スポンサーリンク

“第三のレバー”を稼働させ、選手登録の目処が立つ:フレンキーケースは新章へ

フレンキー・デジョンを巡る“夏のメロドラマ”に変化の兆しです。残留にこだわる選手と換金したいFCバルセロナの意地がぶつかり合い、心地よくない空気が漂っていたカンプノウ界隈でしたが、、、クラブはようやく“第三のレバー”の稼働を発表。選手を新規登録する資金はこれで調達され、フレンキーは残留へと近づいています。しかし。。

Socios.comと合意

ジュレス・クンデの入団セレモニーが催された2022年8月1日(月)、FCバルセロナが一つの発表を行いました。

「オーディオビジュアル戦略ならびにブロックチェーン、NFT、そしてクラブのweb.3の成長を加速するべく、FCバルセロナがBarça Studios の24.5%を1億ユーロで Socios.com に売却したことを発表します」

2022年夏のバルサ流行語大賞である、“経済的レバー”の第三弾がついに稼働しましたよ、と伝える声明文です。
第一と第二のレバーは、Sixth Street へのラ・リーガ放映権収入の一部譲渡。去る10月23日に開催されたソシオ/ソシア総会では Barça Studios の最大49%の売却が承認されており、その約半分が今回売られたわけです。

Socios.comはスポーツ業界で注目を集めるファントークンを扱う企業で、もう何年も前からバルサと取引があります。この分野で同社とバルサは先駆者的な存在。新しいチーム応援の形ですね。

選手の登録を可能とする1億ユーロ

ラポルタ理事会が稼働させてきた“経済的レバー”の意味合いはこうです。

■ 第一弾:Sixth Streetにラ・リーガ放映権収入の10%を25年間譲る。2億ユーロの融資を受け、2021/22シーズンの赤字を回避。
■ 第二弾:Sixth Streetにラ・リーガ放映権収入の15%を25年間譲る。3億〜4億ユーロの融資(非公表)を受け、収入を増やしつつ負債を減額。FFP違反の1/4ルールから解放された?
■ 第三弾:Barça Studiosの24.5%をSocios.comに売却。1億ユーロを手にし、全選手を登録できるようになった?

ラ・リーガは各クラブに収入に対するスポーツ経費(主に選手給与+減価償却費)の割合が一定以下(確か70%)となるよう定めており、バルサの場合、第二のレバーを動かしてもなお3,000〜4,000万ユーロが超過していると言われていました。

それが今回の1億ユーロにより、解決されるという。ジョアン・ラポルタジュレス・クンデの入団会見において次のように説明をしています。

「ご存知の通り、私たちは Socios.com に Barça Studios の25%を1億ユーロで売りました。これを(先に実行した2つのレバーに)加えることで、選手の登録が可能になると理解しています。リスクはコントロールされているのです。もし更なる何かが必要であったなら、そうしていたでしょうが、選手たちを登録する状態にあると私たちは理解しています」

バルサは現時点で7人の未登録選手がおり(クリステンセン、ケシエ、ラフィーニャ、レバンドフスキ、クンデ、デンベレ、セルジ・ロベルト)、その全員が登録可能になるようです。
放映権を抵当に入れて融資を受けた先の2つの“レバー”とは異なり、子会社の売却で得た収入はより多く(全部?)を補強関連に使えたはず。詳しくは覚えてないんですが・・・

バルセロナは2日、ラ・リーガに向けてサラリー限度額を知るための書類を発送した模様。

ここまでの3つの“レバー”によって、6億〜7億ユーロの収入を得たバルサ。
ちなみに動かせる“レバー”はあと2つ残っています(Barça Studios の残り24.5%とBLMの49.9%)。

フレンキーケース

ラポルタたちがフレンキー・デジョン(デヨング)放出に固執したのは、それが大きな移籍金を得つつスポーツ経費を減らす、一石二鳥オペレーションだったからです。バルトメウが彼にお願いしていた後払い分が加わり、これから彼の給与はバカ高くなりますからね。。

しかしながら、生きた契約に守られた選手を売ることが新加入選手の登録を可能とするための必須手段だとすれば、計画が危険すぎませんか。
元々フレンキーの決断に関わらず登録を実行するためのプランはあったはずで、それが第三(第四)のレバーでした。

