シーズンが重要局面へ向かうなか、努力が実りつつある二人。
明日7日にカンプノウで行われる国王杯アトレティコ・マドリー戦は、バルサがタイトルへとあと1勝に迫るための非常に重要な試合です。したがってルイス・エンリケは週末のアスレティック・クルブ戦にて再び大胆なローテーションを実施し、ルイス・スアレスやジョルディ・アルバを温存。イニエスタ、ブスケツも怪我の回復期間とあり、いわゆる鉄板イレブンとされる面々はメッシ、ネイマール、ピケら過半数の、正直不安がよぎる顔ぶれでした。そんななかでチームの3-0勝利に貢献したのが、トンネルを脱した感のあるアレイシ・ビダルとパコ・アルカセル。重要な試合が目白押しとなる春に向け、彼らが計算できるようになることで、チームコンディションをより良い状態に整えていけるでしょう。
長かったトンネル
昨シーズン終盤のタイトルレースで息切れを起こし、チャンピオンズだけでなくリーガ優勝も危うく逃しそうになったことで、ルイス・エンリケらテクニコはスカッドの層を分厚くすることを目標に昨夏の補強を行ってきました。重要な補強ポイントとされたのが、ルイス・スアレスを休ませることが出来る控え9番。複数の候補選手たちが他クラブでの挑戦を選択したことからも分かるように、限られた出場機会でバルサスタイルに馴染むことは容易ではなく、スペインの未来を担うとされるパコ・アルカセルにとってのここまでの道は、想像以上に厳しかったのではないでしょうか。それだけに半年を要したリーガ初得点(しかも価値ある先制点)は喜びもひとしおでした。
道の厳しさでは、アレイシ・ビダルもけっこうなものでした。ダニ・アルベスの退団で拓けたかに思えた道は実は茨だらけで、秋頃には冬のマーケットでの移籍が決定的とまでいわれていた選手。そのアレイシがここ最近の7試合では5試合に出場し(先発は3つ)、2ゴール3アシストの数字を残すわけですから、継続性や自信がいかにフットボル選手にとって重要か分かります。アレイシは12月6日のボルシア戦でも先発出場で1アシストをしており、攻撃面では特に貢献できる選手です。
パコ「諦める前に、ハードワーク」
バレンシアではカピタンも務めていたパコ・アルカセルでしたが、独自のスタイルを持つバルセロナでは多くの選手たちがイチからそのフットボルを学びなおさなければなりません。よってルイス・エンリケはパコの適応も一朝一夕でいかないであろうことを直観しており、目の前のゴール数や外部の評価に思い煩うことなくハードワークをしていれば、出場機会を与えることをデランテロに約束をしていたそうです(6日付SPORT紙)。そして努力こそが自らの持ち味であると、アスレティック戦終了後のアルカセルは語っています。
「諦める前に練習に励む。僕はそういう人間なんだ。そのように家で教え込まれてきたので、日々そうしているよ」「これからも僕は自分のやり方を続けていく。それはハードワークし、改善していくことだよ。メッシやネイマール、ルイス、イバン、アンドレスが側にいる。それはつまり世界最高のフットボル選手たちとプレーするということだから、僕も選手として良くなっていくさ。このチームメイトたちの姿勢に触れることで、人間としても良くなっていくんだ」
その人としてもすばらしいチームメイトたちに囲まれ、励まされることで、困難な日々を乗り切ってきたんだとデランテロは言います。「僕らがここにいる理由、結局のところそれは良い選手であり、良い人間だからだよ。僕らはお互いを助け合っているし、それが重要なんだ」
時々は不思議な人選もありますが、入念なスカウティングを経てバルサが獲得した選手たちですから、この要求されるレベルの高いチームでもやっていけると見込まれた資質があるわけです。ならば諦めることなく向上を目指し続けることで、成功を手にする可能性は上がる。待望のリーガ初得点を決めたことでパコ・アルカセルの資質が開花していくと期待できますし、少年時代からハードワークを教え込まれている彼ならきっと貴重な戦力となっていくことでしょう。
アレイシ「ベストゲームではなかった」
アスレティック戦のもう一人の主役となったアレイシ・ビダルに関しましては、最近は以前ほど元気がないように思えるセルジ・ロベルトをローテーション出来るようになるだけでなく、戦術的なバリエーションを増やせる点でもチームに貢献しています。
最初はラテラル、セルジ・ロベルト登場後はエストレーモとしてプレーした土曜日のアスレティック戦終了後、アレイシは「自分のポジションはエストレーモだからね。バルサでは確かにラテラルとしてサインをしたけど、セビージャではエストレーモで良い瞬間を過ごしていたんだ」とコメント。本職であるというだけあって攻撃的なプレーは上々で、「欠点を直そうとしている」という守備での連係やポジショニングが向上すれば、“ジョーカー”となって活躍の場は増えるでしょう。
勝負を決める3-0弾を叩き込んだけれども浮き足立つことなく、「自分にとってベストゲームではなかった。本来あるべき良さに達していない瞬間が幾つかあったからね」と自省したのも好印象。試合に全く出られなかった時もアレイシは不平を言うことなく全力でトレーニングに励んでいた、それを見ているチームメイトたちは彼をとても可愛がっていると言われますし、以前自ら課題といっていたメンタルを克服した今、チームの戦力として認められる存在になっていくんじゃないでしょうか。そうあってほしいです。
ということで、アスレティック戦は3-0というスコアが与える印象ほど良い出来ではなく、ゴール前での効率性の違いが明暗を分けた試合でしたが、なんであれパコ・アルカセルやアレイシ・ビダルといった“ミドルクラス”の選手たちが結果を出しての勝利はバルセロニスタが昨季から求めていたこと。“火遊び”とも言われたルーチョのローテーションが効果を発揮し始めた、と期待しましょう。まだまだギャンブル感はありますが…。
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