隠し球はデウロフェウ。
チアゴ・シウバ作戦の行く末が気になる今日この頃ではありますが、現時点ではこれといってなにかが進展した様子はありません。ミランから交渉権を与えられていると言われているFIFA代理人ブロンゼッティは、「クレイジーなオファーがないかぎりミラン残留」とある意味至極真っ当なことを言い、4000万ユーロを最低ラインに設定。まあそのあたりは十分に予想されていたことなので、特にどうということもありませんし、この段階で話がどかんと進むこともない。これは長いすったもんだの第一歩にすぎません。
◇”適正価格”での獲得を目指す
バルサの2012/13シーズン補強計画はご存知のとおり、デフェンサを中心にして進んでいます。新たなチーム作りはまずは安定した守備ラインの構築から。補強ポイントとして挙がっているのはセントラルと左ラテラルであり、最優先とされているのは話題のチアゴ・シウバ、そしてジョルディ・アルバです。
ヨーロッパに複数存在する札束パワー全開のクラブとは異なり、バルサは適正価格での選手獲得を第一に目指すクラブです。かつてはクレイジーな額のオファーに応じていた時期もありましたが、それはもう過去のこと。なんだかんだで補強に大きな額を払っているとはいえ、納得するまで値切る姿勢は一貫しています。オークションには、絶対に乗らない。代理人氏が「ミランはすでに4000万ユーロのオファーを断った」とマイクに向かって語ったとして、それを真に受ける必要はないのです。オペレーションが落ち着くとすれば、それはもっと低い額になるでしょう。
ということで、ここからはプランBを含めての虚虚実実の戦略合戦です。チアゴ・シウバにせよジョルディ・アルバにせよ、バルサが一本釣りだと確信されてしまうと交渉は不利になってしまう。MUNDO
DEPORTIVO紙はさっそく、シウバの代案として複数選手たちの名がずらりと挙げています。バルセロナとしては交渉は可能なかぎり水面下で進めたいでしょう。適当な情報をどうリークしつつ、どこまで希望額に近づけられるか。まずはバレンシアとの話し合いがどうなっていくか、そちらを気にするとしますか。
ちなみにチアゴ・シウバに関しては、彼の個人的代理人であるパウロ・トニエット氏がこう苛立ちを表しています。「ブロンゼッティはチアゴやバルセロナ、シティ、ミランについてなにも知らない。そもそもチアゴは私の顧客であり、彼が首を突っ込むところではないんだ。彼はチアゴとなんの関係もないし、チアゴについて語るのは止めてもらいたい」。そして。「多くのクラブが彼に関心を抱いているけれど、チアゴはミラン残留を望んでいるんだ。バルサとの交渉?現時点では一切行われてはいない」
◇アフェライとデウロフェウ
少し前はドログバやバン・ペルシーといったデランテロたちのウワサもちらりほらりと登場していたバルサ系メディアですが、最近はもうすっかりそれらは見かけなくなりました。まったくナイというわけではないのですが、ほとんどない。来年あたりにネイマールが待っているというのもバックにあるのでしょう。現時点でのデランテロ獲得の優先度は低い。そこで5日付のSPORT紙はメイン記事としてこんなふうに語っています。「秘密兵器はカサにある。それはデウロフェウとアフェライ(+ビジャ)だあ!」
その記事の言うところを大雑把にまとめるなら、こうです。どんな監督にも自身の成功(あるいは失敗)を託す選手がいるもので、ティト・ビラノバにとってのそれはイブラヒム・アフェライとジェラール・デウロフェウになる。ふたりの持つ若さ(イビは26ですが)と得点力、スピード、野心… それは来季のバルサにとって大きなプラスとなるだろう… 実際のところはティトに訊ねてみなければ分からないとはいえ、イビ好きとしてはこれはとっても嬉しい記事であります。
チアゴ・シウバ獲得のためのトレード要員か?なんて不憫なことも書かれていたアフェライですが、SPORT紙によればティトは彼の能力を高く評価しているそうです。ピッチの中でも外でもプレーでき、破壊力あるミドルシュートを備え、スペースも上手に活かせる。ユーロ前の親善試合において、イビは怪我によるうっ憤を晴らすような活躍を見せています。オランダの中心選手として、彼はきっとユーロで名を上げることでしょう。それによって有力なオファーが届くかもしれませんが、万全の状態となってバルサで挑戦するアフェライが見たいというのが一クレとしての希望であり、クラブとしても基本ラインはそちらのようです。
そしてジェラール・デウロフェウ。ペップ時代のトップチームでのプレーは正直イマイチでしたが、ここへきて若者(18)はぐいぐい成長している模様らしく。バルサBで1年目となった2011/12シーズンはリーガ34試合に出場して9得点。これはノリートやジョニーの去ったフィリアルにおけるチーム得点王となる数字でして、来季以降に期待を抱かせるものです。
ということで2012/13のデウロは、バルサBに在籍しつつも、折を見てはトップチームと掛け持ち。2011/12のテージョのような感じになると見られています。そこで資質を見極め、ジャンプアップできると判断されたなら、晴れてティトチームへ上がっていくわけです。
◇クエンカとテージョは?
