タイプの異なるどちらを使うかで、変化するフットボール
アルトゥロ・ビダル(Arturo Vidal)とアルトゥール・メロ(Arthur Melo)。ファーストネームはよく似ているけれど、タイプは全く異なるセントロカンピスタたち。どちらを起用するかによって、チームのフットボールが変わってくるのが面白いところです。
それがよく見て取れたのが、先日のリーガ第21節ジローナ戦。 アルトゥロ・ビダルがピッチに立っていた53分間は両チームの行き来が激しく、アルトゥールが入ってからはバルサが試合をコントロールするようになりました。
ジローナ戦は51分でベルナルドがドブレ・アマリージャ(黄色2枚)で退場となったにもかかわらず、バルサは相手の攻撃にさらされていた。そこでバルベルデはビダルに替えてアルトゥールを入れたわけですが、これが効果を発揮し、試合が落ち着いたことが印象的でした。
印象と数字は、必ずしも一致しない
チャビの後継者と期待されるアルトゥールと、フィジカルの強さが武器のアルトゥロ。前者がいることでチームのポゼッションが高まり、後者だとオープンな展開になりそうですが、数字的に必ずしもそうではないのがフットボールの面白いところです。
たとえば、1月29日のSPORTによると、12月以降にバルベルデが残り時間10分以上でアルトゥールを途中交代させたことが5試合あるそうですが、ポゼッションが低下したのはベティス戦だけ。
逆にチャンピオンズ第4節のインテル戦のように、アルトゥールをビダルに替えることでポゼッションが回復した例もあります。
この印象と数字の差は、両選手のボール奪取回数にも表れています。
ビダルの方がハードにプレーをするので、ボールを多く奪っているかというとそうでもない。先日のジローナ戦では57分間プレーしたビダルのボール奪取が1回、33分間のアルトゥールが7回だったということで、その瞬間にチームブロックがどのように機能しているかにより、選手たちの数字も自ずと変化してくるわけです。
ちなみにリーガ、チャンピオンズ、コパでのボール奪取回数はアルトゥールの98回に対し、ビダルは81回らしく。
アルトゥールがいるときはバルサのライン間隔は近くなっていることが多いので、相手選手は考える時間が短く、ボールを思うように運べない。ビダルを使ってオープンな展開にしているときはスペースもあるので、ボールを奪うのも難しくなります。
どちらも使い、決戦に備える
数字はともかく、アルトゥールがバルサをバルサらしくさせることは間違いありません。ボールキープに長けた彼が入ることでバルセロナは統制が取れ、試合をコントロールするようになる。パスが増える。
一方のアルトゥロ・ビダルはピッチを縦横無尽に駆け、ペナルティエリアに飛び出してくることが持ち味の選手。ボールが自陣と敵陣をよく動くようになるので、パンチ力のある前線の破壊力を活かしやすい状況を作り出せます。時に相手に打ち込まれるけれど、敢えてその状態を作らせているようです。
重要なのはその使い分けです。
アルトゥールが公式戦24試合出場(1,417分)、キング・アルトゥロが26試合(1,207分)であるところから見ても、バルベルデは意識的に両選手の出場時間を分配しています。 それらは来たるべき“真実の時”、チャンピオンズの重要局面に向けての準備でしょう。
(コパでは同時に先発起用されていたりもする)
ポジショニングとポゼッションで試合をコントロールしにいくのか、ダイナミズムある展開で勝負に出るのか。タイプの異なるセントロカンピスタがいることで作戦の幅が生まれますから、相手監督は対策が立てにくくなります。
“智将”バルベルデが昨年のローマの大失敗を教訓に、どうチャンピオンズに臨んでいくのか、注目しましょう。
このニュースのまとめ
- ・コントロールのアルトゥールと、ダイナミズムのアルトゥロ
- ・ポゼッションはアルトゥールだけに依存しない
- ・バルベルデはどちらも使い、決戦への準備をする
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