虚」とか「敬意」とかも言ってますね。
バルサゲート事件が明るみに出たあたりで辞任しておけば良かったバルトメウ理事会。
彼らがクラブを去ったことで山積する問題が一気に解決することはなく、ここからもピッチ外の騒音は続きます。バルトメウが警告するように、クラブ運営を代行する運営委員会の権限は限られている。クラブは不安定になりますが、困難をバネにして乗りきっていきましょう。
まずは今夜(明日早朝)のチャンピオンズ・ユベントス戦です。
コメント
ようやくですね。
最後まで反省、謝罪をせずにいられる彼の精神にはうんざりです。
こういう「絶対自分が正義マン」って一定数存在しますよね。
ともあれ、これで組織が落ち着いてくれることを切に願います。
のび太に批判されたところで州政府は痛くも痒くもないでしょうね。
自分への批判に目を向けない人間が他者を批判してもブーメランにしかならないですし。