今年からバルサ育成部門のディレクターに就いた元デランテロ
世界最高だと自負するラ・マシアでの最初の数ヶ月を振り返る
今季からFCバルセロナのカンテラ部門で責任者を務めているのは、バンガール時代から暗黒時代にかけてバルセロニスタを楽しませてくれたパトリック・クライフェルト (43) です。超高難度シュートを決めるわりに、簡単な好機は外す面白いデランテロでした。
そんな育成部門ディレクターの重要な任務が、才能ある若者たちにバルサで成功できると信じさせ、ファーストチームへと上がっていくよう育てていくこと。MD11月19日号に掲載されたインタビューの中で、クライフェルトはカンテラについて次のように語っています。
「バルセロナには40年以上続く一つのスタイルがあり、私たちはそれに忠実でなければならないんだ。試合によっては必要に応じて少し変える必要があるけれど、まず初めに私たちには私たちの価値やプレーがあるので、それを尊重しなければならない」
「いまは大筋で順調にいっているよ。バルサの選手を引き抜きたがるチームが多くあるので、監視しないといけない。選手たちが出て行くのを私たちは避けなければならないんだ。ラ・マシアと私たちの仕事は世界最高だから、選手たちにここで成功できることを教えないといけない」
逆に他クラブの真珠たちを引き抜くのは、バルサの育成がベストであり、ここへ来るには巨大な才能を持ってないといけないから良いという理論です。
有望なカンテラーノを引き留めること
ちなみにクライフェルトのインタビューは同じ日のSPORT紙にも掲載されていまして、そちらの方が深く踏み込んでいるテーマもあります。カンテラーノの引き留めに関してです。
バルサ育成部門にとって毎夏要注意なのが、選手がカデテAからフベニールになる年代 (15-16歳)。国による契約制度の違いを利用され、多くの才能ある若者たちが他国のビッグクラブに勧誘されます。
「今年のカデテAチームに大きな才能があることを私たちは意識している。非常に良い世代になる時があるけれど、今年がそうだね。私たちは選手を説得するよう試みなければならない。しかし最終的な決断は選手とその周囲だからね。全員に残ってほしいけれど、それは無理だ。リアリストでないといけない」
フベニール世代の有望株イライシュ・モリバと契約延長するため、バルサはプレミア勢に引けを取らない経済条件を出しました。
興味深いのは「プロ初契約の時に最大額を与えることはできない」としていて、段階的に条件を上げていく必要があること。選手によって条件は違うのですが、イライシュの場合はフベニール時代が終わればまた再交渉するそうです。これはもうすぐに訪れるでしょう。
「選手たちがわが家にいるような、ここ以上の場所はないとの感覚を持たないとね。ラ・マシアはバルサにしかないんだ。お金は重要だけれど、カギになるのは育成。お金はあとでやってくるだろう」
ではエリック・ガルシアやチャビ・シモンズ、ロベルト・ナバーロのように一度バルサを去った選手が将来戻ってくることに賛成か、と訊ねられたクライフェルトはこう述べています。
「扉はいつも少し開いておかないとね。難しいよ。少年がラ・マシアを去ることを選ぶのは、ラ・マシアで働いている人々にとっては辛い出来事。通常は扉は閉ざされているんだけれど、私はいつも少しだけ扉を開いておく人間なんだ。でもほんの少しだけれどね」
少しの風でパタンと閉じてしまうくらいの、わずかな隙間。
リキ・プッチはレンタルが良い
「選手たちの頭に浮かぶことをよく知っている」ので、「彼らに最良の助言ができる」「それが自分の強みだ」と自己分析するアヤックス学校育ちのクライフェルト。「最良の選択肢を与えながら選手たちを説得することがもっとも重要」(MD)という彼、頼もしいのですが、バルサの現状としてはファーストチームに若者を受け入れる空きがない問題があります。
今現在、それによって我慢をしているのがリキ・プッチです。中盤は非常に激戦区のため、アンス・ファティのように監督にやたらと気に入られない限り、期待の宝石といえども出場機会の分配は簡単じゃありません。
MDのインタビューでは
「まず言わなければならないのは、リキ・プッチがとても良い選手であることだよ。それでも全ての選手と同じように毎日毎試合で資質を示さなければならないからね」
「リキの次のステップ?第一に毎週バルサBで良いプレーをすることで、それからは見てみよう。あなたはリキのことを特に訊ねるけれど、大きな資質を備えた選手はもっといるよ」
と語っているクライフェルト。
しかしリキに関しては同日のSPORT紙インタビューの方が一歩踏み込んで見解を示しています。
「ファーストチームの中盤を見れば、フレンキーやアルトゥールたちがいて、リキをどこへ入れるんだい?リスペクトを込めてだけれど、難しい。リキにとっては、異なるレベルで競うためにレンタルに行くのがベストだよ」
ただしレンタルされても「プレーしないのであれば、出て行く必要はない」(MD)とも。ドイツに修行に出ているファン・ミランダのような事例です。
「起こってはいけないことだね。選手にとっても、クラブにとっても。残念だし、ミランダが試合に出ていないことで私の気分も悪いよ」(MD)
そこで候補になるのがクライフェルトの出身クラブであるアヤックスです。
「私は選手をアヤックスに貸し出すことに賛成している。私たちはユトレヒトとも協約を結んでいる」(MD)
すでにファーストチームの一員としてバルベルデの管理下で日々を過ごしているアンス・ファティについても、クライフェルトは試合に出るのが重要ゆえ、「出場時間を手にするためにバルサBでプレーをする必要がある,との感覚を持っている」(SPORT)と述べています。
バルデス早期解任という黒歴史
MDとSPORTの両紙で訊ねられているテーマに、10月でフベニールA監督を解任されたビクトル・バルデスがあります。
大きな話題となった監督就任から、わずか81日で裏門からクラブを去ることになったビクトル。そりゃあなにがあったのか関心はあります。解任を伝えるバルサの公式声明も非常に簡素で、相当な事情だったのは推察できます。
「誰もが私にその質問をするね。解るよ。私としては、負のページに入って行きたくはないんだ。私は誰も傷つけたくないし、(語るのは)私にとってもビクトルにとっても、クラブにとっても良いことじゃない。起こったことを知っている人間は4人。私はそっとしておきたいし、それが全員にとってベストだよ。クラブでは決断しなければならない時があり、私たちはそうした。議論を開きたくはない」(SPORT)
「私は選手時代のビクトルを知っているから、ああいう終わりになって残念だよ」(MD)
MDはこの件について食い下がってまして、事情を知っている4人がジョルディ・ロウラ、アウレリ・アルティミラ(どちらもカンテラの責任者)、そしてクライフェルトとビクトル・バルデス本人だと明かしています。おや会長が入っていませんね。
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