この週末、バルサになにが起こったか。
さてバルサに直接関係のないチャンピオンズ決勝も終わり、ペップチームを破ったチェルシーが欧州王座の栄冠を手にしました。これは4年前のマンチェスター、2年前のインテルに続く3度目のこと。この5年のチャンピオンズはバルサ、あるいは準決勝でバルサを破ったチームが優勝しています。もしその順番どおりなら来年はまたバルサの番なので、いい夢が見られることに期待です。そしてメッシ、4年連続チャンピオンズ得点王おめでとう。
◇クーマン 「ウェンブリーで全てが始まった」
バルサ公式、あるいはバルサ系メディアでかなりフィーチャーされているように、この5月20日はFCバルセロナにとって非常に重要な意味をもった一日でした。今から20年前の1992年5月20日、ヨハン・クライフ率いるドリームチームがウェンブリーのコパ・デ・ヨーロッパ決勝でサンプドリアを破り(0-1)、クラブ初となる欧州制覇を達成。この成功が礎となり、今日のペップチーム黄金時代へとつながっていくわけです。
そしてこのウェンブリー決勝といえば、111分のロナルド・クーマンによる伝説のフリーキックです。バルサ史における決定的瞬間ランキングがあれば、おそらく1位になるであろうこのプレー。20日のMUNDO DEPORTIVO(MD)紙には彼のインタビューが掲載されていますので、いくつか抜粋して紹介してみます。まずは冒頭、あの試合を何度も見直したか?という問いに英雄はこう答えました。「そうでもない。バルセロナに戻ってから再放送を見たけれど、数回だよ。ゴールの映像は何度も見たけれど、試合全体としてはあまり見てないね。私は過去のことはあまり思い出さない。それは記者やファンたちのためのものなんだ」
クーマンはウェンブリーを「忘れられない場所であり、忘れられない試合、ゴール」だと言います。そしてそれがバルサにとって初の経験だったから尚更(「初めてはなんでも特別」)だと。「ウェンブリーで全ては始まったんだ。このコパ・デ・ヨーロッパはクラブに平穏と、今日世界中から称賛されるスタイルを保ち続ける自信を与えてくれた。私はバルサがこのスタイルを見失うことはないと思う。これからの監督たちが全員、グアルディオラのようにプレーする必要はないんだ。監督にはそれぞれのニュアンスがあるからね。しかし私たちの時代にクライフが持ち込んだ、試合を支配し攻撃するという基本アイディアは残っていくだろう」
ドリームチームとペップチーム、どちらがベストか?という質問へのクーマンの回答は「間違いなく今のチーム」です。その理由は、「このチームは私たちのチームの多くを改善している。私たちは出来不出来が激しく、今のような安定性がなかった。このチームはたとえ負けても、大差では負けない」というものです。
話はその後、「今季のバルサは不運だった。チャンピオンズ決勝に行けなかったのは、不運以外の何物でもない」というものになり、そしてペップのアディオスへと移りました。クーマンはグアルディオラの決断に、驚きはしなかったと言います。「まったく驚かなかったね。この数年、私は彼と何度か話しをしているけれど、バルサのファーガソンになる気はないといつも言ってたんだ。監督経験者で、バルサにいたことのある者だけが、彼の説明する消耗について分かる。それはとにかく大きいんだ。かなりハードだっただろうし、休息するのは良いことだよ」
では最後に、最近ウワサのベルトンゲン(アヤックス)についてのコメントを。2011/12シーズンのオランダ最優秀監督はこうベルギー人セントラルを評価しています。「彼にはバルサでプレーする能力は備わってるよ。彼はオランダ一のセントラルで、高い守備能力とボールテク、パス能力をもっている。今年の彼はとても成長したし、より要求レベルの高いリーガへと行くべきだ。彼なら世界のどんなチームでプレーすることが出来るさ」
◇ケイタの第一希望は残留
ミランやリバポー、その他多くのクラブからオファーが届いていると言われ、なんとなく退団しちゃうんだろうなという雰囲気が漂っているセイドゥ・ケイタなのですが、彼の代理人パスカル・ボワソーさんによりますと、ケイタの第一の優先はティト・バルサでの残留なのだそうです。「選手はバルサに残ることを第一の選択肢としています。彼の獲得を望むチームは、待っていただきたい。(ティトと直接話し合うまで)私たちは誰とも話しをするつもりはありません。ミーティングは2週間以内に行われる予定です」
バルサが世界最高のチームであり、自らの年齢(32歳)も考慮すれば、ケイタは先発を約束してほしいわけではないと見られます。ただしずっと控えではイヤだというところでしょう。今季の彼はムンディアリート決勝やチェルシーとのロンドン対決、マドリーとのリーガ天王山といった大一番で起用されなかったので、それも幾分不満なはず。なんでもケイタの契約には、シーズンの半分の試合に先発起用されなければ、フリーで移籍できる(=自動延長されない)という条項が付いているのだそうです。
よって彼は未来を自由に選べる立場にある。オークションは発生しない。そのあたりも踏まえて、ティト・ビラノバとケイタがどういう決断を下すのかが注目となります。
