一時の不振から抜け出し、第一級のセントラルに戻ったジェリ。
FCバルセロナの最終ラインにそびえ立つ、ヒゲのタワー。ルーチョバルサの守備の要にしてパス回しの起点となるセントラル、それがジェラール・ピケです。「自分はもう世界で三本の指に入るセントラルじゃあない」なんて弱音を漏らしていたのも、今では完全に過去の話。実際にトップ3に入るのかどうかは別にしても、ピケが不在の試合はどうも上手く事が回らないことから見て、攻守両面において彼がバルサにとって最高のセントラルなのは間違いありません。一時の不振を克服し、再びトップクラスの選手へと戻ったワカ旦那であります。
レベルを落とし、ピッチ外の騒動で主役に
ペップバルサにて“ピッケンバウアー”と名付けられるほどに名声を手にしたジェラール・ピケでしたが、そこから今に至る道がずっと順調だったわけではありません。タタ・マルティーノ時代(2013/14)は低調なパフォーマンスによってクレを落胆させていたこともしばしば。スピードが遅く、致命的なエラーも多く、危なっかしくて仕方なかったものでした。
そして指揮官がルイス・エンリケに替わった2014年7月、英国セント・ジョージス・パークで行われていたステージ(夏合宿)の記者会見にて前シーズンの不出来を訊ねられた時、ジェリがこんなふうに素直に自己批判したことを、覚えているクレ諸氏も多いことでしょう。
「今の僕が世界最高のセントラルでないのは明らかだし、3本の指に入らないのも確かだね。昨シーズンはバルサでもムンディアルでも、僕の出来は良くなかった。バルセロナでプレーするためには世界のトップ3でなければならないことを僕は知っているよ」
このワカ旦那の言葉は、バルセロニスタに好ましい印象を与えました。その後ピケはこう付け足しています。「僕は自分がレベルを取り戻せることや、そうしていくことも知っているんだ。もし自分がそのレベルにないと思えば、真っ先に手を上げて出来ないというだろう。それにルイス・エンリケが僕の復調を手助けしてくれると確信してるしね」
こうしてジェラール・ピケの復活への挑戦が始まったわけですが、それからもしばらくは問題続きでした。スポーツ面においてレベルを取り戻すのに時間がかかったことに加えて、ピッチ外でもベンチでスマホをいじっているところをカメラに写された騒動、弟が交通違反で取り締まられた際に警官を罵った騒動などが発生し、10月~11月あたりは試合から干されてしまう有様(エンリケは単にスポーツ的な理由からだ、と説明)。このあたりでは近いうちにバルサを去るんじゃないか、なんてウワサもあったほどです。
しかしそんな騒動も、ジェラール・ピケは自らのパフォーマンスで封じていきました。2015年に入り、チームがトリプレーテへと向けて全力疾走を始める頃には彼のプレーも安定。最終的には不動の右セントラルとなり、歴史的偉業達成に大きく貢献します。思ったことを正直に語るピケゆえ、メディアを賑わせることはしょっちゅうとはいえ、プレー面においてはもうすっかり鉄壁のセントラルへと復調したワカです。
再生へのポイント
では、ジェラール・ピケが宣言どおりにレベルを取り戻すに至ったその理由は何なのか。3月1日付のMUNDO DEPORTIVO紙がこのバルサの3番復活の理由について特集を組んでまして、そこには彼のことをよく知る人物たちから集めた復活へのポイントが幾つか説明されています。次のような感じですが、いっぱいあります。
■自己批判:
ピケは自分に強い自信を持つ人物だが、自分が間違ったと気付けばそれを認めて直すことができる。2014年7月31日の記者会見での上記のコメントがそれにあたり、公の場で語ることで自分に復活を義務付けた。
■プジョルの退団:
ペップバルサで不動のレギュラーとして多くの栄冠を勝ち取ったプジョル/ピケコンビ。しかし偉大な兄貴として助言をくれていたプジが2014年夏で現役を引退し、ピケは自分が一歩前へ進み出なければならないと考えた。マスチェラーノとのペアにおいては、自分こそ参考にされる柱にならねばならないと気付いた。
■ダイエット:
プロスポーツ選手にとって食事への気配りは成功への重要な要素となる。怪我を避けるためにも食事は重要。プロ料理人の助けを借り、ジェラールは妻のシャキーラとともに食べ物をコントロールしている。
■メディア応対の変化:
仕事へと集中するために、ピケが最初にとった対策のひとつが、メディアへの露出を減らすこと。インタビューには応えるものの取材先はじっくり選び、言葉にも気を配っている。家族もメディアに晒さない。
■私生活の変化:
バルサや代表チームの若いスター選手たちは自由時間を利用して遊びに出るのが普通だが、二人の子持ちとなったピケは外出を控えて身体を休めるようになり、生活も平穏なものとなった。
■シャキーラの影響:
世界的な歌姫であり、トッププロであるシャキーラの存在は、長年成功を続けるためにはどのように行動すべきかの最良の手本となっている。妻がトッププロなら、ピケもそのレベルになければならない。ピケはそれに成功し、世界で認められるセレブカップルとなった。
■カピタンマークのないカピタン:
夏のチーム投票ではカピタン4人衆に選ばれなかったものの、ジェラール・ピケはロッカールームの中心選手の一人となっていて、カピタンマークのないカピタンだと見なす選手たちもいる。チームの雰囲気を作り、若者たちへと道を示し、相手チームの主力選手を封じ、必要とあれば審判と談判する。メディアに登場して明快なメッセージを発する点も、彼をチームの中心としている要素。
■トリデンテとの良い関係:
メッシ、ネイマール、スアレスらとピケが冗談を言い合う姿は、練習で毎日のように目撃される光景。トリデンテに認められていると感じることが、ピケに自信を与える。
■強くなったメンタル:
代表チームでプレーする際、自分たちのファンから指笛を鳴らされたピケ。この理不尽なキャンペーンに耐えたことで、プレッシャー下でプレーするのが普通となり、彼のメンタルはより強くなった。
■30歳では引退しない:
以前、30歳で現役を引退し、フットボル以外のことに専念したいと語っていたピケだが、今ではフットボルを第一に考えており、身体に気を配っていけば35~36歳まにスペクタクルな経歴を持って引退できると知っている。
これで全部ではないのですが、主だったのはこんな感じ。やはりフットボルに対する考え方や体調管理への取り組み方、プライベートな時間の過ごし方、中心選手としての自覚といった精神面の変化が重要な要素となっているようです。永遠の少年のようなワカ旦那も、シャキーラとの間に二人の子供ができたり、プジョルが去ったりしたことで成熟したと。SNSを通じて軽口を言い、物議を醸す点はなお健在ですが、あくまでジェリはジェリなんでそのへんはそう変わりはしなさそうです^^;
若い衆の良きお手本となって、バルサの最終ラインをこれからも支えて続けてちょうだいジェラール・ピケ!そして彼がばりばりの主力のうちに、後継者となる人材がカンテラから現れますように。マルク・バルトラがそうだと嬉しいんですが、どうなりますでしょうか。
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