パコ・ヘメス監督のフットボルを称賛する指揮官。
平日開催のリーグ戦が組み込まれている今週、FCバルセロナはラージョ・バジェカーノの本拠地バジェカスへと乗り込みライバルたちとの勝点差をキープするべく戦います。今節はマドリー勢が揃って白星を手にしているため、ルーチョバルサとしてもそれに続かなければならない。バジェカスではここ4シーズン良い結果を持ち帰っているとはいえ、ラージョはどんな相手にも真っ向勝負を挑むチーム。激しい試合になること必至ですし、なかなか簡単にはいかないでしょうが、攻撃的パスフットボルで挑んでくるライバルとの対決は希少ゆえ、とても楽しみな試合でもあります。
己のスタイルを貫くラージョ
特徴あるチームが幾つもあるリーガ・エスパニョーラのなかでも、一際キャラクターのあるチーム、それがラージョ・バジェカーノです。パコ・ヘメス監督が掲げる攻撃的真っ向勝負フットボルを貫く彼らは、相手がたとえバルセロナであっても、決して怯むことなくパススタイルで挑んでくる。引いてカウンターを狙うチームが多いなか、そういうライバルとの対戦はバルセロニスタにとって嬉しいものです。
ラージョ・バジェカーノはここ最近の7試合で2勝と勝ち切れてはいませんが、5つの引き分け(全て2-2)によって勝点は拾い続けています。つまりここ7試合負けなし。ただし、その前の7試合勝利なしが響いて降格圏とはわずか2ポイント差なので、5年連続のプリメーラ残留のためにはバルサ戦でも勝点を狙いにくるでしょう。ラージョはここまでのリーガ26試合で36ゴールをあげており、これはアトレティコやセビージャに匹敵する数字です。一方で守備は弱くてリーガ最多の53失点。ある種の清々しさも感じます。
バルセロナは以前はバジェカスを苦手としていましたが(通算7勝6分3敗)、打ち合い上等のパコ・ヘメスが監督となってからは3戦全勝。サンドバル監督に率いられていたその前年(2011/12)もペップ・グアルディオラの退団発表直後だったことで、士気割り増しのバルサが0-7で歴史的大勝をしています(ペドロがハットトリック)。よって過去4年間のバジェカスでの対戦はバルサの得点18、失点0。今回もこの流れが継続されるとは予想しますが、油断は禁物です。
ヘメスがラージョを変えた
そういった諸々を踏まえて、ルイス・エンリケによるラージョ・バジェカーノ戦の前日会見。過去の対戦成績はバルサが大分有利とはいえ、簡単な試合にはならないというのがアストゥリアス人指揮官の見解です。「ラージョとの試合で、気を許すことなんて出来ないよ。簡単にボールを持たせてはもらえないし、あらゆるボールが競り合いとなるだろう。落ち着きなく厄介でオープンな試合になると思う」
ラージョを率いるパコ・ヘメス監督を、ルーチョは高く評価しています。「ヘメス・ラージョで私の好きなところは、彼らが攻撃的プレーを愛していて、自陣から遠く離れたところで相手チームを苦しめようとする点だよ。面白いのは、彼が現役時代は昔風のセントラルだったってことだ。私は選手の頃から、攻撃的な哲学を持った監督が好きだった。私はパコ・ヘメスの哲学が大好きなんだ」
「ヘメスの仕事は称賛に値するよ。バジェカスの人々の気を悪くするつもりはないんだけれど、10年前のラージョといえばもっと雑でダイレクトなフットボルをしていた。それらを変え、4年連続のプリメーラ残留を実現させたのがヘメスだ。ラージョはプリメーラに定着している。大きな価値があることだ」
この対決でのポゼッションは二次的なもの
ラージョ・バジェカーノ戦で思い出されるのは、2013/14シーズンの対戦です。この試合、タタ・マルティーノに率いられたバルセロナはラージョに0-4で勝利するのですが、ボール支配率では51%対49%で敗北。ペップ時代からず~~っと続いてきたポゼッションでの勝利が途切れたことで大きなニュースとなり、タタさんは批判を受けることになりました。
しかしあれから2年半、ガッツ・エンリケに率いられたバルサがもし今回ラージョにポゼッションで下回ったとしても、タタさんのような批判を受けることはないでしょう。求心力の違いってのもありますが、ルーチョバルサはすでにポゼッションだけが武器ではないことを示していますし、なにより実績がものを言ってます。そしてルイス・エンリケ自身、この試合でのボール支配率に重要な意味はない、と断言しました。
「ポゼッションは私たちの理念やメンタリティとしては重要だけれども、ラージョはピッチのあらゆる地点で1対1の勝負を仕掛け、いかなる瞬間も相手に落ち着くことを許さないチーム。だからポゼッションは二次的な要素となるだろうね。私たちにとってポゼッションは目標を達成するための手段とはいえ、ラージョに支配率で負けても、私は気にしない。毎試合ボール支配率で下回れば心配もするだろうけれど、ラージョ戦となれば話は別だよ。私たちはトランジションで問題を抱えることになるだろう。優先されるのは試合に勝利することだよ」
優勝争いは終わっていない
白マドリーの監督さんは、リーガは終わったと白旗を揚げましたが、一足先に今節を終えた2位アトレティコ・マドリーはきっちり勝利し、暫定でバルサから5ポイント差に接近しています。彼らは最後まで勝負を諦めることはないだろう、だからすでに優勝が決まったと考えるのは間違いだ、とバルセロナ監督は言います。
「私たちはいつものように緊張してるよ。常々言っているように、勝点3ポイント制ではちょっとした油断が高く付くことになる。アトレティコが失敗することはないし、彼らのフットボルは内容が良くなってきていると私は見ているんだ。だからリーガは“ある”よ。まだ先は長いしね」
「統計を見れば、下位チームとの試合で失敗しがちなのが分かる。それに今年は降格が確定したチームがなく、多くのチームが残留争いに加わっているからね。そのうちの何チームかは良いイメージを与えているし、かつてなくオープンな状況となっていることで、予期せぬ結果が起こることだろう」
「(無敗記録が続いているからといって)私にはバルサが敵なしだという感覚はない。ライバルたちは毎回私たちを研究してくるわけで、あれこれと攻略法を試してくるんだ。リーガではどの監督もすばらしいレベルにあるよ。スペイン人監督のレベルは上がっている」
ということで今夜(明日早朝)のラージョ・バジェカーノ戦ですが、他のチームとは大きく毛色が異なるイナズマチームとの攻撃的フットボル対決がどう転がっていくのか、非常に楽しみです。カンプノウのグラウンドが105m×68mなのに対して、バジェカスは100m×65mと一回り小さい(WIKIIPEDIA)。数メートルずつ短いという事はプレッシングも効きやすいということで、相手の寄せをいかにかわしてパスをつないでいけるか、そのあたりにまずは注目でしょうか。ボールがめまぐるしく動く試合になりそうです。
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