マドリー自滅の気配。
シーズンが佳境に入ってくると、スペインでは”真実の時”であるとか、”真実の瞬間”といった言葉がよく用いられます。真の実力が問われる時、というわけですが、過去3シーズンのペップバルサは当たり前のようにその実力を発揮し、タイトルを荒稼ぎしてきたわけです。で、今年はリーガをリードする白組さんがどう真実の時を乗り越えていくかが大きなカギになるのですが、どうやら波乱含みの様相。週末のマラガ戦に続いてビジャレアル戦でも勝点を落とし、バルサとの差はあっという間に6ポイントへと縮まりました。
◇悪い見本
本日のマドリ系MARCA紙は、一面に大きく大きく”ESCANDALO(スキャンダル)”と記しています。まずは後半最初にモウのアシスタントであるルイ・ファリアが抗議で退場となり(今季4度目!)、終盤にセルヒオ・ラモス(通算11度目でクラブ記録更新)、モウリーニョ、エジルが次々に退場。さらにはロッカールームへ引き上げるまでの通路内でぺぺがパラダス・ロメロ主審に向かって「この泥棒ヤロウ!●●●●●●!」と暴言を吐いて処分ですから、まあたしかにスキャンダルではあります。誰が一番スキャンダラスなのかは、判断の分かれるところとして。
ちなみにぺぺの暴言に関しては、今回はきっちりと審判の報告書に記載されています。メッシへのピソトンは「報告書に記載なし」という理由で処分ナシ(理解不能)でしたが、今回は書かれている。となれば競技委員会も処分を行わざるを得ず、規約によれば、審判への侮辱や攻撃などは2~4試合の出場停止となります。
今回のマドリーは、また新たな醜態をさらすことになりました。審判に試合を壊されたという思いによって彼らは冷静さを失い、被害者意識が大爆発。クリスティアノ・ロナウドはロッカーへと引き上げる途中に「盗まれた、盗まれた、ただ盗まれた!」とシャウトしていて、その声はしっかりとテレビ局La Sextaのマイクに拾われています。現地記者情報によれば、その他選手たちもしきりにこの「盗まれた」という言葉を叫んでいたようです。審判委員会さん、(ピケの時のように)出番じゃないですか?
コケ際の見苦しさはそれだけに止まりません。試合後には通常、各チームの監督が会見を行うものですが、今回のエル・マドリガルではジョゼ・モウリーニョはおろか、ボスが”逃亡”したときは後始末役となるアイトール・カランカも会見をボイコット。さらには「極度の興奮状態」(マドリー広報部)という理由によって、マドリー選手たちもメディアへのコメントを拒否しています。ただひとり言葉を発したのはマルセロ。La Sextaのマイクに向かって彼は「見たとおり。時々彼ら(審判)は僕らに害を与える」と言い残しました。
30分のコーナーキックではアルベロアがニルマールを思いっきり引っ張り倒している(=ペナルティ)のが見逃されたとか、恩恵を受けてることもあるでしょうに。
今回の2つのエンパテで明らかになったのは、今後のライバルたちがマドリーを怖がる必要がない点です。リーガチームにとって白組が勝点を計算できるチームになったことが、バルサにとってはデカイ。彼らがプレッシャーや逆境に耐えられない集団であるのも露呈しました。自滅行為を行ったモウチームに、首都系メディアはまた疑問の視線を送り始めてもいます。彼らは勝手に周囲に騒音を巻き起こした。それがマドリーの一番のエラー。あちらは今後も審判問題でやかましく騒ぐことでしょう。そしてオマケとして、このペップチームの大人度を引き立たせてくれました。ありがたいことです。
きっちり勝ち続けていれば、”ナニか起こる”ことはこれでハッキリしました。バルサは首都方面の騒動など構うことなく、黙々と自分たちの仕事を継続していくことです。確実に波はきている。あと1ヵ月後にはそれは、大波となっているかもしれません。マジョルカ→ミラン→アスレチック→ミラン。まずはこの山を一試合ずつ着実に攻略していきましょうぞ!バモス!
