出番がある、自信を掴む、落ち着ける、大胆にいける、の好循環。
クラブ試合のない国際Aマッチウイークでは、紙面を持て余し気味のメディアに選手たちのインタビュー記事が登場するのがお約束です。各国代表に招集を受けている選手は基本的にそっちの任務に専念しますから、そういったインタビューを受けるのはクラブからの許可を受けた選手となり、場合によっては同じ日に複数の新聞に同じ選手のインタビューが載る。この10月の代表戦ウイークでは今をときめくセルジ・ロベルトのインタビューがSPORTとMUNDO DEPORTIVOの両紙に掲載されている、という具合です。ロベルトくん、すっかりとバルセロニスタの重要選手となりました。
大事なのは今、プレーすること
セルジ・ロベルトは昨シーズンまで、いまひとつ飛び抜けた特徴のないセントロカンピスタ、という選手でした。ラ・マシア育ちなので技術は確かなのですが大胆さに欠け、常に無難な選択肢を探している印象。売りの一つであるエリアへの飛び出しもあまり見ることができませんでした。それが今季、チーム事情によって右ラテラルで起用されてから状況は一変。プレーをすることで自信を手にし、今や先輩たちにも指示を出せるほどになったのです。重要なのは試合にでること、というのがよく分かる例です。
MD紙のインタビューではまず、この右ラテラルへのコンバートが大きなテーマとなっています。14歳でバルサの門をくぐって10年、インテリオール一筋でやってきた彼にとって、ラテラルは未知の世界でした。そのセルジに新たなポジションへ挑戦させる大きな要因となったのは、似た経験を持つルイス・エンリケ。右ラテラルでのプレーについて、セルジ・ロベルトは次のように語っています。
「僕はバルサでずっとインテリオールとしてプレーしてきたけれど、今ではラテラルとしてもプレーできたね。どちらのポジションもすごく快適だよ。ラテラルは僕にとって新しいポジションで、以前は全くプレーしたことがなかったし予想もしていなかったけれど、好い感じに適応していっているところさ」
「来季以降?それは後になれば分かるよ。自分が次の試合をラテラルとしてプレーするのか、インテリオールなのかも分からないんだ。来年のことは考えない」
(他のラテラルを参考にしたか)「突然のことだったから、他のラテラルをチェックする時間はそんなにはなかったよ。でも僕らのチームにいる選手たちを見ることで適応はずっと楽になるね。彼らがどうやって攻守に動いているのかを観察するんだ。バルサのラテラルはほとんどいつも攻撃をしているから、やり易いよ」
(監督の示唆はあったか)「ルイス・エンリケからは、ポジション変更も可能性の一つだと言われてたよ。だけどそれはフォーマルな会話ではなかった。言われたのはいつかラテラルでプレーする可能性もあるだろうってことくらいだったね。そして夏のツアーでラテラルでプレーする機会があって、幸運なことに物事がうまく運んだ。そこでもしダメだったなら、僕はそれ以上ラテラルでプレーしてなかっただろう」
(エンリケは自らの経験を例に出したか)「うん。その会話の中で、彼もまたラテラルをしたことを挙げていたよ。“ほら、私もデランテロとして獲得されたけれど、ラテラルやら他のポジションでプレーをしたよ”ってね。大事なのは試合でプレーすることさ」
「ラテラルで好きなのは、走れるところだよ。ボールを持っているかどうかには関係なく、僕は走るのが大好きだし、ラテラルは試合中ずっと上がったり下がったりしているからね。体力的に求められるものは多いけれど、僕は気に入ってる。相手に攻撃される時は注意をしなければならないとはいえ、バルサはほとんどいつも攻めているからね」
(クリスティアノのような選手と対峙する日も)「これまではカウンターを受けるくらいだったけど、いずれはもっと守備的になる試合もあるだろうね。それは珍しいケースではあるだろうけど、適応できるよう努めていくし、自分のベストを尽くすよ」
(昨季の心境)「昨シーズンの終盤、僕はエイバルのスタジアムや、カンプノウでの数試合に出場した。僕は少し考えを変えたんだ。僕は出場時間が欲しかったし、ここでそれを得るのはかなり難しいと思っていたから、解決策を探そうともしたのは確かさ。でもその後夏になって、FIFAの件で補強ができなかったことやチャビが退団したこと、そしてミスターの信頼を得ていたことで、もっと出番が増えるかもしれないと思った。それで今こうしてここにいるってわけだよ」
(1月はインテリオールに戻る可能性)「1月のことは考えられないよ。ラテラルであれ、インテリオールやピボーテであれ、全力を尽くしていくさ。決めるのは監督だ」
自信を勝ち取る必要があった
ラテラルへのコンバート談義がしばし続いた後、インタビューのテーマは“自信”へと移っていきます。インテリオールでは無難なプレーばかりで、タタ・マルティーノ監督には“もっと大胆にプレーしろ”と度々言われていたセルジ・ロベルトが、ラテラルで溌剌としたパフォーマンスを見せている理由は何か。バルサの20番はこう説明しています。
「ポジションだけの問題じゃないよ。今の僕はより継続して試合にでている。自信を勝ち取ることが、僕には必要だったんだ。そして自信は人に落ち着きをもたらしてくれる。以前は、ある試合に出ても次の1ヶ月間先発がないこともあった。その時は悪いプレーはしたくはないから、リスクを冒さなかった。今は継続して試合に出ることで、かつてしていたようなプレーができる。継続性と自信が全てなんだ」
「僕が3試合続けてプレーをするのは、今年が初めて。出場機会がかなり限られている状況では、自信を手にするのはとても難しいよ。人は伸び伸びとプレーしなければならないって言うけれど、1試合にしか出られないなら、失うものだらけになる。そこで悪いプレーをすれば、次は無いかもしれないんだ。今は続けて試合に出られるから、ちょっとしたリスクは冒せる」
「(同点弾で流れを変えた)レバークーゼン戦は全てが上手くいったね。僕は後半から試合に出て、同点ゴールを決めて、チームの勝利に貢献できた」
(昨季までの批判に関して)「人々はあれこれと言うから、僕らはそれを聞かず、自分たちの仕事に集中するようにしてるよ。意見は尊重するけれど、あくまで意見だからね」
(ムニールとサンドロは以前の自分)「彼らのいる状況は簡単なものじゃないよ。彼らのポジションには世界最高の選手たちがいるわけで、プレーをする時はその3人と同じような活躍を期待されるからね。彼らは毎日、ベストを出そうと努力しているけれど、物事には全て過程がある。メッシは唯一の存在であって、彼の代役を務めるのはすごく難しいいさ」
バルサという世界トップクラスの選手ばかりが集まってくるチームで、カンテラーノが手にしたチャンスでアピールをし、トップチームに定着していくことの難しさがセルジ・ロベルトの言葉からは伝わってきます。ムニールやサンドロは南米トリデンテと競わねばならず、ロベルトも昨季まではチャビ、今季はイニエスタやアルダ・トゥランとも競わなければならない。ラテラルで新境地を開きましたが、地位を築くのはここからで、何度も“先のことは考えられない”と繰り返していることからも、気を抜くと滑り落ちるとの危機感を感じます。サンペールらが“チャンスがない”と焦れているとの情報も伝わってきますが、カンプノウでの成功を志したのですから、セルジ・ロベルトのように粘ってほしいと願う今日この頃です。
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