APOELはガッチリ守ってくると予想。
メッシ祭りによる幸せの余韻が冷めやらぬ月曜、ルイス・エンリケ率いるバルサはキプロスへと旅立ちました。翌日に彼の地で行われるAPOEL・デ・ ニコシアとのチャンピオンズ第5節をプレーするためです。現在、F組ではPSGがバルサを1ポイント上回っての首位ですので、バルサが逆転で首位となるた めにはこのAPOEL戦にきっちりと勝って、最終節のカンプノウ直接対決を迎えなければなりません。APOELはここまで4戦勝利なしの最下位(勝点1) ですが、地元ではアヤックス(1-1)にもPSG(0-1)にも1失点しかしていないのが特徴。カンプノウでもバルサの僅差の勝利(1-0)でしたし、難 しい試合になりそうです。
領土問題と観光の国
FCバルセロナ一行は月曜の朝9時すぎにプラット空港を発ち、その約4時間後にキプロスのラルナカ国際空港へと 到着しています。このラルナカは紀元前の遺跡も残されているという歴史ある都市で、夏はリゾート客で賑わうらしく。検索すれば、たしかに風光明媚なところ です。ラルナカに到着した一行はその後バスに乗り換え、おそらくは美しい景色を車窓に映しながら、約50km北に位置する首都ニコシアへと移動。手間のか かる移動になっているのは、首都の玄関口ニコシア国際空港が1974年のキプロス紛争で閉鎖され、現在は廃墟と化しているからだそうです。
キプロスは地中海のほぼ東端に浮かぶ島国で、すぐ東にはイスラム国関連でよく名前を聞くシリアですから、かなり 遠くへ行った感があります。ヨーロッパと中東の交差点にあたる場所ゆえ、歴史的に様々な民族がぶつかり合った場所であり、もつれまくった糸を解くのは困難 を極める場所のひとつ。1974年のキプロス紛争で島は南北に分断されていて、北部はトルコ系の北キプロス・トルコ共和国(トルコのみ承認)、南部はギリシャ系のキプロス共和国(国際的にはこちらを承認)が支配しています。
(個人的にはもう20年ほど前ですが、ロンドンにて“トルコ人はキプロスから出て行け”の大デモ行進を見たことがある)
で、ニコシアは北キプロスとキプロスの両国にとっての首都で、国際連合によって定められた緩衝地帯(キプロスバリア)上にあると。このグリーンラインはコンクリート壁や有刺鉄線で囲まれていて、地雷原もあり、国連平和維持軍が駐屯し、と非常に物々しい感じですが、キプロス自体はEU加盟国で観光産業に力を入れているので治安は世界有数の良さだとか。なにせ紀元前からの遺跡(世界遺産)だけでなく美しいビーチにも恵まれた島には観光スポットもごろごろありまして、日本からのツアーもたくさん出ていて旅番組でもたびたび取り上げられています。今回のAPOEL戦はそんなニコシアが舞台です。
堅守を誇るAPOEL・デ・ニコシア
今夜の対戦相手、APOELの特徴はずばり守備の堅さとなります。ここまでのグループリーグで彼らは1分3敗の最下位に沈んでいますが、負けはいずれも0-1の僅差ですし、カンプノウでの対戦(第1節)もピケのヘッド弾とステーゲンのパラドンによってバルサが辛くも勝った試 合でした。本拠地においてもAPOELがガッチリ守ってワンチャンスに賭けるのは間違いなく、この試合に勝って最終節のPSG戦(@カンプノウ)へとグ ループ1位の可能性を残したいのであれば、緩くプレーしていてはダメでしょう。2位でもOKというなら、半ば消化試合ですが。
もちろん、ルイス・エンリケとバルサの辞書に“トライもせずに2位で十分”の文字はありません。前日会見でのルーチョ曰く、「グループで首位となるための3ポイントを私たちは必要としている。優先目標だった1/8ファイナル進出はすでに達成しているけれど、今私たちが望むのは、PSGと首位の座を賭けてプレーすることだからね。決定的な要素ではないにせよ、(首位通過することで)ブエルタをカサで戦えるのは大きなアドバンテージだ。そのための可能性を手にするために、私たちはAPOELに勝たなければならない」