◇チアゴ 「僕はメッシのプレーを見た、と言える」
マドリーの残念な振る舞いはひとまず置き、バルサの話題に移します。この22日のバルサメディアは首都方面とは対照的に、非常にポジティブなムードに満ちています。リーガでの勝点差が6へと縮まり(カンプノウクラシコに勝つと考えれば3)、歴史を作ったメッシが世界中から賞賛を受けている。明るくならないわけがありません。昨日の会見当番になったチアゴ・アルカンタラも好いことを言っています。「希望は一番最後に消えるもの。僕らは希望を抱きつづけなあかんのや」
チアゴは公式戦234ゴールを達成しバルサの歴代最多ゴールスコアラーとなったレオ・メッシについても、こんなふうに上手く言いました。「ペレやマラドーナのプレーを俺は見たという人たちがいる。僕も(将来)メッシのプレーを見たんやぞと言えるんや。僕たちはいま、ひとりの選手が時代を作っているその最中にいる。ピッチで時々、彼がボールを受けたときに、彼がなにかするのを期待して止まってしまうことがあるよ。彼をサポートせなあかんのやけど、そういった感覚を彼は作り出すんやね。僕にとっては彼は史上最高の選手。メッシは唯一の選手なんや」
ちなみにチアゴは審判問題についてはこうコメントしてます。「僕らは判定を尊重する必要がある。僕らが不満を言えるのは自分たちがチャンスを逃したことについてだけで、審判の判定に関してはそうやないんや。だってそれは僕らにはコントロールできへんことやし、審判はすごく難しい仕事やからね」
◇ロッカールームでの祝福
火曜日のグラナダ戦にて、バルサの公式戦歴代最多ゴレアドールとなったレオ・メッシ。誇らしげにハットトリック達成記念ボールを持ってグラウンドを引き上げたレオがどんなふうにロッカールームで祝福を受けたか、という記事がSPORT紙に掲載されていますので、紹介してみましょう。
まずメッシはロッカールームのドアを開けると、チームメイトたちからの大きな拍手で迎えられました。やんややんやと沸く室内。その雰囲気がさらに感動的なものとなったのは、「勝利おめでとう!」とペップ・グアルディオラが輪の中に加わってきた瞬間でした。ペップは難しい条件の中でよく試合に勝ってくれたとチームを祝福。そしてゲームの主役であるメッシへと言葉を送りました。「私たちとともに君がいることを誇りに思う。君がやっていること全てに、私たちは感謝をせなあかんね。セサルに届くという難行を、君はやってのけたんや。君はベストや」
ここでロッカールームには、かつて耳にしたことないほどの大拍手が起こったそうです。チャンピオンズ優勝後にもなかったような、盛大な拍手。メッシは愛されるクラックです。そしてレオもミスターの言葉や同僚たちの拍手になにか一言返そうとしたのですが、彼が口を開けようとするたびに仲間たちが拍手をするからなかなか言えない。最終的には「心からありがとう。みんなをすごく愛しているよ」とだけ語ったそうです。人柄がよく表れていて、よし。
ネット上にプジョルやイニエスタがメッシとの写真をアップしたのは、その後のことになります。そしてみんなで和やかな時を過ごしていると、サンドロ・ロセイ会長はじめ、バルトメウ副会長やスビサレッタSDらが登場。いつもは”聖域”であるロッカールームには会長といえどもおいそれと入室できないのですが、この夜は特別ということでペップが入室を認めたそうです。
そうして興奮状態も収まってくると、メッシは他の選手たちと同じようにシャワーを浴び、パルコ内部にあるラグジュアリースペースで夕食をとりました。大きな歴史を作った後らしからぬ落ち着きで、いつものように静かに食事を楽しんでいたというレオ。どこまでも素朴で謙虚、それがバルサが世界に誇るギガクラックです。
◇「メッシに記録を破られ、セサルも誇りに思うはず」
セサル・ロドリゲス(1995年に逝去)が半世紀にわたって持っていた大記録がついにメッシによって破られたことに関して、セサルの甥であるアルベルト・ロドリゲスさん(バルサカンテラに1989年から1992年にかけて所属)がこのようにコメントしています。「叔父はメッシのような無類の選手によって記録が更新されたことを誇りに思ったことでしょう。メッシはさらに、カンテラ育ちですしね」
アルベルトさんはまた、メッシがセサルの記録を塗り替えたのが奇しくも、叔父さんがバルサから一時レンタルされたグラナダ戦だったことにノスタルジーを感じるとも述べています。セサルはスペイン内戦中にバルサへと入団し、1940~1942年にかけてグラナダへとレンタル。その後は13シーズンに渡ってバルセロナでプレーし、大記録を樹立したのです。いわゆる運命の巡り会わせとでもいうやつでしょうか。
アルベルト・ロドリゲスさんはこうも言っています。「一番信じられないのは、彼が弱冠24歳で記録を塗り替えたことです。彼にはこれから先も、記録を延ばしていく多くの時間がある。彼の残す数字には、並ぶのが困難でしょうね」
◇アビダルの手術迫る
エリック・アビダルの肝移植手術が来週へと迫っています。幼少期の友人が肝臓のドナーになるという報道もありましたが、SPORT紙の説明によれば、実際はエリックのいとこがドナーになるそうです。一般的にはドナー待ちのリストに登録した場合は4ヵ月後となるそうでして、彼がこれだけ早く手術を受けられるようになったのは、そのいとこのおかげ。いとこさんは日曜にバルセロナへと入っていて、手術前に必要となる諸々の手続きなどを進めている模様です。
ちなみにその記事によれば、(考えたくはないことなのですが)アビダルはこの手術によって現役プロ生活が終わる場合のことも徐々に受け入れ始めているらしく。彼はフットボルに関係した仕事を続けていきたいと願っていて、彼も家族もカタルーニャのことをとても好んでいることから、しばらくは現在の家で暮らし続ける考えだ・・・ということです。リアルな問題としてのこういう記事は、分かっていても非常につらいものです。
◇ドウデモ情報
先日のグラナダ戦でダニ・アルベスを退場させたホセ・アントニオ・テイシェイラ・ビティエネス主審。彼が試合後に提出した報告書におきまして、バルサのカピタンを5番プジョルではなく、6番チャビと記載しています。しっかり!
◇ペドロのちょっといい話
火曜日のグラナダ戦を観戦するため、カンプノウをひとりのテネリフェ人女性が訪れていました。ガン治療のためにバルセロナを訪問中の、ベルティ・エルナンデスさんがその人です。彼女は同じテネリフェの英雄であるペドロのファンでした。ベルティさんが幸運だったのは、たまたま試合中にそれを話した隣り座席の人物が、イザーク・クエンカの父ファン・クエンカさんの弁護士であるダビド・ペーニャ氏だったこと。事の経緯を聞いたペーニャ氏はならばと、ベルティさんの夢の実現に一肌脱いだのです。
話を聞いたペドロ(恋人のクリスティナさんの後押しもあったらしい)はベルティさんにカンプノウの地下駐車場まで下りてきて、と頼み、そこでふたりはご対面。サイン入りのユニフォームをプレゼントしました。ペドロを始めとする人々の優しさとこの夜の出来事を、ベルティさんは生涯忘れないでしょう、というお話でした。
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