契約延長を拒んで以降、クラブでの立場がかなり悪化したというポルテーロ。
現在バルサの抱える諸問題の中でも、とりわけ厄介なのがビクトル・バルデスに関する問題です。今年の1月にクラブとの交渉を断り、2014年で満了となる契約を延長するつもりはないと発表して以来、理事会やフロントとの関係はもちろん、チーム内での状況も好ましくないことになっているというビクトル。こじれた関係はもはや修復不能になっていて、ティト・ビラノバはあと1年の残留を望んでいるものの、今夏での退団はかなり濃厚な状況とされている守護神です。
チームメイトとの関係も冷えているらしく
バルデス騒動が勃発したのは、去る1月17日のことでした。クラブと選手側による第1回目の契約延長交渉で、彼の代理人と父がバルトメウ副会長やスビサレッタSDに対して、自分たちに話し合いを行う意思はないと通告。とりあえず発表は差し控えてほしいとのクラブの要求も聞き入れず、通信社へとその件を伝えたのです。
たちまちバルサ系メディアは大騒ぎに。その際、ビクトル側の手法には賛否両論が出たわけですが、問題となっているのは彼がマスコミやソーシャルメディアを通じて心境や決断の理由を説明しないだけでなく、監督たちや理事会にも話をせず、時間が経過するにしたがいチームメイトたちとの関係もまた冷え込んでいる点です。この情報の元となっているのは、10日付のSPORT紙の記事です。
チームメイトたちとの関係が冷え込むことになったのは、バルデスの衝撃的発表によって、シーズン重要局面のチームがマイナスの影響を受けたと彼らが考えているからだそうです。そしてバルデス自身にも変化があり、以前はトレーニング終了後もロッカールームに長く残っていたのが、今ではあまり会話もせずにそそくさと帰ってしまうのだとか(クラブ筋の情報)。親友のアンドレス・イニエスタやダビド・ビジャとは良い仲が続いているのですが、その他の同僚たちとはギクシャクでほぼ孤立状態とのことです。実際のところは、チーム内部でしか分かりませんが。。。
スビサレッタとの問題
では何故、あのビクトルがそんな残念なことになってしまったのか。その理由のひとつに、昨年末に発表されたメッシ、チャビ、プジョルによる”トリプル契約延長アタック”があったとSPORT紙は報じています。あの頃はティトチームを取り巻く状況は非常に明るく、この朗報にバルセロニズモは笑顔の花を咲かせていたのですが、どうやらバルデスは自分が後回しされたことが面白くなかったのだとか(クラブ筋の情報)。彼がクラブにNOを突きつけたのは、それから1ヵ月後となります。
まあ、このクラブ筋の情報ってのは信憑性に疑問があるので、どこまでが事実なのか不明です。それよりも、ポルテーロの大先輩でスポーツディレクターのアンドニ・スビサレッタとの関係がおかしくなった、というのが1つのカギとなっていそうな。SPORT紙によると、クラブとの契約がまだ始まってもいない段階で、スビがメディアに対して交渉をしていると虚言したことにビクトルは立腹したそうです。そういえばそんなことがありましたなぁ。となると、スビは困ったことをしました。
ちなみに2011年5月にウェンブリーでチャンピオンズを制した時、バルデスはその試合で着用していたユニフォームを、1992年にドリームチームの一員として同じくウェンブリーで栄冠を手にしたスビへとプレゼントしています。2年前、2人は好い関係にあったのです。
バルサはバルデスの言葉を待っている
ビクトル・バルデスはこれまで、自らの去就について一切語っていません。良い移籍先があればこの夏で移るし、ダメなら自由移籍となる来年まで待てばいいから沈黙というところでしょうか。バルサの理事会は、バルデスがすでに欧州のトップクラブからのオファーを手にしている、と考えているようです。
しかしクラブは、ビクトルがもしバルサを去りたいのであれば、まず自分の口からそう発表すべきだと考えていて、理事会からどうこうするつもりもないとのことで。2014年までの契約を全うするつもりであるなら、この夏は後任となるポルテーロは獲らない考えみたいです。でも、もし本当にバルデスがロッカールームで同僚たちと上手くいっていないのであれば、それで良いのかとの素朴な疑問。いくらティトがビクトルを信頼しているといえ、困ったことになりそうな匂いはプンプンしています。
異文化や異なるフットボルを経験したいとバルデスが望むのなら、それは尊重します。バルサを捨てるのか、なんて言わない。しかしフロントとはともかく、チームメイトと冷え込んではマズイです。発表時期や頑なな沈黙を含め、どうにもやり方が拙かったという印象。同じようにバルサとの契約延長をしなかったグアルディオラ(選手時代)のように、もっと別の方法もあったでしょうに。
無論、この記事自体がバルデスへと圧力をかけるためのクラブ側からの働きかけという可能性もあります。なにせこの件、腑に落ちないことが山ほどあって。何を信頼するかですが、後味が悪くなりそうなのがとてもイヤです。
テル・シュテーゲンが第一候補
いずれにせよ、バルデスが契約を延長しないのであれば、バルサは今年、あるいは来年の夏に新しいポルテーロを加入させなければなりません。ティトはカタルーニャ人守護神がもう1年チームに残ることを望んでいますが、今年去ると考えて準備を進めておくべきなのは言うまでもなく、スビサレッタ率いるテクニカルチームは現在鋭意作業中。そしてここへきて獲得が有力視されているのが、ボルシア・メンヘングラートバッハのドイツ人ポルテーロ、テル・シュテーゲン(21)です。
テル・シュテーゲンはグアイタやデ・ヘアがダメだから、仕方なく浮上した選手ではありません。スビを始め、彼のテクニカルチームの全員が実力を高く評価するポルテーロで、バルデスに契約延長を断れる前からすでにシュテーゲンのことはチェックしていたらしく。更に情報を集めた結果、バルデスの穴を埋めるには彼が最適だとの結論に至ったそうです。
ウェブにてテル・シュテーゲンの好プレー集を見たところ、とにかく反射神経の良いポルテーロだなという印象。相手選手の動きに対する反応が速く、厳しいシュートを鋭い反応でビシバシと弾いています。1対1に強い点も、カウンターをよく食らうバルサにおいて重要。身長も189cmと高く、バルサの守護神に求められる両足でのボール扱いも上手いのだそうです。ドイツにてノイアーの後継者とも言われる逸材ですから、その実力は折り紙つき(2012年のブンデスリーガ最優秀ポルテーロ)。若いにもかかわらず、カンプノウでプレーする上で必須の、強い個性も備えている選手です。
一方で不安視されるのは、特殊すぎるバルサスタイルへの適応が上手くいくかどうかでしょう。異国での挑戦になりますから、スペイン人ポルテーロよりも時間がかかるであろうとも考えられます。デフェンサたちとの意思疎通のため、スペイン語も早く習得しなければなりません。
SPORT紙の報じるところではバルサはバルデスが退団してからテル・シュテーゲンを獲得する予定だそうですが、適応に時間がかかるであろうことを考慮するなら、ビクトルがどうなるにせよ、この夏に誘っちゃうのはどうなんでしょうね。ボルシアとの契約が2015年まで残っているテル・シュテーゲンの市場価格は1,000万ユーロだと言われます。来年なら、交渉は幾分簡単になるでしょうが…。バルデスの言葉が聞きたいです。
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