◇メッシ、地中海の休日
この週末、ペップ・グアルディオラは選手たちに2日の休日を与えています。ビエルサ率いるアスレチックは休みなくコパファイナルの準備に精を出したそうですが、決戦への準備の仕方はチームそれぞれと言うことで。そして選手たちは思い思いの充電を行ったわけでして、レオ・メッシの休日については意外と取り上げているところが少ないので、こちらで紹介してみます。
中国版ツイッター?騰訊微博(テンセント・ウェイボー)のアカウントで、メッシは一枚の写真とコメントをアップしています。写真はビーチでの自身の水着姿。コメントは次のようなよう感じです。「船に乗るのは大好きなんだ。水は僕に安らぎを与えてくれる。父親が船の免許を取ったから、これからは運転してもらうよ」
メッシと彼の家族、そして恋人のアントネージャはこの週末、地中海での楽しいひと時を過ごしました。そしてビーチとクルーズを満喫した後は、お食事。今回レオが訪れたロサス(Roses)のレストラン周辺は、それはまあクラック突然の登場の知らせに、たいそうな騒ぎとなったようです。ロサスはフランス国境近くにある美しく小さなリゾートで、ウィキペディアによれば人口およそ2万人。ちなみにこちら、あの超有名レストラン、”エル・ブジ”のある町としても知られています(正確には近くのカラ・モンジョイ)。
◇バルサ映画化
ハリウッドとスペインの映画界が、ペップバルサを主役としたプロジェクトを進めているそうです。つまりバルサを描いた映画が2本、これから作られるというんですな。
話が進んでいるのはハリウッド版のほうでして、監督を務めるのは『ボーン・スプレマシー』、『ボーン・アルティメイタム』、『ユナイテッド93』の英国人ポール・グリーングラス。そして『インビクタス 負けざるものたち』の原作者でありシッチェス在住の作家ジョン・カーリンがプロデューサーとなるそうです。内容はドキュメントで、この件に関しましては、カンヌ映画祭ですでに発表されています。
一方、スペイン版は弟ダビドがペップ・グアルディオラの親友である、フェルナンド・トルエバが監督をするそうで。ただしこちらはまだ内容などについては具体化してないらしく、ほとんど未定に近いようです。いずれにしても日本では鑑賞する機会がほとんどない(特にスペイン版)のが残念なり。
◇マスチェラーノ再び
ルーチョ・エンリケに次いでバルセロニスタのアニキとなった感のあるハビエル・マスチェラーノがまたもや、素敵なコメントを残しています。今度はカタルーニャの一般紙、ARAのインタビューでの言葉です。ヘフェシートは去り行くボスのペップ・グアルディオラについて、こんなふうに語りました。
「グアルディオラはフットボルの見方が他とは違うんや。彼は僕にそれまでとは異なるフットボルの見方と、この仕事への向かい方を教えてくれたよ。より良いプロとなるために、僕はものすごくたくさんのことを学んだ。結果以上に、真剣に仕事へと臨むことの重要性もね」
事あるごとに「ペップは自分に最も影響を及ぼした監督」と述べているマスチェ。今回も彼はこう言いました。「おそらく僕がより成熟した時期に、僕たちは一緒になったんや。僕が一番影響を受けたのはビエルサとグアルディオラ。ベニテスもまた、僕がウエストハムでアカンことになっている時に手を差し伸べてくれたけれどね。監督がクラブを好いかたちで去るのはとても難しいこと。大抵はクビを切られるとか、契約延長を為されないとかで去っていく。でもペップの場合は、自分の決断によるものやった。彼は表玄関から去っていくんや」
「バルサ監督としてのペップのサイクルを閉じる最高の方法が、コパ優勝」というマスチェラーノ。彼はまた自身の将来について問われ、「バルサのようなクラブは、クラブから出るように言われた時に去るもの」だと、自分から退団する意思はないとしています。
◇アビダル退院へ
本日最後は、嬉しいニュースを。それは肝移植手術を終えて40日を過ぎたエリック・アビダルさんが5月22日、いよいよ入院先のBarnaclinicを退院することになる、というものです。ということでアビさんにとっては、この21日の夜が、すっかり慣れてしまったであろう病室で過ごす最後の夜。まさかの病状悪化がなければ、明日の朝、彼はついに自宅へと戻ることになる見込みとなっています。
ということで無事退院となったなら、アビさんのことです、彼はその足でシウター・エスポルティーバを訪れ、チームメイトたちに会いに行くのではないでしょうか。そしてそれは金曜日にアスレチック・クラブとの大一番が控えているチームにとって、大きなモチベーションアップとなりましょう。エリックの元気そうな顔を見て、ロッカールームが盛り上がらないわけがありません。
彼の選手生命についてはいろいろと語られてはいますが、まずはいとこのジェラールに貰い受けた肝臓が元気いっぱいに機能し、アビさんが健康な生活を取り戻すことが最優先。そしてその闘いに彼が克つことを、クレとしてどこまでも信じるのみであります。
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