火曜日の試合はカンプノウでの対戦と似た展開になるだろう、と監督は予想しています。「APOELはかなり厄介な相手。先の試合とよく似たものになるだろうと想像しているし、主導権を握っていきたい。彼らはラインを連動させ、スペースを残してはくれないだろう」「失点の少なさが、彼らの一番の長所だ。守備時にすることを彼らは知っている。ゴールを決めるだけでなく、ゴールチャンスを作るにも苦労するだろう」
チャビは唯一無二
カンプノウでのAPOEL戦には、週末のアスレティック戦から選手を大幅に入れ替えて臨んだルイス・エンリケ。ムニール、サンペール、セルジ・ロベ ルト、バルトラといった若者たちが多く先発起用されていまして、途中出場したのもサンドロやラフィーニャといった若手たちでした。しかし今回はおそらく、 主力をどかんと投入するであろうと予想。前線は南米トリデンテ、インテリオールはセビージャ戦で上手くいっていたチャビ&ラキティッチが再度用いられそう です。「インテリオールの組み合わせは対戦相手の特徴、そして攻撃陣の動き次第だよ。チャビとラキティッチはどちらも戦術的な知性が高く、攻撃における如何なる変化(ポジションチェンジ)の穴を埋めることが出来る」
具体的にはメッシとスアレスの位置交換をチャビが上手くサポートする、ということですが、トリデンテについては監督はこんなふうにコメントをしています。「彼らはとても良い状態にあると見ている。ルイス(スアレス)がプレーに加わったのは最近で、彼はバルサには珍しいタイプのデランテロだけれど、彼もペドロもムニールもサンドロも、少しずつ馴染んでいっているし、少しでも早く連係が出来れば申し分ないね」
チャビ・エルナンデスの状況については。「チャビはその実績と才能によって、唯一で再現不能な選手だよ。彼のような選手はもう現れないだろう。夏で(残留)問題は解決したし、期待されていたものを今彼はチームに与えてくれている。先発であれ控えであれ、彼は私たちのカピタンでチームにとって基本となる選手。プレーをしている時だけでなく、プレーをしていない時もまた、彼のあり様を私は嬉しく思っているよ」
手術か?と報道されるやグループ練習を始め、日曜日のトレーニングでまたもや右太ももに違和感が出てしまったトーマス・ベルマーレンの件は、監督ももうスルーすることの出来ない質問となっています。エンリケは「ドクターと選手の問題」と前置きしつつも、心配する状況だと認めました。「デリケートな問題だ。とても気の毒に思ってるよ。彼はハイレベルな選手だし、私たちを大いに助けてくれたであろう選手だからね。今の私たちに出来るのは、彼に寄り添い、この状況を彼が乗り越えるサポートをすることだけだ」
難しい時期を乗り越えてこそ
乗り越える、と言えば、現在のチーム状況。ベルナベウクラシコ敗北で点火したクライシスの火は、アヤックス戦とセビージャ戦のメッシ祭りによってな んとか鎮火へと向かっています。しかしフットボル界では一寸先は闇。チームが再び批判を受ける日は必ず訪れるだろう、とルイス・エンリケは確信していま す。「私やクラブ、そして全てのソシオたちにとって不幸なことではあるけれど、困難な時期はこれから何度もあるだろう。シーズン序盤のようにこれからずっと上手くいけると考えるのは、お人好しだろうね。そういった瞬間を乗り越える術を私たちは知らなければならない。困難を克服することが、シーズンにおける成功の一部分となるんだ」
このAPOEL戦では再び、レオ・メッシ祭りになることが期待されています。土曜日にリーガ・エスパニョーラでの歴代最多得点者となった彼の次の標的は、ラウール・ゴンサレスが持っているチャンピオンズ最高得点者の称号。 現在、メッシとラウールは71得点で並んでいまして、レオはあと1点決めれば単独首位に立ちます。そろそろスアレスの得点もみたいので、レオ&ルイスの L.L.アベック弾なんてステキ。良い内容ですきっと勝って、バレンシア戦に向けて勢いの加速する試合になりますように。
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