バルサ入団は確実で、問題はそれがいつになるのか。
この火曜日に世界各国で行われた熱戦をもって、今回のFIFAウィークも終了。バルサ勢ではジョルディ・アルバが負傷してしまった以外は、大きな怪我もなくホッとひと息というところです。これからはクラブコンペティションが佳境へと入り、あれやこれやと賑わっていくのですが、本日はまだその手前につきまして移籍のウワサを取り上げてみましょう。主役は今後メディアの視線が集中しすぎるほど集中すること確実のブラジルの若き至宝、バルサ入団が既定路線のネイマールさんです。
2011年秋に私的契約
バルサ選手たちが代表チームへと赴き、ネタが寂しくなる3月25日から26日にかけて、SPORT紙はネイマールの話題を大きく取り上げています。その内容は一言でいえば、”バルサとネイマールはもうすでにがっちり結びついていて離れることはない”というもの。選手本人やサントスとの交渉が上手く進んでいるだけでなく、ネイマールとバルサの間には2011年11月時点ですでに私的契約が存在していて、分かち難い関係になっているのがその理由です。
ネイマールとバルサがある種の契約を結んでいて、カタランクラブが2011/12シーズンの収支の中に1000万ユーロの手付金を記載していることはすでに知られたウワサ話です。しかしながらFIFAの規約では、あるクラブに所属している選手が契約の満了する6ヶ月以前に他のクラブと交渉したり、契約に合意したりすることが禁じられている。在って無きが如しの規約のような印象ですが、とにかくまだバルサはネイマールとはスポーツ契約を結べないわけです。
しかし今回の”ネイマール作戦”のポイントは、選手とバルサの交わしたという契約が、”スポーツ的なものではなくて、ごく私的な範囲に関するもの”という点にあります。”裏技”を使った感じですかね。SPORT紙によると、このような私的合意はブラジルでは規制されておらず、全く合法だそうです(同紙はブラジルの O Estado de Sao Paulo紙と協力し合い、この情報を入手した模様)。
分かちがたく結ばれたバルサとネイマール
この私的合意が表すもの、それはネイマールのバルサ入団を望む気持ちの強さです。どれくらいの本気度かと言いますと、契約不履行に伴う違約金が8000万ユーロなんていう書類にサインをするくらいの本気。よってネイマールを獲得したいと思うヨーロッパのクラブがあった場合、そこはそのネイマールの強い気持ちを覆させた上で、バルサにその違約金を支払わなければなりません。あまりにも困難な二つの壁。ネイマールはバルサとこの契約を結んだとされる2011年11月にサントスとの契約も更新していて、他のクラブが立ち入る隙はもはや無くなっています。
この契約を手にするにあたって、バルサがズルいことをしているかというと、それは違っているようです。ネイマールがサントスとの契約を延長することになる2011年の春、サンドロ・ロセイ会長はあちらのルイス・アルバロ・デ・オリベイラ会長に、選手との交渉を許可してくれるようにお願いしました。そしてバルサでプレーすることの素晴らしさ、今後のプロジェクト、ロッカールームの雰囲気の良さなどを丁寧に説明した結果、秋となって、めでたく両者の話はまとまったらしいです。
(倫理的ではない行動をしているのは白組さん。この同じ時期、フロレンティノ・ペレス会長はサントスを通すことなくネイマール側へと裏口から話を持ちかけ、札束攻撃でクラックの気持ちを引こうとしたとのお話。サントス会長はこれに激怒し、白組の工作を阻止した)
ちなみにバルサとネイマールが結んだというプライベート契約は、次のような感じなんだそうです。 ■プロスポーツに関する範囲にはノータッチ ■労働に関する記述は一切無い ■給与や肖像権とも無関係 ■ヨーロッパ内のみで有効 ■契約不履行の罰則は両者にある
2011年当時、ネイマールとサントスとの契約は2015年までになっていました。これが現在は2014年に減っている。それは2011年11月の契約更新の際、クラブが選手の要望を受け入れて期間を減少させたからです。この時サントスはネイマールがバルサと交渉していて、それがまとまったことも知っていました。ロセイ会長が賢かったのは、白組のように陰で強引に話を進めようとせず、サントスとネイマールの交渉に割って入ろうともせず、移籍を急がせようともしなかったこと。筋を守るってのは大事なことであります。
2014年か、それとも2013年か
というわけで、ヨーロッパでの行き先にはバルセロナを選んだネイマール。あと残る疑問は、それが母国でのムンディアルが終わった2014年夏になるのか、あるいは1年前倒しの今夏になるのか、です。それに関して最終決断を下すのは、ネイマール本人となります。
ネイマール作戦において、バルサは4500万ユーロ+手数料を準備しているそうです。2013年での移籍の場合は、その4500万ユーロのうちの55%がサントスへと支払われ、40%が投資グループのDISに、5%がTercera Estrella de Inversiones社へと向かいます。しかしネイマールが2014年、契約を満了してから自由移籍でバルサに入団しようと思うのなら、カタランクラブからサントスへは1ユーロも支払われず、同じく2つの投資会社への支払いもゼロになります。
その代わりに3,000万ユーロ(4500万ユーロの66%)が”ボーナス”としてネイマールのものとなり、1500万ユーロ(33%)が選手代理人の財布にチャリンと入る仕組みなのだそうです。つまりは今年でも来年でもバルサの支払額自体に違いはないということ。とはいえ世界的メガクラック候補を4200万ユーロなら、妥当なところでしょうか。
この契約状況において、一番ネイマールに2013年で移籍してほしいのは投資グループであるDISとなります。若きクラックが契約を満了するメリットは、少なくとも彼らにはない。なのでDISはサントスのオリベイラ会長に対し、この夏での移籍を熱心に勧めているようです。なお、サントスがDISの要望を受け入れる場合は、その見返りとして保有権比率がアップする可能性はあります。そしてサントスはネイマールに移籍金の10%を譲ることで合意をしている。よって2013年夏の移籍の場合は、250~300万ユーロほどが選手のものとなる勘定です。
バルサはネイマール側の手取りが減る分を、バルセロナにおける肖像権の譲渡によって埋め合わせようとしているみたいですが、なにせ欧州は今景気がよくないため、2700万ユーロなんて額を埋めるのはまず無理でしょう。経済的な面以外にも、感情的なあれこれや、スポーツ的な利害もありますから、このオペレーションにはいろんな要素が絡み合っていることがよく解ります。
決断が簡単ではなく、契約を満了するのが一番筋が通っているという事情をよく知っているので、バルサには移籍を急がせる考えはありません。ただしチーム編成に大きな影響を与える問題ゆえに、どちらの決断をとるにせよ、ネイマールにはそれを知らせてほしいというところです。さて、これからも度々メディアを賑わせるであろうこのお話。どういう結末になるのでしょうか。
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