超苦手なスタジアムでまたも敗れ、凹む週末。
ここは我々にとって危険極まりないスタジアムである、と警戒していたアノエタにおいて、FCバルセロナが敗北しました。前日会見では「リーガで最も困難な遠征試合だ」と警句を発していたルイス・エンリケでしたが、その監督の大胆ローテーションは残念ながら機能せず。選手たちは選手たちでまたも試合にフワッと入り、ひとつめの決定機で呆気なく先制点を奪われて自らの首を絞めました。チームに元気のない状況で逆転を義務付けられるのは正直辛い。フォームが上がるはずの4月に逆に下がっていることが、バルサに対する不安を増幅させています。
再び熱くなった優勝争い
フットボルでは1日先のことも分からないと言いますが、2週間前は2年連続三冠へ!と希望に胸弾ませていたチームがここまで苦しい状況になるのですから、勝負の世界は怖いです。リーガ連覇はほぼ確実と見られていたバルセロナでしたが、クラシコに敗れ、このアノエタでも黒星を喫したことで、2位アトレティコ、3位マドリーとの勝点差はそれぞれ「3」と「4」に縮小。首位が3試合で8ポイントを取りこぼせば、そりゃあリーガ優勝争いの行方は一気に混沌としてきます。
ただ、直接対決の結果で優位に立つバルセロナには、まだ1敗の余地はあります。タイトルはまだ自分たち次第ですし、SPORT紙の見出しのように“落ち着き、目を覚まして”いけば、戦局を再び落ち着かせることが出来るでしょう。マドリーのメディアが言うように“優勝争いがある!”のも事実なのですが、最終節近くまでレースがもつれるのはコパ決勝(5/22)へと緊張感を保つのにプラスだもんね、と捉えるのは強がりでしょうか。
やりすぎた選手入れ替え
バルサはまたしても、アノエタで敗れました。応援するチームが負けた日はいつも落胆するわけですが、今回特に痛かったのは、ルイス・エンリケが危険だと警戒していた試合で適切な対応策を見つけられず、ローテーションに失敗し、試合途中の修正(ピケが9番)も効果を発揮ししないままに負けたことです。
ルイス・スアレスを出場停止で欠く中で、ルーチョはさらにアンドレス・イニエスタ、イバン・ラキティッチ、ジョルディ・アルバをベンチに温存し、迷えるアルダ・トゥラン、復帰したばかりのラフィーニャでインテリオールを編成。セルジ・ロベルトを左ラテラルで起用する賭けに出ました。ミスターはどうにかアルダが覚醒する方法を探しているようですが(固執気味)、この様子だと夏以降の宿題とするほうが良さそうに思えます。信頼しているとはいえ、半年戦列を離れていたラフィーニャにラキティッチの代わりをさせるのも急でした。
このローテーションによって中盤の攻撃力が落ちただけでなく、ネイマールが不調の左サイドも機能不全になりました。本職のジョルディ・アルバとアドリアーノを両方ベンチに置き、セルジ・ロベルトを左ラテラルで先発させたのも功を奏さず。鉄板イレブンを休ませる時、“ローテーションで止める”のではなく、つい“実験”までしてしまう傾向がミスターにはあります。
そして監督は結局、温存したイニエスタ、ラキティッチ、アルバを後半使うことになり、目論みは大きく崩れます。おそらくは後半途中に休ませたかったであろうセルヒオ・ブスケツもフル出場。にもかかわらず、1つの勝点も持ち帰れなかったのは痛恨の極みです。
このレアル・ソシエダ戦がアトレティコとのチャンピオンズ対決に挟まれていることから、主力のコンディション調整が必要なのは解ります。しかしフォームが上がるべき4月、クラックたちの体調が良ければ、ここはベストイレブンで突っ走っていけたでしょう。そして次のカンプノウでのバレンシア戦あたりでのローテーションとなったはずです。しかし警戒していたアノエタで主力を3人も休ませるあたりに深刻さを感じる。思う以上に疲労が選手たちを襲っているのでしょう。
いきなり失点する最悪の展開
選手たちの試合への入り方も緩かったです。昨年は試合が始まるやレアル・ソシエダに立て続けに自陣深く侵入を許し、2分を待たずしてジョルディ・アルバのオウンゴールで先制を許したルーチョバルサでしたが、今年もそれを忘れたかのようなフワッとした立ち上がり。わずか4分、右サイドのシャビ・プリエトに簡単にクロスを上げられ、18歳のオヤルサバルに完璧なヘッド弾を叩き込まれてしまいました。確かに良いシュートでしたが、頭上をボールが通過しているピケはどうしちゃったのか。この1点で勝利への難易度はいきなり数段上がりました。