とは言ってもクラブの資産を売らずにどうにかなるなら、そちらを試したいでしょう。
しかしフレンキーは頑として残留を譲らず、8月に入ったことで、仕方なく三つめのレバーを動かした。と推察しています。
よって「デジョンを売らねば新規登録ができない」と言い続けていたメディアの説明は大嘘。強引な北風戦術を採用したことで選手との関係をこじらせ、クラブのイメージも損ねたのは、いかがなもんですかね。。

後払いにしていた彼の給与やボーナスまで移籍先に負担してもらおうという案は倫理的にも問題ですし、資産の切り売りで解決するのが良かったでしょう。そもそも支払われていない給与をどうするのか、バルサは選手側との真摯な話し合いを避けていたようで、まずはそっちだろうと思います。

そんなこんなで、選手登録のためのフレンキー放出だという言い分がなくなった今後は、チャビが熱望するベルナルド・シルバ獲得のためだとの方向性に変化していきそうです。チャビの要望は正義ッ・・・!
むしろ最初からそっちが目的だったんじゃないか。

減給を受け入れての残留?

残留を希望するフレンキーに対して、バルサは減給を義務付けているとされますが、これも怪しいですよね。
スペイン労働法では、クラブが一方的な減給を求めた場合、受け入れるか裁判所に持ち込むかは選手次第です。契約破棄による退団も可能となる。それだとベルナルド・シルバ獲得資金は得られず、目的は果たせませんよね。

ということで今後の予想としては、支払い遅延させている給与とボーナスをバルサが払い、スッキリさせてチェルシーなりバイエルンなりに売る。フレンキーは移籍先でアヤックス時代のような大活躍、、でいかがでしょうか。

スポーツ経費の削減は必要

新規獲得選手たちの登録に目処がついた、とはいえ、バルサにはまだ戦力外選手たちの放出という難タスクが残っています。

すご〜くざっくりですが、新たに加入した5選手の給与と移籍金(変動額も合わせると1億7,000万ユーロ)とでスポーツ経費は年間3,000万ユーロくらい増えているんじゃないかと思いますし、“第三のレバー”を動かすまでは、支出が収入を上回っていたといいます。
スポーツ経費をレアル・マドリー並みに減らし、“レバー”に頼ることなくFFPでゆとりを手にする、その道は長い(5月くらいに言われていた削減目標が1億6,000万ユーロ)。

これからリキ・プッチブライスウェイトネトウンティティデストメンフィスピアニッチらを放出して、いくら減らせますでしょうか。

やはりフレンキーのみならず、カピタンらの減給にも踏み込まなければ大きな削減にはならないし、公正ではないんですよね。
考えられるのは、、とりあえず今季はお茶を濁して来夏を待つこと、、セルヒオ・ブスケツセルジ・ロベルトは契約満了となりますし、ジェラール・ピケも退団かもしれません。自然とスポーツ経費の削減実現です。どうなりますやら。

悲観的で失礼しましたっ!

デジョンと記述しているのは、現地の人のYouTube動画やら試合実況やらを見ていて、やっぱそうだよねと思ったからです。語尾の g やら t やらは発音しないしそのほうがリズムも良い。デヨングって言いにくいです。デジョンは言いやすい。その理屈で言えば Camp Nouはカムノウと書きたいんですけど、通例に負けてます(苦笑)。

コメント

  1. たー より:

    放映権なり、Barça Studiosの権利なりを売って収入が増えるっていうのが、普通の会社じゃあり得ない話
    資産売って融資を受けてる状態で、それって収入じゃないですからね。BSでどんどん負債が膨らんでるだけ。
    その金銭を使って移籍金なりを支払うのは将来得られる収益を前借りして払ってるわけで、この先使えた移籍金が無くなってるとも言える
    移籍金じゃなくて、育成費や施設の拡充、新たなプロジェクトへの資金投入にも使えたかもしれない
    調達した資金を今回のように移籍金に投じることが果たして経営として正しいことなのか
    ソシオは権利を売って融資を受けることには賛成したでしょうが、それを移籍金に投じることは有無を言えないですね
    理事会には経営者として費用対効果として移籍金に金銭を注ぎ込み、勝利を得る期待値の結果として、観客収入、グッズ収入、放映権、その他収益がどう改善するのか、そこを説明してほしいところです。って、まぁただのお調子者のラポルトには無理な話ですね

  2. kevadtuul より:

    >たーさん
    第一、第二のレバーはかなりの割合を負債の返済に割り当てているはずですが、詳細は確認していますか?
    調達した資金をそのまま補強に投入しているわけではないのですが……。

    そもそも、今夏の補強策自体が「新たなプロジェクト」そのものではないかと。
    その結果がどうなったかはソシオの総会(決算)でまた説明してもらえる内容だと思いますよ。

    総会は出席率がだいぶ低いですし、出席してラポルタ会長の説明をどう感じたか、良ければまたBBSで報告いただければ助かります。

  3. たー より:

    > kevadtuulさん
    仮に現在の借入を返済したとして、それって借入を借入(あるいは出資金)で返してるだけですよね
    もし今回レバーを引かなければ、投資家に流れるキャッシャはそのままバルサに入ってくるはずでしたよね
    将来得られたキャッシュを投資家に渡すなんてって言ってたのはCVC事案の時のラポルト自身でしたが
    私が気になるのはPLです。この補強(投資)をしたことによって、いくら儲かるようになるかです。プロジェクトファイナンスのような形でお金を得ることは構いませんが、問題はその得られた資金によってどれだけ収益が上がるかです。そこんとこ誰も語ってくれません
    会社経営で言えば企業価値の源泉が収益に結びついているべきです。今回の件を見ると外部からの選手獲得がバルサの価値であると言っているようにも感じます。決して外部からの獲得を否定するわけではありませんが、やってることはパリとかと変わりません
    前借りしたお金ですから将来外部から選手を獲得したいときはどうするでしょう。
    それこそ投資家に身売りするか、スーパーリーグ行きか、ですかね

  4. aitor より:

    > たー さん
    「今回レバーを引かなければ、投資家に流れるキャッシュはそのままバルサに入ってきたはず」というのは些か楽観が過ぎるのではないかと思います。

    第1・2のレバーで売った放映権料も、第3のレバーで売った会社の権利も、貧しさに耐えて節約していく路線を歩んでプロサッカークラブとしての競争力が落ちれば当然資産としての価値も減るわけで。勿論オトラ・リーガのクラブたちと比べて知名度の高いバルサの放映権料が急落することは考えにくいですが、CL出場権を争うのがギリギリ、という程度の状態が続けば、離れていくファンはそう少なくないのではないかなと。

    勿論、今回のレバーを使っての補強はそれだけで将来の安定を保証してくれるものではないですが、メッシが退団しても尚高止まりしている放映権料やバルサのネームバリューを存分に生かした「前借り」の取引というのは案外上手い手なのではないかなと思います。

  5. たー より:

    >aitorさん
    おっしゃる通りだと思います
    だからこそいくら儲かるようになるかが大事だと思うのです
    今回補強してクラブの価値が上がってチケット収益、グッズ収入、放映権料、スポンサー収入がどうなるのか
    メッシという稼ぎ頭がいない今、それでも儲かる算段があるのか
    その話がないと良いも悪いも言えません
    ラポルトが選挙時からこのような前借り戦略や収益計画を語っていたでしょうか?彼はバルサの現状に驚いたと言って全部バルトメウのせいで、その後のことは場当たり的な施策ばかりです。彼の良さは人たらし力でアレマニーとチャビを連れてきたことですが、経済面はさっぱりです。あとカンテラも酷い

  6. バルサ より:

    横から失礼いたします。

    たーさん、aitorさんの議論とても勉強になりました。
    会計学的にアクションが適切であるかどうかについての議論とても興味深く拝読させていただきました。
    これからも引き続きこのように議論を見させていただきたいです。

    「あとカンテラも酷い」とおっしゃいましたが、戦力面、経営面などどんな現状なのでしょうか?
    バルデの裏でカンテラ最高のLSBがバイエルンに流れたとか聞きましたが…

  7. ぼこ より:

    俺はたーさん派です。気持ちだけですが。レバー動かすなら別にメッシのときでも良かったはずで、流行語つくってごまかすのは政治家だなと。経営手腕を発揮したわけではない。ただ資産を切り売りするだけならバルトメウでもできる…いや、彼がやったらまたパニックになってたかもしれないけど(笑)。
    このサイトにいるような人は、どっちかというと貧乏に何年か耐えれば光が…ってひとだったんじゃないのかなぁ。そういう感想がすでに年寄りなのか…??(老害感)

タイトルとURLをコピーしました