クラブ史上初となる、シーズン途中でのBチームの監督交代。
FCバルセロナのトップチームが公式戦9連勝とチームの変身、トリデンテ爆発(と首都方面の暗雲)の話題で大いに盛り上がっている一方で、バルサの下部チームは不穏な日々を過ごしています。バルサBは現在セグンダ・ディビシオンで17位につけていて、降格圏までは2ポイント差。チームを覆う危機的ムードはいかんともしがたく、9日にはついにエウセビオ・サクリスタン監督との契約が解除され、フベニールAからジョルディ・ビニャルスが内部昇格するとの発表がなされました。なんでもバルサBの歴史の中で、シーズン途中で監督が解任されたのは今回のエウセビオが初めてなのだそうです。
悪い流れから抜け出せず
エウセビオ・サクリスタンのバルサB監督としての時間が残りわずかなのは明らかでした。フィリアル(Bチーム)はたしか、昨年も序盤は不安定でしたが、終わってみればセグンダAを3位で終了。これはルイス・エンリケがB監督時代の2010/11シーズンに残した、クラブ歴代ベストに並ぶ好成績でした。
しかしながら、セルジ・ゴメス、カルラス・プラナス、イリエ・サンチェス、ハビ・エスピノサ、デニス・スアレスらが抜け、メンバーが若返った今季は残念な結果が続き、2015年になっても悪い流れから抜け出せず。1月はレクレアティボやサバデイといった最下位の2チームには勝利したものの、それ以外の4試合は全て黒星を喫していました。そして先週末のサラゴサ戦での惨敗(4-0)を受けて、クラブは監督の更迭を決断。昨日の契約解除通知となった次第です。
クラブとの契約を解除されたのはエウセビオ・サクリスタンだけではなく、助監督のカルロス・ウーゴ・ガルシアもまた昨日をもちましてバルサBでの勤務を終了。その他のコーチ陣、第3監督のガブリやポルテーロコーチのカルロス・ブスケツらはそのまま続投となります。
選手たちの士気の低下
FCバルセロナによる公式発表では、エウセビオの解任と彼のクラブへのこれまでの貢献に対する感謝の言葉が述べられているだけで、更迭へと至った理由については語られていません。フィリアルの目的は選手育成であり、とりあえずはセグンダAに残留できれば好い。今は降格すれすれですが(7勝5分12敗の17位。19位以下が降格)、絶望的勝点でもないのです(降格圏まで2ポイント差)。
しかしトップチームに選手を供給するためには、フィリアルがより競争力の高いセグンダAに所属していることは極めて重要であり、残留できないと様々な不都合が生まれます。ロッカールームの雰囲気が悪くなり、士気が下がり、選手が監督を支持しなくなれば事態は逼迫し、残留が危うくなる。大なたも振るわなければなりません。
9日付のSPORT紙によると、バルサBの選手たちのエウセビオに対する不満はいくつかあったのですが、起用法方への疑問が大きかったようです。毎回同じメンバーが起用され、トレーニングで頑張ったとしても次もベンチウォーマーであることが分かっている不満。たとえば最近はサンペールやアダマが先発から外されることが多く、ピボーテはグンバウが、右エストレーモはドングーが務めています。土曜日のサラゴサ戦でもふたりはベンチとなっていて、チームが機能しないのは彼らのせいだというような采配に選手たちは納得いかなかった、とSPORTは書いています。サンペールは伸び悩み、アダマは自分中心的なところが控えに回った理由でもあるようですが、、権威を失ったリーダーが率いては、チームの建て直しは困難でしょう。
クライフのドリームチーム時代にエウセビオのチームメイトだったアンドニ・スビサレッタがスポーツディレクターを解任されたことも、今回の人事の一因と考えられます。エウセビオの采配はバルサBファンから人気がなく、彼の資質への疑問は絶えず存在していたものの、スビは彼を支持していた。過去2年はなんとか最後は帳尻を合わせてきたエウセビオでしたが、3年半でそれも限界に達したというところでしょうか。なんにせよ、バルサBの監督がシーズン途中で解任されるのは、1970年にバルサ・アトレティクが誕生してから初のこと。それだけ止むに止めない理由があったわけです。
(ルイス・エンリケはスビサレッタに続いてエウセビオも居なくなって寂しいかも)
若い選手たちを知るビニャルス
エウセビオの後を継ぎ、今日からバルサB号の船長となってセグンダA残留を目指し荒れる海を航海していくのはジョルディ・ビニャルス(とアシスタントのペップ・ムニョス)です。ビニャルスはロマンスグレーが渋いカタルーニャ人監督(51歳)で、昨日まではフベニールAのボス。青春時代をバルサのカンテラで過ごし、バルサBの選手として14試合に出場した経験もあります(1988-90)。
現役引退後は2000年にビジャレアルBを率いて指導者としてのキャリアをスタート。幾つものチームを率いたあと、2012年夏にフベニールAのコーチとしてFCバルセロナに招かれ、初年度にリーグ優勝を、2年目となった昨シーズンにはリーグ連覇とともにUEFAユースリーグ初代王者の栄冠を手にしました。なので昨年までフベニールにいたムニールやアダマらとは顔なじみ。エウセビオとの間で失われていた“フィーリング”に問題はないでしょう。若者たちのやる気を刺激し、チームを残留に向けて前進させてくれると期待できます。
またエウセビオの後任としてビニャルスが内部昇格したことで、フットボルバッセ(下部組織)のコーチ陣は各所で変更が生じています。まずビニャルスたちが担当していたフベニールAには、フベニールBのコーチだったハビエル・ガルシア・ピミエンタが昇格。空いたフベニールBの監督にはカデッテBからフラン・アルティガが昇格します。このアルティガの担当していたカデッテBは2位に15ポイントの大差をつけているだけでなく、プレー内容が良いことで高く評価されているらしく。韓国人イ・スンウを伸ばしたのもこのアルティガさんみたいです。
その他、FCBエスコラ(バルサスクール)のコーチ出身でアレビンCを教えていたクリスティアン・カテナがカデッテBに抜擢され、アレビンBの助監督だったアレクシス・ピントがアレビンCの監督となっています。
というわけでエウセビオ解任からカンテラ各所のコーチ異動へといたった今回の人事。こちらはアンドニ・スビサレッタ退団以降、カンテラ部門全体の責任者にパワーアップしていたジョルディ・ロウラによる最初の大仕事でありました。ちなみにロウラさんがテラッサFCのフロントで働いていた時代に、チームを率いていたのがジョルディ・ビニャルス(2005/06)。縁の糸はいろんなところで交差しているものです。
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