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セルジ・ロベルトの開花

資質を信じたルイス・エンリケが花開かせた超ポリバレント選手。

2015/16シーズンのバルセロナの中心はなんといってもメッシを筆頭とするトリデンテであり、セルヒオ・ブスケツ、ジェラール・ピケらでありますが、セルジ・ロベルトの躍進もまた見逃すわけにはいきません。中盤ならどこでもOKで、ラテラルやエストレーモもこなせるロベルトはルーチョチームの“ジョーカー”として何気に重要な役割を担い、チームの快進撃に大きく貢献しています。今はまだ不動のレギュラーとはなっていないロベルトですが、そうなる日も遠くはないんじゃないでしょうか。

転機となった右ラテラル起用

15日のSPORT紙は、このセルジ・ロベルトの覚醒について特集を組んでいます。同紙の表現によると、ロベルトの飛躍は偶然の産物でも監督の気まぐれでもなく、“ルイス・エンリケの絶対の信頼を元に、とろ火で煮込まれて完成したもの”です。ルーチョはとにかくロベルトの資質を見込んでいて、なんとかしてその潜在能力を活かそうと努めた。その大きなきっかけとなったのが右ラテラルでの起用でした。

タタ・マルティーノ時代のセルジ・ロベルトは、幾つかのインタビューで彼自身も語っているように、ただ無難に無難にプレーをしていました。たまにしか訪れない出場機会では、失敗を避けることを第一優先とし、プレーは自ずと無難で特徴のないものとなっていた。そんな無難さをタタさんは「大胆さが足りん」と評価。出番は減る悪循環でした。

しかし後任となったルイス・エンリケはフィリアル(Bチーム)監督時代にすでに発見していたロベルトの持ち味を活かそう、との考えを持っていました。とはいえ序盤は試行錯誤で理想のシステムを見つけ出すのに精一杯。トリデンテが機能し始めると同時に鉄板イレブンが完成し、その結果セルジ・ロベルトの居場所はない、との問題も発生しました。それでもエンリケロベルトが挫けないよう、モチベーションを保つように何度も声をかけ、彼が安心できるように努めたそうです。そのあたりがモントーヤバルトラへの扱いと決定的に違う点だ、とSPORT紙は言います。セルジ・ロベルトは例外的なケースだ、と。

そして今季のプレシーズン、ルイス・エンリケは“セルジ・ロベルトのスピードがネイマールジョルディ・アルバアレイシ・ビダルに匹敵する”とのデータを元に、彼をラテラルでテスト起用。これは昨年最後にルーチョロベルトに約束していたことだったのですが、これが見事にビンゴとなり、自信を掴んだセルジはセントロカンピスタとしても飛躍を遂げていきました。走力があることに加えてパス能力もあるのだから、ハイレベルなカリレーロになれると考えたルーチョはやり手です。

フベニール時代、9番にコンバート

ちなみに、この超ユーティリティ選手セルジ・ロベルトがその土台を作るにあたって大きな影響を及ぼしたのはフベニール時代の監督だったフランシスコ・ハビエル・ガルシア・ピミエンタ(現バルサBの第二監督)だったそうです。SPORT紙によりますと、ピミエンタは中盤選手として入団したロベルトを、将来を見据えてデランテロ・セントロにコンバート。スピードがあり、技術にも優れている彼は“9番”としても活躍すると判断してのことでした。

さらにピミエンタエストレーモとしてもロベルトを起用しており、フベニールBでは19ゴールを記録してチーム得点王にもなったのだそうです。こういった経験によって彼が攻撃の際の動きを身につけ、メッシがベンチスタートだったベルナベウクラシコでのエストレーモ起用につながった、と同紙は述べています。

そして17歳のセルジ・ロベルトを早々にバルサBへと引き上げたのが、当時フィリアルの監督だったルイス・エンリケです。こうした巡り会わせを見ますと、ルーチョあってこそのロベルトの覚醒だと非常に感じる。ラフィーニャへの信頼もそうなんですが、信頼した若者はしっかりと育てる監督さんです。バルトラもファイト…!

偉大な先輩たちにも可愛がられ

SPORT紙はまた、セルジ・ロベルトの成長の秘密にはチームメイトたちの助言も大きく影響している、と指摘します。カギとなったのはセルジの人間性でした。その顔を見れば伝わってくるように、セルジ・ロベルトは性格が非常に良く、仲間に愛される存在であるらしく。そしてトレーニングでは常に全力を尽くしていて、その熱意が周囲に感染するほどだそうです。資質があって頑張っている後輩がいれば、先輩も心をくすぐられるものがあるでしょう。そこで偉大なるハビエル・マスチェラーノの登場です。

試合中にルイス・エンリケがピッチサイドへと呼び、指示を与えるマスチェラーノはピッチ上の監督だと言われます。そんなヘフェシートロベルトは気に入られた。これは大きいです。さらにセルヒオ・ブスケツもまたロベルトの助言者となり、自分の代役となった時にどうピボーテをこなせば好いのかを直々に伝えているといいます。二人の偉大な先輩たちに日々アドバイスされることで、セルジ・ロベルトはぐんぐんと伸びていったわけです。

ロッカールームにおいても、フットボルバッセ時代からの親友であるマルク・バルトラをはじめとするカンテラーノたちや、ピケ宴会部長、アルダ・トゥラン宴会係長といった陽気な先輩たちに取り囲まれ、とても楽しく過ごしているというロベルト。チーム内に友人なんて要らねえ、と言う人もいますが、クレとしましてはやはりこういう和やかで一体感のあるチームが好きです。そして数年後にはセルジ・ロベルトもまた資質ある後輩に助言する立場になるんだろうな、と思うとほっこりします。

 

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