会長として最後に日に、起死回生を賭けたダブル契約更新のバルトメウ。
2015年6月9日は、カンプノウ周辺がとても賑やかな一日となりました。一部では退団に大きく傾いているとも言われていたダニ・アルベスがクラブからのオファーを受け入れて2年間の契約延長でサインし、去就が注目されていたルイス・エンリケも彼のスタッフたちと1年間の契約延長でサイン。この日はジョゼップ・マリア・バルトメウにとってバルサ会長としての最終日で、前日のアレイシ・ビダルの入団、ペドロ&ジョルディ・アルバとの契約延長、そして三つのトロフィーの横で行ったシーズン総括演説と併せ、まさにやれることをやりきって会長選挙へと臨んだバルトでした。
ダニ・アルベス 2017
バルサとの契約延長か、あるいは移籍かを巡ってファンをヤキモキさせていた“ダニ・アルベス問題”は、無事契約延長にて決着となりました。選手側はこの日クラブからのオファーを受け入れ、2017年6月30日までの2年間の契約期間延長(+成績に応じた1年オプション)でサイン。4月に代理人が会見を開き、先月末には選手自身もダニワールドを炸裂させた会見を開くなど、様々な紆余曲折があったこの一件でしたが、最終的には状況的に強力なカードを複数持っていたダニの“勝利”となったわけです。
ダニ劇場と化した5月25日の記者会見で、「片足と胴体、頭もクラブから出ている」と語っていたアルベスは、実際今季でバルサを去ろうとしていたと言われています。しかしその気持ちを揺るがせたのが、トリプレーテ祝賀会でのスタンドからの“Dani quedate!(残って!)”コールだったらしく。目に涙を浮かべて「自分の将来がどうなるか知らない」とスピーチしたラテラルの心の中にある残留の扉が開かれ、その二日後となったバルト理事会最終日、アルベスは三冠チームに残る決断を下しました。金銭的にはバルサを上回る条件のオファーが届いていたそうですが、スポーツ面での魅力でバルサに適うチームは数少なく、彼がそちらの挑戦を選んだのは嬉しいことです。
アルベスの件について、巷ではあれこれ言われていますが、ひとつ確実なのは直前の最終交渉で話がどうこう動いたのではない、ということです。契約書はそんな即興でこしられられるものではなく、クラブの法律部門が念入りに仕上げ、あとはサインを待つのみの状態で机の上にスタンバイとなっていた。その内容をダニが受け入れるかどうかを決断するのみで、最後まで揺れていた彼がファイナルアンサーをディノラ・サンタナ代理人に告げたのが月曜(8日)夜、バルトメウ会長にその旨が伝えられたのが日付が火曜に変わる頃、だったそうです(SPORT)。
そしてオファーを受け入れることを決めたからには、アルベスはこれまでのゴタゴタを全て水に流した、と同紙はいいます。とはいっても関係を悪化させたバルトメウ理事会はすでに解散してクラブを去っていて、おそらくは再び戻ってはこないでしょうけれど。。ちなみにこの火曜日、ダニ・アルベスの二人の子供たちが父ちゃんの残留を記念し(?)、バルサの新たなソシオに入会しました。今年の夏は代表招集もないですし、家族でのんびり幸せなバケーションを過ごすであろうアルベス家。しっかり充電し、新シーズンも今季終盤のような活躍をどうぞよろしく!
チームルーチョ、契約延長にOK
個人的にダニ・アルベスの契約延長よりも意外だったのは、バルトメウさんが会長最終日となるこの9日にルイス・エンリケの契約延長をも片付けてしまったことでした。現地のお昼頃にダニさんの契約延長のニュースが流れ、バルセロニスタが喜んでいるその時、メディアにはバルトが今日の17時までにルーチョとの契約延長も行おうとしているとの情報が登場。そして数時間が過ぎ、タイムリミットが迫ってきたぞと注目が集まる16時50分にそのニュースは現実のものとなったのでした。契約を1年残しているエンリケにとってはアルベスのように急ぐ必要はないですから、バルトメウへのささやかなサポート返しみたいなものでしょうか。ルイス・エンリケとバルサとの契約は1年延長され、2017年6月末までとなりました。
この9日は17時からバルトメウ会長(当時)による2014/15シーズンの総括と選挙の告示がAuditori 1899にて行われることになっていました。前会長が狙ったのは、注目を集める会長として最後のスピーチにおいて、最大限に実績をアピールすること。そこでクレの七割が希望するルーチョの続投だけでなく、契約延長を発表できるなら、それはこれから会長選挙へと臨む自らへの大きな武器となります。でっかい音でドン!と机を叩き、インパクトを与えられるわけです。
SPORT紙によると、バルトメウ前会長がルイス・エンリケに契約の期間延長と条件アップを提案したのは月曜夜のことだったそうです。そこでルーチョは急きょ、ガバの自宅にスタッフたちを集め、協議開始。なんと深夜3時まで続いた話し合いの末、彼らはクラブからの契約延長の申し出を受け入れることを決断しました。それによってルイス・エンリケとバルサの契約は2016/17シーズンまでとなり、彼のコーチングスタッフも含めた年俸も上昇。以前ミスターが会長に求めていたテクニカルディレクターが置かれ、バルサBをさらに重視する件も了承されたようです。これで今後は、新会長が拒否しないかぎり、ルーチョの意見がより強くチーム作りに反映されるようになります。
(※契約書がそんなに早急に作成されたのかどうか、怪しい部分はある)
ルイス・エンリケはこの契約延長に関して、報道陣の前では語ってはいませんが、バルサTVの取材に応じて、「これ以上にないほどに、非常に満足してるよ。幾つかの困難のあった一年だったけれど、最後はすばらしいフィナーレとなったし、また新たにタイトルを獲得することを期待し胸を弾ませているところだ。全てが楽しみだよ」とコメント。丸坊主となった頭に笑顔を輝かせながら、来季への期待を表しています。
そうしてバルトメウ前会長は胸を張って記者さんたちの待つAuditori 1899へと向かい、壇上に並べられた三つのトロフィーの横で、ルイス・エンリケとの契約延長を報告したわけです。選挙目的であろうと、自らの利益のためであろうと、それが結果としてクラブにとって好都合であればよい。普段は市民のためにロクに働きもせず、選挙時だけうるさい人たちよりは余程上等です。まあそれはともかく、バルトメウは駆け込みとはいえ出来ることを全部やって会長を辞任しました。あとは対立候補たちのアピールを聞き、ソシオがその審判を下す番。この最終日の頑張りで、風向きが変わったかどうか、見てみることにしましょう。
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