バルサの旗艦であるレオ・メッシはほぼアンタッチャブルであり、アレクシス・サンチェスという1年目でファンのハートを掴んだ選手がいて、ダビド・ビジャが骨折から復活し、イブラヒム・アフェライに大きな期待がかかり、ペドロ・ロドリゲスもいるとなれば、イザーク・クエンカとクリスティアン・テージョの立場は必然的にかなり微妙なものとなります。ふたりが放出候補リストに名を連ねるのも、致し方ないことといえるでしょう。彼らのそういった状況は各クラブの関心を起こし、問い合わせも幾つか届いているとウワサされています。
では実際のところ、ティトやスビたちが彼らをどう扱うつもりなのか?は直接問うてみるしかないのですが、メディア情報(SPORT)によりますと、より切羽詰った状況にあるのはテージョの方です。そもそもクエンカをトップに昇格させることに賛成していたのはティトだそうでして、新監督はクエンカの成長に期待を寄せている。さらにヒザの半月板を手術している選手に本気のオファーが届くことは希ですし、クエンカはひとまず将来のことを思い煩うことなく、じっくりと怪我を治療していくことになるでしょう。
一方、11/12シーズンのセンセーションとなったテージョには、プリメーラの複数のチームが興味を抱いているといわれていますし、クラブ内にも成長を促すためにはレンタルが良いんじゃないか、という意見も存在しているようです。しかしティト・ビラノバには少なくともプレシーズンが始まるまではテージョを手放す考えはなく、そこでチャンスを与えたいと思っているのだとか。オーバーブッキング気味のデランテロ陣で生き残っていけるのかどうか、自らの運命を握っているのはテージョ自身。彼にとっても熱い夏になりそうです。
◇ケイタは残留の雰囲気
自らを信頼してくれていたペップ・グアルディオラはチームを去ったし、クラブとの契約は(条項によって)フリーとなったことだし、この夏での退団が有力視されていたセイドゥ・ケイタ。しかしここへきて、彼の去就に大きな変化が生じてきたそうです。ずばり、バルサ残留に気持ちがぐらりと傾いたというんですな。
グアルディオラからチームを引き継ぐと決心した時から、ティトの希望はケイタには少なくともあと1年はチームに残ってもらうことでした。新監督が自分を評価してくれている。誠意の人ケイタとすれば、そういった気持ちはむげに断ることはできません。分かりました、ではじっくりと一度突っ込んだ話をすることにしましょうということになり、ムードとしては残留に向かっているところです。
カンテラだらけのバルサというチームにおいて、ケイタのような経験豊富で人望もあるベテランは貴重です。話し合いはケイタのマリ代表での任務が終わり、個人的な用事を片付けた後の6月中旬に行われる予定だそうでして、そこでティトの説明を聞いたケイタが自分のチームでの必要性を感じられれば、首を縦に振ると見られています。ケイタは代理人に対し、ティトとの対話が終わるまでは一切のオファーを進めないよう求めています。
ティト・ビラノバが「キミの力がチームには不可欠なんだ」と残留を要請すれば、セイドゥ・ケイタはその新監督の求めに応じるんじゃないでしょうか。彼のようなプロフェッショナルな選手は、ピッチ内外の両面において非常に重要。ティト・バルサでもうちょっと頑張ろうと思ってくれるなら、とても嬉しいことです。
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