バルサにボールを預け、最終ラインを6人にして守るレアル・ソシエダに選手たちは苦しみました。中央は相手選手だらけなのでキレのないコンビネーションでは到底破ることなどできず、サイドに振るにしても両ラテラルはラインの裏へと出て行けない。苦し紛れのセンタリングは簡単に弾き返されて終わり。こぼれ球もあまり拾えず、カウンターアタックで時間を使われる。前半は特に打つ手がなく、勿体ないことになって残念でした。
後半に入り、イニエスタ、ラキティッチ、ジョルディ・アルバを投入するとサイドが使えるようになり、若干の可能性は感じられました。しかしチャンスらしいものを作れたのはレオ・メッシのみで、そのどうにか作り出した2、3の好機ではラ・レアルの守護神ルジが立ちはだかり無得点。復調を期待されたネイマールは引き続き存在感がなく、水曜日のアトレティコ戦でもルイス・スアレスの理屈を超えた破壊力に頼ることになりそうです。
ルイス・エンリケ「私たちが世界最高だと示す良い機会」
やらかしてしまった負け試合後の、記者会見室。報道陣の前に姿を見せたルイス・エンリケは、ここはポジティブなメッセージを伝えることに専念しようと決めていたようで、とにかく前向きに野心的に、落ち込むファンやチームに向けて前を向いていこうと呼びかけています。試合について訊ねられた最初の質問を受け、バルサ監督はこう言いました。
「今は心配事について話をする時じゃない。多くの人々が心配を口にするであろうことは知っているけれどね。リーガは第32節を迎えていて、私たちはアトレティコに3ポイント差、マドリーに4ポイント差をつけての首位にいるんだ。優勝争いがあり、興奮を呼ぶ状況なのは間違いない。それでもベストなチームが優勝するだろうし、全ては私たちの手の中にあるわけだからね」
「昨年の私たちがこの段階で手にしていたアドバンテージは2ポイントだけだったし、直接対決でも負けていた。それでも最後は私たちが優勝したんだ。最終段階で最も決定的だったチームが、今年も優勝するだろう」
ルイス・エンリケはこうも言います。「チームが必要とする時には私たちの側にいてほしい、といつも私はファンに言ってきた。今こそがその時であり、私たちはクレのサポートを必要としているんだ。乗っかりたいファンは乗っかってほしい。バレンシア戦ではかつてないほどのカンプノウを期待してるよ」
「選手たちは機械ではなく、人間だ。この負けに関しては言い訳も弁解もないけれど、だからといって今は挫けるべき時ではないし、ネガティブな流れにあると考える時でもない。求められるのは立ち上がることだよ。これは私たちが世界最高のチームであると示す良いチャンスなんだ。私たちがこの胸に付けているエスクードへの誇りを示す良い機会だ。チームが競っていくことを私は確信している」
先月末までは分厚い座布団の上に座っていたバルサでしたが、今や状況は大きく変化した、と認めるルイス・エンリケは、ここからの1ヶ月について次のように述べました。「3週間前の私たちは、かなり余裕のある状況にあった。けれども他のチームも頑張っているのに加え、ここ数週間の私たちはレベルになかったからね。今私たちがすべきは、自分たちに何が改善できるのかを見ることだよ。嘆き、泣いていたってこの状況からは脱することは出来ない。ディティールにまで細心の注意を払い、チームが私に出来ることではなく、私がチームのために出来ることを考えなければならない」
またもアノエタで敗れたその理由については、「悪い流れの典型のような試合。始まり方が最悪だったね。レアル・ソシエダは最初の得点機でゴールを決め、それが私たちに重く圧し掛かったよ。私たちは頭ではなく心で何とかしようとしていたし、ラ・レアルのような守備の良いチームに対しては、私たちはもっとボールをコントロールしなければならなかったんだ。後半は内容が良くなり、ゴールチャンスも作り出せていたけれど、ルジのパフォーマンスが素晴らしかった。私たちは良い試合をしなかったとはいえ、負けに相応しかったかといえばそうではないと思う」、とのことです。
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